夢化粧
あるところにだらしない女性がいた。
何をするにも面倒くさがりで、仕事も家事もさぼり気味。
恋愛関係も長続きせず、両親からは心配されている。
そんな彼女に舞い込んできたお見合いの紹介。
相手は真面目で誠実で収入も安定している。
この機を逃すわけにはいかないと奮起する両親だが、当の本人はやはり面倒そうで気乗りしない。
お見合いの前日に夜更かしをし、当日は当たり前のように寝坊した。
両親は先に見合いの会場へ行っているので、仕方なく彼女も支度を済ませてお見合いの席へ向かう。
時間ギリギリにお見合いの場に着き、相手と対面したところで両親が彼女の姿を見て驚き呆れる。
「あなた、すっぴんじゃない。化粧はどうしたの」
「してきたわよ。夢の中で」
いきなり枕にこんな小話をされてどこがエッセイだと思う方もいるかもしれないが、これは友人に上村一夫さんが描いた「夢化粧」という漫画を知らないかと訊かれたときに私が思い浮かべたストーリーである。
残念ながら浅学寡聞の身なもので上村一夫さんの漫画を読んだことはなかったが、「夢化粧」というタイトルを聞いたときに想像した私なりの物語だ。
もちろん、実際の「夢化粧」はまったく違うもっと面白く奥深い漫画なのだが、こうしてタイトルだけで中身を推測することはたまにある。
そしておしなべて当たったためしはない。そりゃそうだ。
しかし、これも物語の楽しみ方の一つとしてはありなのではないかと思う。
本の楽しみは読むことだけとは限らない。
だからこそ、その可能性の幅も含めて本は素晴らしいのだろう。
私はこの、タイトルだけで内容を読むことを夢読書と名付けたい。
読まなくても楽しめるとは、本とはまるで夢のようではないか。
でも当然ながら、本の一番の素晴らしさは読まなければわからない。
そこを読み違えさえしなければ、今後も私は夢読書を続けていくことだろう。
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