うなぎに呪わせるにいたって
今年の土用の丑の日に公開した『うの付く怨みを丑の日に』は人間に食べられて絶滅寸前のうなぎが人間に復讐するという小説だった。
このでたらめ備忘録『録々首』でも以前書いていたように、元はうなぎの養殖方法を面白いと思ったのをきっかけにできた話だったのだけれど、うなぎのことを調べるとまあ見渡す限り一面のネタの宝庫だった。
曰く、かのネッシーの正体の候補の一つに巨大うなぎ説が挙げられているとか。
曰く、うなぎの心臓を食べると預言者の魂に憑依されて予言ができるようになるとか。
曰く、うなぎがどうやって生まれるのか解き明かせなかった哲学者アリストテレスが「うなぎは大地のはらわたから自然発生する」と結論付けたとか。
とにかく、うなぎは甘辛いたれを塗って焼くだけでなく、歴史や生態やエピソードすらも美味しくいただける生き物だったのだ。
しかしどんなに面白くとも、小説の中で全部を使おうとするのは至難の業、諸刃の剣。
『うの付く~』で人間に牙を剝くうなぎの呪いも、以下のものがお蔵入りとなった。
・突如、人間の性別が反転する呪い(餌に大豆のイソフラボンを仕込むことでうなぎの性別を雌にする養殖法があるらしい。うなぎは雌の方が身が大きくて柔らかい)
・人間の体から骨が失われ、くたくたになる呪い(生物学上ではうなぎの仲間ではないが、ヤツメウナギから脊椎動物の要素の遺伝子を取り除いて骨を失わせる実験が行われたことから着想を得た)
私の料理の腕がもう少しあれば、これらの呪いも作中で人間どもを大いに苦しめるはずだったのに。
運のいいやつらめ。
以上、愚かな人間サイドからお送りしました。
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