出鱈目

 でたらめの語源を調べていると、興味深い故事に辿り着いた。

 昔、中国にいた盲目の男が釣りをしていると、妙に引きの強い当たりがかかった。

 正体もわからぬ獲物に興奮し、男はなんとか魚を釣り上げることに成功。

 釣れたのは体長三・五メートルにもなる鱈だった。

 あまりにも大きいので村のみなで分け合おうと鱈を持ち帰り、配る盲目の男。

 だが、彼が目の見えないのをいいことに、村人たちは必要以上に大きく切り分け、自分の分を多く持って行ってしまう。

 あとに残されたのは鱈の目だけとなった。

 自分の人のよさにつけこまれたのだと悟り、途方に暮れた男は手元に残った鱈の目を捨ててしまおうかと考える。

 だがそのとき、捨てられてはたまらないと思った鱈の目はとっさに男の眼孔の中へ潜り込む。

 すると驚くことに両目はぴたりとはまり、男は視力を取り戻したという。

 転じて、不利益を被っても他人を責めずにいると、結果的に自分が得をするという意味の言葉だそうだ。


 なに? 嘘を言っちゃあいけません?

 お言葉ですが、でたらめってのはつまりそういうことですよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る