エビのファッションショー

 幼なじみと回転寿司屋に行ったときのこと。

 皆さんご存じだろうが、回転寿司屋では、回っている寿司のレーンの上に注文レーンというのがあり、注文したネタはそこを通って注文主のテーブルまで一直線に届けられる。

 あるとき、自分と幼なじみのテーブルを通り過ぎてエビの握りが注文レーンを通り過ぎていった。

 誰かがエビを食べたかったのだろうと横目で見送ったのだが、直後にそのエビを載せた皿は手をつけられないまま、取られることもなく注文レーンを逆走して厨房へととんぼ返りしていった。

 何かの手違いだろうかと思っていたら、しばらくして注文レーンをエビフライの寿司が横切っていった。

 どこぞのお客が注文したのはエビではなく、エビフライ寿司だったのだろうか。真相は胃の中藪の中。

 一連の流れを見ていた幼なじみと二人で「あのエビ、調理された!」とはしゃいだものだ。

 だが、もっとも混乱したのはエビに違いない。

 ラフな格好でいいと思っていたら、自分が場違いなことに気づき、それから大急ぎで衣を着ておめかししてお客さんのもとへ向かったのだ。

 その思いが通じてか、今度はエビフライ寿司は厨房に返されることはなかった。

 今年のエビ界のトレンドはパン粉だ。

 注文レーンは確実に手にとってもらえる食品だけが通ることのできる花道。

 ネタ諸君は胸を張って歩いてもらいたい。

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