冷え込む季節.com

 気温がめきめきと音を立てて下がっている。

 人間も外気温に関係なく体温を一定に保つ恒温動物だとは言うものの、代わりに気分の温度が大きく左右されることもある。

 要するに、温度につられてテンションも下がる生き物だという話。

 最近、背筋がぞっとするような体験をやたら味わうようになった。

 しかし私は怖がりなので、少しでも恐怖を和らげるためにここへ書いて薄めてしまおうと思う。

 この先は巻き添えになってもよい方だけお読みください。






 一つ目。タクシーに乗る幽霊にまつわる体験。

 乗り物に人間以外のものが乗り込む、いわゆるタクシー系怪談に関する文献が欲しくて二冊の本を購入した。

『怪異の表象空間』(国書刊行会出版)と『怪異を歩く』(青弓社出版)だ。

 二冊のタクシー幽霊の項目を読んだ結果、どちらも内容がまったく同じ文章の、同一著者が書いた論考だったことが判明した。

 よりによってもっとも知りたい情報がかぶってしまった。

 だが本にも著者にも決して罪はない。

 ただただリサーチ不足な自分が怖かった。終わり。



 二つ目。悪夢の話。

 自分にしては珍しく、夢の中だと自覚できる明晰夢を見た。

 その夢の中では謎の少女(顔は見えないか覚えていない)が現れ、「これから火事が起こるから私を助けろ。さもないと許さない」と宣告するのだ。

 直後、彼女の言う通り火事が起きるも、自分ひとり逃げ回るのが必死でとうてい誰かを助ける余裕などない。やはり夢だとわかっていても火事の中では逃げてしまうものだ。

 そうして少女を助ける一方的な約束が果たせず夢は終わるのだが、同じ夢を立て続けに繰り返して見る羽目になる。

 四ループほどしただろうか、これは本気で閉じ込められたのではないかと焦った頃になんとか抜け出すことができた。

 といっても夢から覚めて起きられただけで、結局最後まであの少女を助けられなかったのだが。

 彼女は今も私を許してはいないのだろう。二度と会わないことを願うのみだ。

 以上でこの話も終わりにしたい。



 三つ四つと書き綴って連ねていこうとしたけれど、自分で書いているうちに寒気がぶり返してきたので、ここいらでお開きにすることに決めた。

 温かいスープでも飲んで、お風呂に浸かり、布団の中であったまるが一番いいようだ。

 寒い季節に凍えるだけでは芸がない。

 外が冷えていくほど、自分で自分に薪をくべるのがひねくれ者の私にはちょうどいいのだろう。

 どうかこれからも、温かい目で読んでいただければ幸いです。

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