第3話 特殊スキル
「なるほど、この世界が正常に近づくにしたがって女神様の力も復活すると言うわけだ」
「そう、そうなのよ。理解が早くて助かるわー。それと、女神様じゃなくて『ユリアーナ』ね」
愛らしい笑顔でウィンクをした。
心臓の鼓動が途端に早まる。
俺は鼓動が早鐘のように打っているのを気付かれないよう、平静を装って一つの疑問を口にする。
「それで、何で俺が選ばれたんだ?」
「別にたっくんを選んだわけじゃないのよ。慌てて召喚したら、それがたっくんだった、ってだけ」
「何てこった……」
勇者として召喚されなかったまでも『女神様に助手として選ばれた』、と自分のことを少し誇らしく思ったことが恥ずかしい。
『自分の中に特別な力があるから選ばれたのでは?』、と胸を高鳴らせていた自分を殴ってやりたい。
俺はあまりの恥ずかしさと情けなさから、頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「どうしたの?」
ユリアーナが無神経に俺の顔をのぞき込む。
「何でもない、何でもないから、そっとしておいてくれ」
「涙拭く?」
眼の前に黒いレースのハンカチが差しだされた。
「要らない。ちょっと目にゴミが入っただけだから大丈夫だ」
「そう?」
「ところで、最後の力ってことは、ユリアーナにはもう力が残っていないってことなのか?」
制服の袖で涙を拭きながら聞いた。
「いまのところ、よ。そのうち凄い力が復活するんだから」
「つまり、戦えるのは俺だけってことか。それで俺はどんな力を持っているんだ?」
俺は期待に胸を膨らませて聞いた。
潜在的な凄い力はなくても、召喚者特典でチート能力を貰えるだけでも良しとしよう。
「こっちが知りたいわ」
「は?」
今の一言はなんだ?
『こっちが知りたいわ』というユリアーナの声がリフレインする。
放心しかけた俺に気付かないのか、彼女が説明を続けた。
「世界を渡るときに何かしらの特別な能力を一つ手に入れたはずよ――――」
召喚された人間や動物、魔物が異世界へと転移する際に何らかの特別なスキルを手に入れるそうだ。
もちろん、例外はある。
過去の例だが、何のスキルも手に入れられない不幸な召喚者もいたそうだ。
説明するユリアーナも『例外』の部分に触れるときは顔色が悪くなっていた。
「――――どんな能力なのかは本人にしか分からないのよ」
「特別なスキルかー。どうやって調べればいい?」
「自分の中に力を感じるはずなんだけど? 取り敢えず目を閉じて意識を集中してみて」
俺は言われる通りに目を閉じて心を落ち着ける。
すると、直ぐに身体の奥底で今まで感じたことのない何かが感じられた。
「これか!」
「あったのね、スキル! どんなスキル?」
ユリアーナが期待に目を輝かせた。
俺は頭に浮かんだ単語をそのまま告げる。
「錬金工房だって」
「生産系かー」
途端、今度は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
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