第10話 錬金工房の更なる力
食事を終えたタイミグで、俺はゴブリンが持っていた碁石程の大きさの石をテーブルに置いた。
「鑑定で『闇属性の魔石』とでた」
正確には錬金工房の能力の一つで、収納したモノを鑑定することができる。
利用用途を聞こうとする矢先、
「闇魔法の魔道具が作れるわ」
ユリアーナが先回りするように答えた。
「例えば?」
「剣に毒の魔法を付与すれば、斬り付けた敵を毒状態にできる」
準備や後始末など多少の面倒はあるが、剣に毒を塗れば十分な気がする。
「毒だけなのか?」
「魔石の質や大きさにもよるけど、この大きさなら毒の他に、麻痺や睡眠も可能かもね」
あまり魅力は感じられないが、錬金工房の実験にはなる。
「昼間収納したゴブリンなんだけど、スキルを持っている個体が三匹いた。火魔法を持った個体。頑強を持った個体。そして狙撃と頑強を持った個体だ」
「頑強は先天的なスキルね。魔法と狙撃はどちらも後天的なスキルよ」
「ちょっと待ってくれ。魔法は生まれ持った才能やスキルじゃなく、後から習得できるのか?」
「できるわよ。ただし、『魔法の才』がないと習得に時間もかかるし、たとえ習得しても発動効果はたかが知れているわね――――」
『魔法の才』があれば魔法全般の習得や効果に影響があり、『火魔法の才』などの個別の魔法に対する才能は対象となる魔法以外には効果がないのだという。
つまり、先天的な魔法の才能がなくても魔法は習得できるが才能のある者には遠く及ばない。
「――――一般的に生活魔法と呼ばれている、魔力さえあれば使える魔法がそれね。魔術師と呼ばれる人たちは、何らかの魔法の才を持って生まれた人たちよ」
戦うのに不十分でも魔法が使えると言うだけで俺には十分に魅力的だ。
あとで魔法を教えてもらおう。
「そこで発達したのが魔道具よ。魔力さえあれば何の訓練なしで属性魔法が使えるわ」
身も蓋もないな。
俺が黙っているとユリアーナがさらに続ける。
「しかも、強力な魔道具ならスキル所持者とそん色ない魔法を使うことも可能よ。ただし、強力な魔道具は簡単には作れないから希少で高額だけどね」
つまり、強力な魔道具を自作すれば解決するわけだ。
湧きあがる高揚感を抑えて話題を戻す。
「ゴブリンが持っていたスキルな……。錬金工房のスキルで剥ぎ取ることができた」
「え……?」
「剥ぎ取ったスキルは素材として保管できる」
「なに言ってんの? そんなことできる訳ないでしょ……」
薄々予想はしていた。
生きた魔物からスキルを奪って他のアイテムや生物に付与しなおす。
やはり、普通ではないらしい。
「他のゴブリンに付与しなおすこともできた」
俺は剥ぎ取ったスキルを既に他のゴブリンに付与したことを告げた。
「もしそれが本当だとしたら、とんでもない能力ね。怪物を作りだすことが出来てしまうわ」
ユリアーナの表情が強ばる。
彼女が何を心配しているのか直感的に分かった。
力を求めて力におぼれる、心の弱い者の未来。
「怪物を作ることは出来るかもしれないけど、俺自身が怪物になることは出来ないんだ。付与できるのは錬金工房の中だけで、俺自身は錬金工房の中に入れないからな」
『残念』と少しおどけて微笑む。
「本当残念ね。最強の助手を手に入れ損ねたわ」
彼女が胸を撫で下ろした。
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