第41話 魔術師ギルド(1)
ユリアーナとロッテを孤児院に向かわせ、俺自身は魔導士ギルドへと向かった。
彼女たちの目的は赴任してきたばかりの助祭とこれから赴任してくる新しい司教に関する情報収集。
俺の目的はロリコン代官に接触するための伝手を作ることだ。
その第一段階の魔導士ギルドのギルド長との会談は、『アンデッド・オーガの素材の買い取りを頼みたいのと、ここでは口にできないような性能の魔道具を鑑定して欲しい』という一言でいとも簡単に実現した。
アンデッド・オーガの素材を引き渡した後、魔導士ギルドの応接室に通された。
俺の前にはテーブルを挟んで二人の男女がいる。
一人は俺の正面に座った初老の男性――魔導士ギルドのギルド長で、もう一人は魔道具の鑑定を担当する三十歳前後の女性。
俺は二人の前に長剣を置く。
「これが硬化と自己修復能力を持った鋼の長剣です」
オリハルコンやミスリル辺りならもっと恰好が付くのだろうが、
この辺りの希少鉱石の入手は今後の課題だな。
「鑑定をさせてもらってもいいかな?」
「もちろんです」
俺が承諾の返事をすると鑑定役の女性がテーブルの上の長剣に手を伸ばした。
「では、失礼いたします」
長剣の外観は以前俺が遊んだRPGゲームに出てきた聖剣を参考にし、必要以上に華美にならないようデザインしている。
女性が長剣の鑑定を終えるまでの数分間、応接室に緊張と沈黙が流れた。
「どうだ?」
女性が長剣をテーブルの上に戻すとギルド長が即座に訊いた。
「本物です……。確かに硬化と自己再生能力が付与されていました」
鑑定役の女性の声が震えている。
この剣がどの程度の価値があるのか判断できないが、彼女とギルド長の表情から見て相当に価値があると考えて良さそうだ。
「カンナギ殿、鑑定の依頼と言うことだったが、この剣を譲ってもらうことはできないだろうか?」
「その長剣は差し上げます」
「な?」
「え?」
ギルド長と女性が息を飲む。
「その代わりと言っては何ですが、この街の代官に私をご紹介願いたいのです」
「理由をお聞きしてもよろしいかな?」
驚きの表情を浮かべていたギルド長の顔が瞬時に真顔へ戻り、鋭い視線が俺に向けられた。
成人まもない若造が地方都市の代官に引き合わせて欲しいと言われて、『はい、そうですか』とはいかないよな。
現代日本なら高校一年生が政令指定都市の知事に会いたいと言っているようなものだ。
いや、権力を考えると知事以上か。
それに、どこの馬の骨とも分からない男を要人に近付けたくないのも分かる。
「お話した通り、私は父の跡を継げませんでしたが商人としてやっていくつもりです。その上でこちらの代官様の面識を得たいというだけです」
「なるほど」
商人が成り上がるために権力者や有力者とパイプを持つのは地球も異世界も同じようだ。
俺の嘘を簡単に信じてくれた。
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