第27話 言わないほうが、困らせてるよ。
校門で待つ男は私、千歳の幼馴染……いえ幼馴染とさえ呼べない相手。幼い頃に知り合ったと言っても、同学年ではあるけれどほとんど付き合いのなかったそんな相手。たまに会えば「綺麗だ」「付き合え」とそんなことしか言わないそんな相手。見た目だけは良いらしいそんな相手。
そんな相手にトモと一緒のところを見られてしまった。別に見られることは良いのだけれど、黒川は「そんなやつと付き合うくらいなら俺と付き合え。」と迫ってきた。無理だと拒絶けれどその日以降私に連絡を寄越して来ては別の高校に通っているため、わざわざ目立つように校門で待つようになった。
迷惑をかけたくないとトモには理由を伝えることはせず、ただ「用事がある」とだけ伝え黒川くんに付き合えないと断りを伝えるけれどまったく聞く耳を持ってくれない。おかげでトモと帰る機会が減ってしまっていた。
次第にトモの様子がおかしくなっていることに私は気付いた。会話をあまりしてくれない。声をあまりかけてくれない。私は話したいのに……と。けれど私から声をかけることが苦手なためなにも言えなかった。馬鹿だと思う。私。
そして今まであまりにも周囲に気を使っていなかった私が犯したこと。
彼の前で黒川と一緒に行動したこと。
それよりもトモくんに黒川くんのことを伝えなかったこと。
別になにも悪いことをしていなくともそんなことをするべきではなかった。
それに気付かせてくれたのは水崎さん。
水崎さんと私がふたりきりになった時に声をかけてくれた。
「最近校門で待っている人って誰かな? 」
水崎さんは聞いてきた。
「私の幼馴染っていうのかな?実際ほとんど付き合いなんてなかったんだけど。でも私とトモが一緒に歩いてたところを見てトモじゃなく俺と付き合えって迫られてて。断ってはいるんだけど・・・しつこくて。なかなか解決しなくって……」
私は水崎さんに黒川について素直に話した。
「トモくんに話した? もし話をしてないのならきちんと話をして。トモくんきっと気にしてるよ? 」
その問いに私は、
「話すとトモを困らせそうで……」
そう答える。すると水崎さんは、
「伝えないほうが、困らせてるよ。きっと。
私だったら思う。
側にいる人が別の人と一緒にいるのは嫌。
別の人を優先されるのは嫌。
伝えてくれないのは嫌。
一緒に居てくれないと嫌」
「だからちゃんと伝えてあげて。じゃなきゃ私が取っちゃうよ」
ちょっと冗談っぽくそう言って私に微笑んてくれた。
その後……私は同じ状況を考えてみた。
それでやっと分かる私。馬鹿な私。ほんとにごめんね。トモ。
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