第37話 告白。
千歳に告白しようと決めたもののなかなか出来ない俺。お互い好きと想いを交わし合っているのに、待ってると言ってくれているのにそれでも不安な俺が居て。あれだけ近くに居た玲とでさえうまく心が通じ合わなかったことが少し引っかかる俺が居たから。ははっまったく臆病になったものだ。
だけど千歳を待たせているわけだからいつまでも告白しないという選択肢はないわけで。
ある日の放課後うちのグループの掃除当番。俺と玲はそのグループだが千歳は違う。けれど俺達と一緒に帰るために掃除が終わるまで俺たちのことを待ってくれていた。そういや玲を避けるようにゴミ捨てに行って、そしたら千歳が落ちてきて俺は怪我をしてと……そんな出会いだったなあと今更ながらに思い出す。
さてゴミ捨てにでもいくかとグループの皆へそう伝え、ゴミ箱持って向かおうとする。いつものように、玲が「私も行こうか? 」と聞いてきたがひとりで行けると遠慮しておいた。
俺ひとりで向かおうとしていたのだが千歳が何も言わずに後を付いてきた。まあ千歳ならいいかと一緒に行くことにした。
ゴミ捨て場に行く途中例の非常階段の側を通る。現在は3段くらいの階段がしかない1階部分は渡り廊下のような通路として通れるけれど、2階に登る入り口から閉鎖されている。
「俺たちここで関わりができたんだよなあ。今日のようにゴミ捨てに行こうとしてここを通ろうとしたら千歳が上から、空から降ってきて」
俺はしみじみとそう言った。
「そうだね。でもあの時は本当に怖かったよ」
千歳は怯えたように少し震えてそう言った。
だから俺は千歳と手をつなぎ、非常階段を通り過ぎてゴミ捨て場にゴミを捨てる。そしてまた、教室へと戻るため非常階段の横をすり抜けようとした。
すると何を思ったのか千歳が足を止め俺と握りあった手を解いた後、急に非常階段の方へと歩き始める。1段、2段、3段と階段を登り、それから俺の方へと向き直す。
「トモ、怖い? 」
千歳が脈絡もなく聞いてくる。
「それは俺が千歳に気持ちを伝えることがってこと? 」
言葉少ない言葉だったが千歳に何を聞かれているのかが何故かわかった。
「そうだね」
「うん、たしかに怖い。もし失敗すると今の関係さえ壊れてしまいそうで不安になるのは間違いない。たとえ千歳に好きと伝えられててもな。千歳を信用していないわけじゃない。ただ俺に勇気がないだけだ。早く伝えたいと思ってはいても恥ずかしながら」
俺は頭をかきながらそう答えた。すると千歳は
「そっか。ならチャンスを上げる」
そう言って階段3段分という低い高さだけれど、そこから俺に向かって飛びついてくる。だから、俺は千歳が怪我をしないようしっかりと抱きとめた。うん。今度は受け止めることができたなと嬉しく思った俺がいた。
「あの時はトモ気絶しちゃったけどこうやって受け止めてもらったはずだよ」
千歳は俺の胸に顔を埋める。しばらくして千歳は俺の顔を見上げ
「心配しないで。今は事故じゃない。私からトモに飛び込んできたんだよ。大丈夫だから」
優しくそう言ってくれた。その千歳の行動が俺に勇気をくれたそんな気がした。だから
「千歳が好きだ。ずっとそばに居てほしい」
今までの不安が嘘のように俺は素直に千歳へ思いを伝えることができた。千歳はすごいななんて思いながら。
「やっと言ってくれたね。待ってた。私もトモが好きだよ。大好きだよ。側にずっといるから。たとえ嫌だと言ってもね」
千歳はそう言って俺の唇に優しくキスをしてくれた。
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