第13話 ちっちゃなちっちゃな針。
珍しく川崎さんがなにか言いたそうだ。いつものように眉をピクピクして俺を見つめていた。
「川崎さんどうしたの? 」
とりあえず尋ねてみる。
「これ」
川崎さんは封筒を俺に見せる。
「あっラブレター?」
川崎さんはコクっと頷く。
「えっと俺に見せられてもどうしようもないんだけど一体なんでしょう? 」
すると川崎さんは
「一緒に来てほしい」
そんなことを言う。
そういえば川崎さんを突き落としてしまった男性生徒は転校したとちらっと聞いた。男性生徒の処分については特に聞きたいとは思ってなかったわけで噂でしか聞くことはなかった。流石にこのまま学校には居られなかったんだろうなって。こればかりはしょうがないだろうと思う。実際の状況は俺にはわからないからなんとも言えないけど、結果は大怪我を負いそうな事態を起こしてしまったんだから。
そうか、川崎さんへの告白が最近無かったように見えたのはこの件もあったのかなって思う。あんなことがあったわけだから川崎さんも安易に行くのは躊躇われるだろうし。
「えっとなにも起こらないようについていけば良いのかな? 」
川崎さんはコクっとまた頷いた。
川崎さんが告白されるんだろう場所についていくのって相当お邪魔虫だよなあなんて思ってしまう。それでも川崎さんにはお世話になってるしこれくらいはしてあげたいし。とりあえず遠くから見ていればいいだろうと考え放課後ついていくことにした。
非常階段は閉鎖されることになっていた。ああいう事故が起こりえたのだから。なので、今回校舎裏で告白を受けるらしい。
とりあえず俺は、居るだけの置物と化すことに努力することにした。居ないんだ居ないんだって。聞いてない聞いてないって。
校舎裏で男性生徒が待っていた。どうも、ひとつ上の先輩のようだ。
とりあえず俺はすこし離れて見守ることにする。
川崎さんが告白される場面を見て結構きついなって思ってしまった。そういや俺って玲に振られたんだったなって。
そんな中、振られた時の嫌な気持ちとは別の感情、ちっちゃなちっちゃな針が川崎さんへの告白の最中に俺の心に刺さったことになんとなく気付いてしまった。
結局、川崎さんは「無理です」と言葉を残しいつものように淡々と先輩を振っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます