第24話 名前呼び 。
最近の玲は俺と川崎さんとよく過ごすようになった。ついでだけれども夏川ともたまに一緒に昼食を食べるようにもなった。まあ玲目当てで来ているのはわかっている。ただ夏川にも友人がいるはずで「こっちにばかりきていいのか? 」と尋ねたところ「そりゃ好きな人のためならなんでもするさ、まあちゃんと友人に話は通してあるけどね」と爽やかな笑顔でそう言った。まあ玲も夏川には俺との橋渡しをしてもらったことも影響しているのか、上手いこと仲良くなっているようだし問題ないかな?
そういえば放課後にも夏川は玲を誘ったりしているようだ。玲もすべてを断る気は無いようでちょこちょこと一緒にでかけたりしている様子。ただしふたりきりは禁止のよう。
昔なら玲はすべてを断って俺と一緒にいただろうし俺の方は嫉妬の嵐だっただろう。だけど今は嫉妬よりも俺だけに固執せず多くの人と過ごしたほうがいいと、そしてどんなことであってもいいから玲が幸せそうならそれでいいとそう思えるようになった。
玲はなにかを見つけることができたのだろうか。
俺と玲は今回のことで夏川の影響を結構受けたかもしれないなと思えてしまう。あいつは諦めないと言った。玲のことを。そして俺を頼ってまで玲のためならなんでもするという思いがあった。俺とは違う。そして玲の望むものだと思う。一緒にいるためには必要なことだと思ってる。
だから玲は付き合えることは付き合っているのだろうし、俺は夏川を応援してしまっているのかもしれない。あいつならって。
ただ玲は俺と居る時には昔ながらの積極的なスキンシップは変わらないのでこの点だけはちょっと気まずい気もする。だけど特に川崎さんは何も言わない。気にしていないということだろうか。ちょっと寂しい。
いろんな事を考えてしまったけれど一番悩ましいのはこんな気持ちの変動についていけない俺がいることだ。
玲のことはたしかに好きだ。それでも告白したときのような好きの気持ちとは変わってしまったと思う。そうなったのは川崎さんの事があるからだと思うけれど。
ほんとこんな簡単に心の変化が起きるものなのかと俺自身嫌に思うこともあって。
そんな複雑な心境を抱えてしまってもこれだけは言える。
俺の世界の中心が川崎さんに変わってしまったけれど後悔なんてものはない。たしかに川崎さんとの関係は今はよくわからないけれどとにかく大事にしたいと思っている。
以前のようなことはしないんだって。
放課後は玲は用事があるということで川崎さんとふたりで帰る事になった。いつものようにふたり穏やかに帰っているところ川崎さんがなにか言いたそうにしていることがわかった。
「川崎さんどうしたの? 」
いつものように尋ねてみる。
「木崎くん。そろそろね。私も木崎くんのお母さんや水崎さんのように名前で呼びたいなと思ってるんだけど、どう? 」
ちょっと首を傾げて俺に問いかける。
うん、可愛い。
「いいよ。なんて呼ぶ? 」
「皆トモくんって呼ぶから、私はトモ。トモって呼ぶわ」
川崎さんは微笑んでそう言った。
俺は川崎さんに
「だったら俺も川崎さんを名前で呼ぶことにするよ。千歳でいいかい? 」
「うん、とても嬉しいわ。トモ」
千歳は恥ずかしそうにボフッと俺の胸に顔を埋めた。
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