第15話 付き合っていない。
ギプスが取れた翌日からも俺は川崎さんと通学することになった。
特段、ふたりで会話することが多いわけではない。それでも心地よい時間が過ぎていく。ただいるだけでいい。そんな関係。ずっと続けばいいななんて思いながら今日もゆっくり歩いていく。
学校へ着きいつものように教室へと入る。クラスの皆は川崎さんが入ってきたからこちらを見たのだろう。だけどなぜかいつもと違うクラスの雰囲気。俺の腕にギプスが無いのを見るや「なんで? 」「まだ一緒? 」そんな声が聞こえてくる。
とりあえず俺は川崎さんと別れ席へと向かい鞄を机の横に掛け椅子へと座る。ふと見るとなにか気になったのか川崎さんの方をクラスの人の多くが見ていた。
クラスのある女の子で名前覚えてないや、が川崎さんへと近寄っていく。そして
「川崎さん、聞きたいことがあるんだけど? 」
恐る恐る声をかけていた。
「なんでしょう? 」
川崎さんは素直に応対するようだ。
「えっと木崎くんだっけ? 怪我が治ったようだけどまだ手伝いしてるの? 」
ぷっ、俺の名前覚えられて無いやとそこは良いか。俺もあの女の子の名前覚えてないし。それよりもクラスの皆は俺の腕が治っているのに、なんでまだ一緒にいるの? と思ったんだろう。やっと俺はクラスの雰囲気が違う理由に行き着いた。
「いえ、してないわよ。というより手伝いがなきゃ一緒に居ちゃいけないの? 」
彼女は逆に問いただしていた。
「いえ、そんなんじゃないわよ。もしかして川崎さんって木崎くんと付き合ってるの? 」
川崎さんが俺と付き合うわけ無いじゃんっと思いながらも川崎さんがどのように返すか気になってしまった。
「付き合ってないわよ。それがどうかしたの? 」
あっさりと返事を返す川崎さん。
「いえ気にしないで。ちょっと聞きたかっただけだから」
そう言ってその女の子は席に戻っていった。
川崎さんも大変だなと思った。周りの注目を集めて。まあ俺のせいだったんだが。そんなことを思いながらも「付き合ってない」と川崎さんの口からはっきり聞いてなんとなく嫌な気分になってしまう俺が居た。でもそれが当たり前の返事だ。それでもたとえ付き合ってなくても一緒に居たいと思った子にそうはっきりと言われると、拒否に似た言葉に感じてしまい胸の奥にちいさな針がまたひとつ増えたようなそんな痛みが走るのだった。
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