第12話 受け入れてくれる存在。
今まで俺が見ていたものは玲だけだったんだって、玲しか見えてなかったのかもしれないって今さらだけどそう感じた。ほんと俺はある意味周りに無関心だったのかもしれないなって。他のクラスメイトの名前もうろ覚えだし川崎さんのことだってそう。美人でもてるけれど周囲に無関心な子、その程度しか知らなかったし興味もあったわけでなかった。何をするにも玲が一番だったんだ。
けれど玲に振られて唯一の存在を失ってさえ俺は周りを見もせずぼっちに走った。もし俺に周囲への関心があればひとりにはなりたくないと他のクラスメイトに身を寄せたような気がする。
でも今ではある出来事から俺の世界は作りかえられてしまった。
空から落ちてきて拾った縁は川崎さん。周りに無関心な彼女。そんな彼女が俺の側にいてくれるのは怪我をさせたという負い目だったんだろうと思う。それでも休日以外はいつも側にいてくれて俺と向かい合ってくれた。
そう、いつのまにか俺の世界に現れた一つの存在。
そして俺の世界に存在してくれようと理由なんて必要ないと、俺を受け入れてくれる川崎さん。
周囲に無関心だと思っていた彼女が……ね。
でも、そんな川崎さんの優しさがとても嬉しい。
これからも側にいてほしいと思う俺がいる。
だけどそれで良いのかと思う俺がいたりする。偏屈かもしれない。ただ彼女は嬉しいとは言ってくれるけれど居たいとは言っていない。ほんとネガティブすぎる発想だ。でも今更か。だって今現在、理由はあれど側にいてもらってるのだから。
「ありがとな」
俺は思わず川崎さんの頭を撫でてしまう。だけど川崎さんは何も言わず目を瞑り素直に頭を撫でられている。
いや思ったけど彼氏でもない俺に素直に頭なでられてるなって。だけど無意識じゃなきゃ出来ない俺だけどこの時間がとても好きで。
「まだ日にちあるから返事はもう少し待ってもらっていいかな? それともし、川崎さんがもう嫌だと思ったその時は嫌とはっきり言ってね」
即断できなかった俺は申し訳ないけど少し保留することにした。
「別にいいわ。待ってるから。それに私ははっきりと嫌なことは嫌だと言うから大丈夫よ」
彼女は瞑っていた目を開け僕を見上げてそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます