第06話 とりあえず退院。



 川崎さんは助けたことによる吊り橋効果なのかなぜか俺に好印象を持っているかのようだ。頭撫でてなんて普通恋人に言うものだ。まあ嫌じゃないからいいんだけど。ただいつまでもこうしてるわけにもいかないしもうすぐ面会時間も終わるわけで。


「川崎さん、もうすぐ面会時間も終わるから、今日はこのへんでそろそろ帰ったほうがいいよ。それともう明日と明後日は来なくていいから。ただお願いは学校に復帰したらお願いすることになると思う。いいかな? 」


「うんわかった、また学校で。今日は帰るね。じゃおやすみ」


 川崎さんはやっと僕の胸から顔を離し優しい微笑みを俺に向けてからそう言い帰っていった。


 翌日俺は打ち付けたことによる異常がないかなど精密検査を1日行った。俺の母さんには


「これ以上馬鹿な頭に悪くなるところなんてないでしょ? 大丈夫よ」


 なんて嫌味を言われたけど。

 そういえば今日も玲は来ていたらしい。検査で病室にほとんどいることがなかったので会うことはなかったが玲はどうしたいんだろうといつもながら俺は頭を悩ませた。


 母さんによれば、


「彼氏として付き合うことに振るという行為をしてしまったんだろうけど、それとは別にいつも一緒にいた幼馴染としてのトモくんを失うことにはどうしても未練があったってことじゃないの? 母さんから言えばそれならなんで即振ったんだろって思うけどね。もう少しゆっくり考えて話し合えばまた違った結果になったかもしれないのに」


 なんて言っていた。

 それと川崎さんの母親と川崎さんを突き落とした子の両親もお礼とお詫びに来ていたそうだ。そのあたりは母さんに任せておいた。俺が会っても言うこと無いしね。


 


 その翌日俺は右腕にギプスをし退院することになった。

 利き手なんで生活にちょっと支障出るかもしれないなと思っているがこればかりは仕方がない。ちょっと情けないが家でなにかあれば母さんに頼むことにしよう。母さんは嫌な顔せず「いいよっ。赤ちゃんみたいに世話してあげるよ」なんて冗談を言っていたが。


 家に帰りとりあえず、風呂に入る。流石に骨折していたので病院では体を拭くくらいしか出来なかったためゆったりと入ることにした。

 ただ利き手が使えないため体を洗うのが難しく風呂場に母さんが「洗ってあげるよ。私の子供なんだから照れない照れない」なんて言いながらなだれ込んできた。流石に裸は無理なので水着を用意してもらい洗ってもらうことにした。でもこれが一月ほど続くのかと思うとちょっと勘弁してと言いたくなる気持ちもわかってもらえるんじゃないかと思う。


 そういえば玲は今日も家に来たらしい。拒否されていることがわかっていて何故来るのだろう。何を考えているのかちょっとわからなすぎる。ただ「怪我しているトモくんの手伝いをしたいの」と母さんに言ってくるあたり心配はしてくれているようなのだけど。


 さて、とうとう明日から学校へ復帰のため右手が使えないことによる体力消耗が結構あるもので早く寝ることにした。上手く学校生活を送れるかなとちょっと不安にはなったけどまあなんとかなるさと思いながらいつのまにか眠りについた。




 川崎さんとの関係で慌ただしくなることを考えもしないで…… 

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