第19話 想いを言葉で交わすとき。
どすっ。部屋に入った瞬間飛びついてきた玲。
「あっほんもののトモくんだ。幻じゃない。トモくんだ……」
俺の胸に顔を埋めペタペタと触りまくる玲。禁断症状か? というくらい変になってる玲。
「おいおいどうしたんだ、玲。この頃もおかしかっただろ。大丈夫か? 」
俺は頭をなで宥めながらそう問いかける。
「トモくんごめんね。ごめんね。ごめんね」
何度もそう言いながら涙を流す玲。
落ち着くまで待つしか無いかと俺は玲が落ち着くのを待つことにした。
胸に顔を埋める玲。振られて時間は経ったけれどやっぱりこういう時はドキドキするな。そりゃ振られたときより楽になったとは言っても、好きだった玲にこうされれば仕方ないよなって少し開き直る。
しばらくして顔を埋めたまま玲が俺に語りだす。
「あのね。うちの両親が離婚したの知ってるよね。別れた理由、恥ずかしくて辛くて言いだせなかったんだけど不倫が原因だったんだ。それもお父さんもお母さんふたりとも相手作っちゃってさ。そのせいか恋愛が怖くて付き合って幸せになれたとしてもいつかは別れちゃうんじゃないかって。幼馴染ならトモくんと今まで過ごしてきた日々がこれからもずっと続くって、過ごせるんじゃないかって。たとえ喧嘩してもいつものように仲直りできるって。彼氏、彼女がお互い出来ちゃっても離れなくてもいいって。幼馴染ならずっと一緒に居られるんじゃないかって。勘違いしちゃってた」
俺は彼女の話を終わるまで黙って聞くことにした。
「そんなの関係ないんだよね。拒否すれば別れちゃうし裏切れば離れちゃうし嫌いになれば側に居られないし。どんな関係でも別れはあるんだってわかってなかった」
「なのにトモくん拒否しちゃった。拒否したのに、私が近づけばトモくんが辛い思いをするはずなのに無理に近づいちゃった。邪魔しちゃった。嫌われちゃった」
「そして今までわたしが居た場所に川崎さんが現れちゃった」
「後悔しても遅いってわかってる。馬鹿なことしたってわかってる。自分のことしか考えてなかったってわかってる。でもトモくんと離れたくなかったから、側にずっといたかったから。トモくんごめんね。本当にごめんね」
彼女は言いたいことはすべて吐き出せたようで、最後に「ごめんね」を繰り返す。
「あのさ。俺は別に玲のこと嫌ってるわけではないんだよ。それは違うから。ただ俺も自分のことしか考えてなかったんだよ。玲のこと何も考えてなかった。今まで一緒に過ごしてきてさ。長い長い時間一緒に居たのに告白を断られたんだからもう諦めるしか無いってそう思った。だから玲の近くにいるのが、苦しくなるのが嫌で拒否してしまった。話も聞かないで。もっと俺の気持ちを伝えないで。心が広いやつだったらきっとあんなことしなかったんだろなって思う。俺よりも玲のことが好きなやつは諦めたりしなかったんだろうなって思う。今になって……遅いんだけどさ。そう思う。玲だけが悪いんじゃないよ。俺も悪かったんだよ」
俺は思っていることを素直に伝える。
「玲ごめん、そしてありがとな」
そう言って玲を見つめて微笑んだ。
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