第05話 川崎さんにお願いしてみた。



 川崎さんはなぜか俺の左手を受け入れて俺の胸に顔を埋めたまま撫でられていた。ん。俺にこんなことされて嫌じゃないんだろうか。まあ俺も勝手にしてしまった手前、左手を引くのが難しい。

 それよりも……痛い。怪我してたんだった。右手が痛い……。どうも胸も打ち付けているようでそこそこ痛かったりする。ただ川崎さんを見ていると拒否できないんだよなあ。好きとか綺麗だからとかじゃなくあの大きな目に溜めた雫。結構キテる気がして無碍に出来ないんだよなあ。


「大分落ち着いたみたいだね。そういえばなぜ落ちてきたのか理由を聞いても? 言いたくなければ言わなくてもいいけど」


 そういえばなぜあんな事になったのか理由を聞いていなかったなあと思い一応聞いてみた。ただ言いたくなければ言わなくていい。嫌なことは話したくもないだろうし俺に話したくないってこともあるだろう。


「うん。私、よく非常階段に呼び出されて告白されるんだけど今日もそれ。付き合う気はなかったから断ったんだけど相手が暴走して抱きつこうとしてきたの。それを避けたときに躓いちゃってそれと同時に告白相手に押されてしまって」


 うんなんか危ないやつだな。そいつどうなったんだろ。警察行きかな?まあどうでもいいや。そんなやつのこと知りたくもないし関わりたくもない。でも事情聴取とか受けないといけないのかなあ。まあそのへんは学校行ってからだな。


「ごめんなさい。そしてほんとうにありがとう。私、あっ死んだと思っちゃった……」


「そりゃ落ちればそう思うのも仕方ないし怖かっただろうし。ただもう俺のことは気にしなくていいよ。ケガも右腕だけだし。原因も川崎さんのせいでもないし。だから泣かないでほしいかなあ。綺麗な顔も台無しになる。いや泣いても綺麗かなあ。はははっなにいってんだろ、俺」


 なんか俺、頭の中テンパってるな。よく綺麗綺麗連呼できるな。こんなのイケメンが言うことだろに。でも川崎さんちょっと顔赤くなってるし。


「あの……助けてもらって……お礼になにができるか木崎くんが起きるまで考えてたの。それで右腕怪我してるんだよね? だから治るまで木崎くんの側で手伝いしたいと思うの。木崎くんが嫌なら別のこと考えるけど……どうかな? 」


 川崎さんは上目遣いで僕に伝えてくる。

 いやーこの人綺麗すぎるだろ。こんな上目使いで言われたら普通ころっと落ちてしまうよなあ。それにさ。ぶっちゃけた話、玲に振られてしまってさ。今、心がしんどいわけでこんな優しさ受けるとするっと入り込まれそうでちょっと怖いんだよ。でもこんな人が俺に好意をくれるわけはないと思ってるし。今回助けてくれたそのお礼なんだって勘違いしないようにしないと……と思いながら……そう言えばと一つのことを思い出す。


「川崎さん、それならひとつお願いあるんだけど聞いてくれる? 」


 俺は思いついたことをお願いしてみることにした。


「なに? 」


「俺さ。水崎 玲って川崎さんとも同じクラスメイト。知ってる? 川崎さんはあまりクラスメイトのこと興味なさそうだから知らないかもしれないけれど。その子は俺の幼馴染でさ。ちょっと恥ずかしい話なんだけどこないだ告白して振られたんだよね。だから玲に関わるの止めているんだけど俺を振ったのにどうしても関わってくるんだよ。だから怪我が治るまででいいから側にいて玲が俺に関われないようにするの手伝ってくれないかな? 流石に振られた相手に関わるの辛くてさ。」


 俺は恥ずかしい事情ながらも川崎さんにお願いすることにした。だってなにか手を打たないとオレの心擦り切れてなくなっちゃうよ? なくなっちゃうよ? ほんとに。


「木崎くんの怪我が治るまで、いいえ治ってからもいいよ。側で手伝おうと思ってたから。それくらいなんてことない」


 川崎さんはすんなり俺の願いを受け入れてくれたようだ。


「ありがとう。それなら学校に行けるようになったらお願いするよ。後さ……今更なんだけど……この体勢嫌じゃないの? 」


 川崎さんはまだ俺の胸に顔を埋め頭を撫でられてる状況だ。


「うん。なんか安心する。もっとしてほしい」




 うん。。。まさかおねだりが来るとは想定外だったよ。

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