第21話 望むなら。
休日明け、いつものように迎えに来てくれた川崎さんと学校へと向かう。玲が一緒に行きたいと言っていたのだが川崎さんにきちんと話をするまで待ってほしいとなんとか言い聞かせ、今日は玲には来ないでもらった。
「川崎さんおはよう。行きながらで申し訳ないけど話があるんだ。幼馴染の玲のことなんだけど」
「うん。ちゃんと聞くよ」
川崎さんはそう返事を返してくれた。
きちんと説明した。ふたりで何を話したかを。玲が恋愛関係を望まない理由や俺が拒否した理由そしてすれ違ったこと。
幼馴染の関係をやり直すことにしたこと。
「だから幼馴染の関係をやり直そうという事になったんだ。それでさ。玲ともちょくちょく一緒にいることになると思う。幼馴染として……だけどね」
「だけど川崎さんが玲が側に来ることを望まないのだったら、川崎さんに俺の側にいてもらうのが申し訳ないと思って。だから川崎さんがどう思ってるか聞きたくて」
俺は川崎さんにどうしたいか聞いてみた。嫌なら離れるしか無いと思ってる。川崎さんがいての生活が普通となってきた今だから悲しいことではあるけれど、こればかりは無理をさせたくないし。俺が相談せず勝手に決めたことでもあるわけで。
「ん。別に問題ないよ。木崎くんが水先さんのこと大事に思う気持ちわかるし。私ってそんなに人付き合いが上手いわけではないけれど、それでよければ」
川崎さんはそう優しく言ってくれた。
「木崎くん、言っておくわ。それくらいのことで嫌だとか離れたいとか言わないから。私が側にいて嬉しいと思えたのは今まで生きてきてあなただけなの。そんなかけがえのない人の側を私から離れるなんて考えられないから。周りにあまり興味を持たない私が興味を持ってしまった。そんなあなたに出会えたのだから」
「それとも木崎くんは私が居ないほうが良い? 」
川崎さんがそう俺に問い返す。
そんなわけがない。そう聞かれるだけで胸に痛みが現れるくらい悲しい気持ちになるそんな俺がいるのだから。幼馴染としての玲のこと大切だとは思うけれど、川崎さんのことが今は一番優先したいことだと思っているそんな俺がいるんだと今の会話で気付かされた。あんなに好きだった玲よりも今は川崎さんをもっと大事に思っているんだって。
「ううん、居てほしい。側にいてほしい」
俺は素直にそう答える。
「木崎くんが望むなら私はきっと側にいるわ」
「木崎くんが望むなら、ずっとずっと」
川崎さんは俺に聞こえないような小さな声で何かをつぶやいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます