第26話 ちゃんと聞きなさい。



 ひとり学校を出て家へと帰る。家にたどり着けば母さんが「おかえり」と待っていた。


「ん? どうしたの? 暗い顔だなあ」


 母さんは心配してくれてるようだ。


「んーちょっとね」


 また俺は淡々と話してしまう。


「そういえば今日は川崎さんいないみたいね」


 また嫌なところをピンポイントに聞いてくる母さんだ。


「用事があるってさ。悪い。部屋に行くわ」


 そう言って俺はそのまま部屋へと向かった。


 

 

 うちの母さんは心配性だ。玲に振られたときにも俺の味方をしてくれたようで「玲ちゃんにきつく言いすぎちゃった」と反省していた。まあ仕方ないと思う。俺重視の考えになってしまったとしても。うちは父さんが俺の幼い頃に亡くなった。それから何年も経っているけれど母さんは再婚をしないため、今でも俺とふたりきりで暮らしている。そうふたりだけの家族なんだ。だから俺も母さんが大事だからその気持ちがわかるしそんな怒る気もまったくない。玲もわかってくれていたようだし。




 しばらくして母さんから呼ばれふたりで夕食を食べる。

 いつもは結構会話する俺だけど今日は無言。そんな俺に向かって


「トモくん川崎さんとなにかあった? 」


 ド直球に聞いてくる母さん。ほんと勘がいい。


「んー。なにかあったかというとなにもない。まあ俺に勇気ないだけの話かな? 」


 素直に話す俺。そんな俺に


「川崎さんは自分からなかなか口を開かないからちゃんとトモくんから聞かないとだめだよ」


 母さんはそう言って俺を諭す。




「うん、そうだね」


 俺はただそう答えるしかなかった。


 


 それでもほんと母さんが居てくれて助かってるよ。ありがとう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る