第09話 歪んだ思い。
「僕たち仲良く、そしていつまでも一緒にいようね」
私、玲の大切な言葉。大切な人からもらった言葉。
恋愛が怖かった。醜く感じた。それを感じてしまったのは両親のせいだ。両親は互いに不倫をし、いつしか家でさえ相互干渉しなくなりそして別れた。それを見続けた私は恋人や夫婦でも別れるんだって。別れればその関係は終わりなんだって。
幼い頃から一緒に過ごすトモくんが大好きだった。一緒にいたかった。離れたくなかった。だからトモくんが言ってくれた「いつまでも一緒」という言葉がとても嬉しかった。
幼馴染ならいつまでも一緒に居れると思った。たとえ喧嘩しても仲直りできると思った。夫婦とは違うんだと思った。恋愛とは違うものだとそう思った。
トモくんから告白された。本当は嬉しかった。それでも思った。恋人になってしまえば……両親のように別れてしまうかもしれない……と。それが頭によぎった私はトモくんの告白を断ってしまった。トモくんを拒否してしまった。それでも離れたくない一心で「幼馴染として仲良くしてね」と伝えてみたけれど、拒否した代償は私にとってとてもとても大きいものだった。
「関わらないで」
トモくんと離れたくなかった。一緒にいたかった。わがままと言われてもそれでも良かった。仲直りしたかった。だから関わりを拒否されてもトモくんに近づいた。いつかいつか仲直りできるようにと。
頑張って頑張って拒否されてもトモくんに会いに行く私。でもトモくんのお母さんから言われた言葉が私の心を少し壊す。
「玲ちゃん? どうしてトモくん振ったのにここまで関わろうとするの? あなたはわたしの息子を傷つけたの。それなのになんで振った後までつきまとってこれ以上傷つけようとするの? トモくんはあなたの一番になりたかった。多分そうだと思う。それを拒否したのは玲ちゃん、あなた。幼馴染でも拒否したあなたはこれ以上踏み込んじゃ駄目よ。申し訳ないけどこれ以上トモくんを傷つけないで」
「玲ちゃんごめんね。どうしても私はトモくんを振った玲ちゃんに優しく出来ないの。本当はいろいろと玲ちゃんにも話を聞いて判断しないといけないと思う。でも無理なの。親バカでごめんね」
好きな人と一緒にいることだけしか頭になかった私。恋愛関係で壊れる不安ばかり考えてしまった私。そのせいで本当に大切な人の心を傷つけた私。「幼馴染でも駄目なことがある」トモくんのお母さんから言われた言葉が心を貫く。幼馴染でも別れないといけないことがある?
私はどうしたらいいんだろう。悩み悩んだ私はその日トモくんに近づくことが出来なかった。
トモくんが川崎さんと一緒に過ごしていた。利き手を怪我しているからと手伝っているとの話。そのふたりの並んでいる姿を見て私は心が固まった。なんでわたしの場所にいるのよと。そして一緒にいることを重視していた私でもさすがに気付いた。私はずっと一緒に居たいだけじゃなかったんだって。トモくんの側にいてトモくんの一番でありたかったんだって。
少し歪んだ私の心は一気に一気に壊れていく。
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