こんな嘘つきのラブコメは正しいのだろか
貸し切り状態のブックカフェの中で行われたラブコメ小説プレゼンが終わった後、椎葉流紀は両手を1回叩いた。
「そういえば、吹雪とやってみたいことがあるんだけど……」
「流紀姉ちゃん。何でしょう?」とかわいらしく首を傾げてみせる現役アイドルと顔を合わせた双子の姉は首を縦に動かした。
「web小説読書会だよ!」
「なんだよ! それ!」
そうツッコミを入れたのは、流紀の隣の席に座る倉雲奈央だった。
「読書会ってあるでしょ? 同じ本を読んで感想を伝え合うヤツ。あれのweb小説バージョンなのです」
「流紀姉ちゃん。面白そう。何読むの?」
そんな疑問の声を聴いた流紀は、スマホを机の上に置き、画面を操作した。
「とりあえず、私がよく利用してるweb小説投稿サイトのオススメ作品の欄に載ってる学園ラブコメ作品にしようかな。ということで、作品が決まりました。こんな嘘つきのラブコメは正しいのだろか 捏山 造さんの作品です。一応、URLをメッセで送るわ。倉雲くんも参加してね」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896169215
表示されたURLをタッチすると、すぐにサイトに繋がる。
【夏祭り偏突入!】鈍感ひねくれ主人公が四人の美女と夏祭りに!
そんなキャッチコピーの作品を3人の中学生たちが読んでいく。
初恋の相手を失った主人公の周りに、個性豊かなヒロインたちが集まっていくベタなラブコメ小説。
そんな小説を読み終わってから、流紀は椅子に座った状態で両腕を上に伸ばした。そうして、周囲を見渡し、首を縦に動かす。
「1話平均文字数約1500文字だったから、結構スラスラと読めたね。では、みんな読み終わったみたいなので、感想を伝え合いましょう。まず、私から。読みやすさに気を使っているような感覚が行間から伝わったきました。オーソドックスなラブコメ小説という印象で、親しみやすいと思います。次は吹雪の番だよ」
「アフガニスタンと日本のハーフの子が出てくるweb小説、初めて読んだ。ロシア、アメリカ、イギリス、フランス。この国々のハーフ設定なら聞いたことがあるけど、アフガニスタンは珍しいよね。他の子たちも個性があって良いと思う。じゃあ、最後は倉雲くん」
現役アイドルからバトンを渡された奈央は深呼吸した。
「そうだな。キャラクター同士の掛け合いが面白かったな。キャッチコピーにあった夏祭り偏が、どんな展開になるのか気になる」
「倉雲くんと心美ちゃんみたいに、夏祭り会場でイチャイチャするのかもね。はぐれないように、男の子のシャツの裾を掴んで歩くとか?」
隣でニヤニヤ笑う流紀を前にして、奈央の顔は真っ赤になった。
「なっ、なんで、いいんちょが知ってんだ?」
慌てるクラスメイトの横顔を見つめた流紀はクスっと笑った。
「私が知らない間に、そんなことしてたんだ。じゃあ、次は、倉雲くんに夏祭りのことを聞いちゃおうかな。吹雪も聞きたいよね?」
「はい。流紀姉ちゃん!」
そして、倉雲奈央は小野寺心美と過ごした夏祭りの思い出を話し始めたのだが、それは別のお話。
或る学級委員長の日常 山本正純 @nazuna39
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