君と育む恋の花 ~Don't get into a flower garden and a flowers~


「倉雲君に読んでほしいweb小説を見つけたんだけど……」

 ある日の学校の休み時間、椎葉流紀は隣の席に座るクラスメイトに、スマホを取り出しながら、こう話しかけた。

「珍しいな。いいんちょがオススメの小説を紹介してくるなんて。どんな話なんだ?」

 興味を示す異性の同級生から流紀は視線を逸らしつつ、スマホを操作する。

 その時、目の前にいる倉雲奈央のスマホが震え、彼は無意識に学ランのポケットからそれを取り出した。

 画面を見ると、流紀からメッセージが届いていることが分かる。


「あらすじとプロローグ読んだら、言いたいこと分かるから。まだ連載が始まったばかりだから、話数も少ないし、休み時間中に読めると思うよ。さっき送ったメッセにリンク貼ったから、ググる必要もないから」

 言われるまま、送られてきたメッセージに少年は目を通す。


 君と育む恋の花 ~Don't get into a flower garden and a flowers~/meg

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889674731



 すぐにURLをタップして、彼は学級委員長が勧めてきたweb小説を素直に読み始めた



【ラブコメ】~少年は恩人に会う為、女子校へ~



 幸助は自分を救ってくれた恩人との約束を果たす為、彼女のいる学校への入学を目指す!


 しかし、そこはまさかの『超』お嬢様学校で・・・・・・


 男女比 1︰754の学園生活が今始まる!


 ハーレム?いいえ、苦行です。


 手出し禁止!性的な目で見るの禁止!破れば即刻、社会的に抹殺!


 なのに美少女揃いの寮に入れられ・・・・・・。


 幸助は無事、卒業できるのか?


 一応ラブコメです。




 サッとキャッチコピーやあらすじを読んだ瞬間、倉雲の顔は急に赤く染まる。

「いいんちょ、これ多分、一般庶民とお嬢様のラブストーリーだろ?」

「庶民とお嬢様のラブストーリーとか、街一番のお嬢様と付き合ってる倉雲君なら共感できると思ったんだけどね」

「だから、小野寺さんと俺は付き合ってないって何回言ったら分かるんだ!」

 慌てて否定する隣の席の男子に対して、流紀はニヤニヤと笑い始めた。

「まあ、プロローグだけでも読んでみなさいよ」

 促された奈央は、プロローグという文字をタップした。


 一般庶民の男子主人公が、ひょんなことからあるお嬢様の執事になって無事に超お嬢様学校に入学を果たす。

 全ては、自分を救ってくれた恩人との約束を守るため。


 こんなストーリーが画面上で展開され、彼は動揺の表情を浮かべた。そんな顔を近くで観察している流紀はイタズラな笑みを見せる。

「この小説読んだとき、倉雲君と心美ちゃんのこと思い出したんだよね。そうだ。いっそのこと、この小説みたいに、あの家の執事として雇ってもらったら? そうしたら、一緒にいる時間も増えるよ」

「そんな簡単に言うな! 大体、俺に執事の仕事ができるわけないし……」

「それもそうね。倉雲君の執事服姿見て、笑う自信あるわ。えっと、そろそろ聞こうかな? この小説読んで、どう思った?」

「まだ始まったばかりで何とも言えないけど、無事に恩人さんと再会してほしいと思ったな」

 率直な倉雲奈央の感想を聞いた後で、椎葉流紀は感想を熱弁する。

「この小説の主人公は、恩人さんのことが好きで、一緒にいたいと思ったんだよ。この恋心はホンモノだろうし、すごく応援したいって思った。続きも気になるわ」


 その時、教室のドアが開き、別のクラスにいるロングヘアの少女が入ってきた。

「何の話?」

 倉雲奈央と付き合っているという噂のある小野寺心美は、首を傾げながら、2人との距離を詰めていく。

「いいんちょがweb小説を紹介してきたんだ」

「自分を救ってくれた恩人との約束を守るために、庶民から執事になった男子が、超お嬢様学校に入学したラブコメね」

 流紀の補足説明を聞き、心美はなぜか目を輝かせる。

「面白そう」

「じゃあ、倉雲君。私がさっき送ったメッセを心美ちゃんに転送してあげて」

「はいはい」

 

 そうこうしている間に予鈴が鳴り、休憩時間は終わりに近づいた。

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