うふふふふふふふふふふふふふ

 ラブレターから始まる自己防衛生活。


 帯に書かれたキャッチコピーが気になり、思わず購入してしまった文庫本のタイトルを読んだ椎葉流紀は絶句した。



 うふふふふふふふふふふふふふ/ ふりすくん

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889694035


 自室の本棚から適当に選び、学校の休み時間に読もうと思い持ってきた文庫本のタイトルには、「ふ」という文字が13個も並んでいる。しばらく眺めているとゲシュタルト崩壊しかけないと思った流紀は、背表紙に書かれたあらすじを読む。




 人生で初めて、ラブレターが届いた。


 ラブレター。恋文である。


「……………………」


 ラブレター?


 これが?


「思ってたのと違う!」


 僕の思っていたラブレターと、全然違う!


 これはもう、ラブレターじゃあない……。


 僕を守れるのは、僕だけ。


 自己防衛の始まりだ……。




「ラブレター……」

 あらすじの中に4回も登場するラブレターという文字に注目した流紀の頭に、昔読んだラブコメ小説のタイトルが浮かぶ。そして、思わず「あっ」という声を漏らした。

「いいんちょ、どうしたんだ?」

 そう尋ねてきたのは、隣の席に座る倉雲奈央という男子だった。

「昔読んだラブコメ小説のこと思い出してね。一見普通の内容なラブレターが主人公の男子高校生の元に届いたんだけど、問題の恋文は新聞紙を切り抜いた文字で書かれていたんだ。ほら、刑事ドラマとかでよく見るでしょう。娘は預かった。返してほしければ1億円用意しろってヤツ。あれと同じような見た目なんだけど、内容は普通なラブレター。思っていたのと違うラブレターの謎を幼馴染の女の子と一緒に解いていくっていうラブミステリーだったな。今読んでるのが、どんな予想外なラブレターの話なのかが気になるわ」

 軽く説明してから、ページをめくる。すると、1ページから問題となっているラブレターの内容が掲載されていた。


 あらすじがいう思っていたのと違う恋文は、中盤まではふつうなのだが、後半から思わぬ方向へ進んでいく。

 読者を戦慄させる衝撃的な内容に、流紀は鳥肌を立てた。

 ページを読み進める度に増えていく、個性的なヒロインたち。果たして、この中に恋文を送った人物がいるのか?


「ふぅ。ラブレターの怖さは、昔読んだのの数倍。コメディ全振りのラブコメって印象ね」

 一息つき、独り言のように感想を述べた流紀は、一通り読み終わると、そっと文庫本を閉じた。

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