最強勇者に恋された俺の運命は。

最強勇者に恋された俺の運命は。/日富美信吾


https://kakuyomu.jp/works/1177354054885134503



そんなタイトルのラブコメ小説があることを、椎葉流紀はブックカフェの常連客から聞いた。


「そっ、そのタイトルでググったら、読めるから」

 ブックカフェのカウンター席に座っている黒縁メガネのガリガリ体型の男が、喉から変な声を出し、机の上に置いてあったメモ用紙にタイトルを記す。

 一方で、その客の目の前にいた、エプロン姿の椎葉流紀は微笑んでいた。


「ありがとうございます。田中さん」


 その一言で、客の顔が真っ赤に染まっていく。

「やっ、やべぇ。あの吹雪ちゃんと同じ声で……」とその客が呟いた瞬間、店内にいた多くの人々の視線が彼に向けられていく。



 あの人気アイドル、東野吹雪のそっくりさんが看板娘のブックカフェがあるという噂がファンの間で話題になってから増え始めた客たちの鋭い視線に対して、流紀は右手を大きく挙げた。


「はい。注目。今から学園ラブコメ小説プレゼン大会を開催します。優勝賞品とかはないけど、参加してくれたら感想を伝えます。制限時間は1時間。オススメしたい作品が見つかったら、手を挙げてね。その時に、どんな話なのかを伝えてもらいます。あっ、周りの人に迷惑になるから、大きな声で騒いだらダメよ。ということで、私は先程紹介されたweb小説を読んでいきます」


 そう宣言した後、流紀はスマホを取り出し、紹介されたweb小説を読み始めた。


 トラックに轢かれそうなところを通りすがりの美少女勇者に助けられたことから始まる謎が謎呼ぶ学園ラブコメ。



『え、勇者が俺のストーカー!?』というキャッチコピーも面白いが、サブタイトルの仕掛けも良い。


「うーん。コメディー要素に特化した新感覚の学園ラブコメ小説。そんな印象の作品だね。ありがとうございます。田中さん」


 読み終わった後のコメントを聞いたその客の顔はゆでたてのタコのように真っ赤になった。

 その直後、真面目そうな雰囲気の青年が大きく右手を挙げる。

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