主人公と美少女そして俺(脇役)が三角関係なゲームの世界

「倉雲君に読んでほしいweb小説をまた見つけたんだけど……」

 ある日の学校の休み時間、椎葉流紀はスマホをカバンから取り出しながら、隣の席に座る異性のクラスメイトに話しかけた。

「一般庶民とお嬢様のラブストーリーか?」

 街一番のお嬢様らしい小野寺心美との仲をまた茶化されるのではないかと、倉雲奈央はイヤな予感を覚えながら、学級委員長の顔をジッと見た。

 そんな心情など気にしない流紀は、すぐに紹介するWEB小説のURLを彼に送信する。



 主人公と美少女そして俺(脇役)が三角関係なゲームの世界/yurine

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889446101


「まあ、読んでみなさいよ」と隣の席の同級生に促され、奈央はリンクをタッチする。


 妹が、婦女子が、ラスボスが――俺を見つめてくるのだが


 こんなキャッチコピーが表示された後、彼はあらすじを読んだ、すると、倉雲奈央の思考回路は停止する。



 ゲームの世界に取り込まれた俺は、女神の暇潰しに付き合わされる形でリアル恋愛ゲーに身を投じることに。ふとした事がきっかけで気付く女神の悪戯。



 妹、クラスメイト、お嬢さま。俺の日常がラブコメだなんて間違っている。





 ※第1話を改稿したら長くなり過ぎたので分割しました。(2019.5.19)

 ※タイトル変更しました(旧題:恋愛ゲーに取り込まれた俺が悪役令嬢とさし違えるお話)


 ※【小説家になろう】にも掲載しています。



「いいんちょ、これ……」

「安心して。今回のメインヒロインはクラスメイトの方らしいから。軽くネタバレすると、私みたいな優等生の学級委員さんがメインヒロイン。因みに、お嬢様は主人公と学年だけ同じって設定だから、別クラスに所属してるみたい。まあ、こっちは理事長の娘なんだけどね。ところで、倉雲君って妹は……」

「いない」

「ああ、残念。妹がいたら、この小説みたいだって言えたのに」

 露骨に残念そうな表情を見せた学級委員長を前にして、奈央はため息を吐いた。

「それで、どんな話なんだ?」

「恋愛シミュレーションVRゲームの世界に送り込まれた主人公が、さっき話した学級委員さんを攻略していくラブコメ小説ね。テンポが良いコメディが面白いし、登場人物も魅力的に書けている印象もある」


 一通り感想を伝えた直後、ドアが開き、 街一番のお嬢様らしい小野寺心美が真面目な顔で姿を見せた。

「恋愛シミュレーションVRゲームって聞こえたけど、何の話?」

 そう語り、彼女は二人との距離を詰める。

「ああ、このWEB小説の話をしていたんだ。恋愛シミュレーションVRゲームを舞台にしたラブコメ小説だ」

 言いながら、奈央は心美に自分のスマホ画面を見せた。

「またWEB小説、紹介してもらったんだ。」

「小野寺さん、さっき、恋愛シミュレーションVRゲームって言葉に食いついたみたいだけど、何かあるのか?」

「世界初の恋愛シミュレーションVRゲーム開発プロジェクトに、ウチの小野寺グループが出資してるから、気になっただけだよ。他の企業に先を越されたのかと思ったけど、小説の話かぁ」

 安心しきった顔になった小野寺心美を見て、心を和ませた倉雲奈央は、「出資とか、普通の女子中学生が使う言葉じゃない」といつも通りのツッコミを入れる。

 10分間の休み時間は、まだ始まったばかりだ。

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