第13話 命名

「オ帰リナサイマセ、魔人サマ」

―――プルプルン


「ああ、ただいま」



転移魔法でここに戻ってきた俺を迎えてくれたのはトレントとスライムさんだった。

俺は返事をすると足下のスライムを掬い上げ、いつものように抱えるのだった。



「これから俺が知り得た事、そして今後の事についてを一応お前達にも話す。各種族から代表を決めて俺の家の前に集めてくれ」


「ワカリマシタ」



トレントにそう告げ、俺は早足で自宅に向かった。

家に着いてから5分程たった頃、家の前にはゴブリン、トロル、トレント、アンデッド、そして俺の抱えているスライム、という5種類の魔物が集まっていた。



「オマタセシマシタ」


「よし集まったな、話すとするか」



5種類の魔物に先ほど人間の国で得た情報を口頭で伝えていく。国の様子、様々な道具の事、それに必要な通貨の事、そしてその通貨を得る方法の事。

俺が目で見た事、耳で聞いた事、肌で感じた事を彼らに伝える。彼らは何も言わず黙って静かに俺の話を聞いてくれていた。



「これで、以上だ」


「・・・ナルホド、理解シマシタ」


「そして次に、これからの事についてだ。今後、俺は金銭を稼ぐ為にハンターになろうと思う。だが、先ほども説明したようにハンターとは魔物討伐しなければならない職業だ。お前達も思う所があるだろう。もちろん俺もだ。お前達のような魔物だったらなるべく殺したくはないそこで、俺は1つ考えた事がある」



なるべく、彼らを殺したくはない。彼ら魔物を殺したくはない。誰かの為に働く事が至高だ、なんて可哀想な考えの者を俺は放ってはおけない。いや、放ってはおきたくない。

そして、俺は考えた。魔物の一部と依頼主に魔方で確認を取るだけのガバガバな確認方法を行うハンター組合の穴を付けないか?と。



「ハンターが魔物を討伐した際に討伐した魔物を、最低でも指定された一部を持ち帰らないと討伐した事にならないらしい。そこで、もし俺が討伐する事になった魔物でお前達みたいな奴がいれば、その指定された一部だけ貰ってこの村に来てもらったらいいのではないか?と考えた」


「・・・ナルホド!ソレハ良イ考エデゴザイマス」


「ああ、だが場合によってはお前達の同族を殺してしまわなければならない事もある」


「ハイ、分カッテイマス。デスガ、魔人サマ。魔人サマニ殺サレルノデシタラ、最高ノ死ニ方デショウ。死ンダ魔物モ本望ダトオモイマス!」


「そ、そうなのか?」


「ハイ!」

「ヴォオ!」


「そうか・・・」


「で、続きだ。そのハンターになるにあたって、あの国で寝泊まりをした方が効率良く仕事をこなせる。だからここをしばらく離れようと思う。」


「・・・ナルホド」


「1週間に1度はここに戻ってくるようにしようにする」


「・・・魔人サマ・・・イッシュウカン・・・トハ・・・ナンデショウカ?」


「ん?ああ、そうか。7日って事だ。俺は7日に1度ここに戻ってくるようにする」


「・・・ナルホド」


「デハソノ間、我々ハ何ヲシタラ良イデショウカ?」


「あー、それについては今日考えて明日話す」


「ワカリマシタ」


「とりあえず今日のところは、こんな感じだ」



そして、俺はスライムさん以外に解散を命じた。解散した彼らはいつもの村の開拓作業へと戻っていった。


さて、これから彼らに何をさせるかを考えなければならない。俺が居ない間に何をさせるかを考えなければならない。とりあえず、このまま村を開拓して住みやすく、より良くしてもらう。いや、アバウト過ぎるか?



―――プルプル


「・・・」



とりあえず、今はスライムさん愛でる事にしよう。今日は疲れた。









そして、次の日になってしまった。

俺の家の前には、既に昨日と同じく5種類の魔物が集まっている。



(あのあと1日中スライムさんを弄っていて何も考えてなかったな。ヤバいな何て指示だすか)



5種類の魔物が俺の発言をまだかまだかと見てくる。



「えーこの村をこの村にいる全ての種族が住みやすいと言えるように、えー、より良くしていってくれ」


「ワカリマシタ!」

「ヴォォオ!」

「・・・ハイ」

「グガッ!」

―――プルプルン


誰でも30秒程で思い付く適当で具体性のない指示を、彼らは元気良く、本気で受けてくれる。

それが、少し申し訳なく思える。



「ああ、それとお前達に名前をつけようと思う」


「「!?」」



俺の突然の発言に驚く4種類の魔物たち。

これは先ほどの事の様に、適当に考えた事ではない。これは前々から考えていた事だ。

俺は彼らには個体名が存在しない。この前、トレントと話して聞いた事だ。だから俺は種族名で読んでいた。

そして常日ごろから思っていた。分かりづらいと。先ほど話した個体が誰か分からない何て事はあった。その度に別個体に探してもらったりしていた。どうやら魔物達だけは誰が誰だか分かるみたいだ。



「ヨ、ヨロシイノデスカ!?」



いつもは何故か喋るのがゆっくりなアンデッドが声を荒らげる。



「ああ、名前は既に考えてある」



俺のこの発言に魔物達は息を飲んだ。アンデッドも、喉の部分が白骨化してるが息を飲んでいた。余程、嬉しいのだろうか。そう思ってくれるとこちらも嬉しいものだ。



「ではまずはゴブリンから」


「グガッ!!」



ゴブリンは元気良く声をあげると一歩前にでてきた。



「お前はグレム」


「グガッ!!!」



名前をつけると嬉しいそうに喜んでくれる。考えた甲斐があるものだ。



「次にトロル」


「ヴォオ!!」


「お前はサイゴンだ」



その他も同じように名前をつけていく。


「お前はジャック」


「ア、アリガトウゴザイマス!!」



「お前はリックだ」


「・・・アリガトウゴザイマス・・・魔人サマ!!!」



ゴブリンはグレム。トロルはサイゴン。トレントはジャック。アンデッドはリック。

と、それぞれの種族代表に名前をつけた。

これで何か話があれば代表だけ呼び出し、それを各種族に話して貰えればいいだろう。



「喜んで貰えたようでなによりだ」


「コレホドノ幸セハゴザイマセン。我ラ一同。魔人サマノ期待ニ答エラレル様ニ精一杯努力イタシマス」


「あ、ああ。ありがとう」



少し喜び過ぎな気がするが、いつもの事だ問題ないだろう。

俺も彼らに負けないように、この魔物の村が発展できるように、道具や資金を稼がなくてはいけないな。



「さて、そろそろ俺は行こう」



今度は情報収集の為ではなく。ハンターという職業に就職しにアドルフォン王国に向かう。

これは就活だ。



「後は頼んだぞ」



そう言いながらスライムさんをよく撫でる。

相変わらずプルプルと震えている。『任せて!』とでも言っているのだろうか?可愛い奴め!



「サイゴンは転移魔法を頼む。リックは翻訳魔法?を掛けてくれ。ジャックはこの前の枝を数本貰えるか?」



早速付けた名前を読んで指示をだす。

名前を呼んだ事によっていつもより張り切っている様子は微笑ましい。


1人名前を呼ばれなかったゴブリンのグレムが少ししょんぼりとしているが―――



「グレムはお前達が持っていた短剣を1つ俺にくれないか?」


「グガッガ!!」



俺は忘れずにしっかりと指示を出す。するとパアッと明るい笑顔で他のゴブリンの所に走っていった。



(さて、これから就活だ。ハンター組合の受付は簡単な試験と言っていたが面接があるかもしれない。受け答えも少し練習しておくか)



これから彼らの村は彼らの手で発展していくだろう。俺は、彼らには俺のためと思わせつつ、俺は彼らの手伝いをしていく事にしよう。









この時は気づかなかった。悟がスライムを撫でながら言った事、スライムだけ名前が種族名であること、スライムが悟のお気に入りである事。これらの事がスライムを伸し上げる事になるとは、この時は気づかなかった。




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