第2話 魅惑の自然
「さて・・・」
俺は現在、少し遠くに見えた森の目の前に来ている。やはり近くで見ると迫力があるな。
一緒に山の中で生活していた
現代の日本ではこんな立派な木々はまず見られない。こんな状況だが、いやこんな状況だからこそ少しでも
「改めて見ても凄いな・・・」
よく、目の前の木々を見てみる。
木々の一本一本がかなり大きく、見応えがある。木々は
森の中は暗くもなければ、明るいわけでもない。太陽の光が葉っぱの
(こういう所に住みたいな)
頭に永住願望が浮かび、想像上の光景に顔をニヤつかせる。そしてこの森を改めて見た時から我慢していた足がついに動きだし、俺は素晴らしすぎる自然の中に入っていった。
どれくらい進んだろうか――
しばらく歩いた気になっていたが、ふと我に帰り自分がどれぐらいこの森を進んだか気になった。
後ろを振り返り自分の進んできたであろう方向を見る。
目測でだいたい50メートル程の所に外の草原が見える。
これが何を意味するか―――
そう。たいして進んでないのである。
「フッ・・・」
この現象を起こした原因である大自然への感動とかなりの距離を進んだと思っていたが実際には全然進んでない事の驚きが合わさり、自分でも解らない謎の笑みが
(いや、こんな阿呆な事をしてる場合じゃないな・・とりあえず、森を一直線に抜けてみるか。)
一度
もしかしたら何か新たな事がわかるかもしれない。
「・・・何だ?」
森を抜けるという新たに定めた目標を達成するために前方に体を向け直し、歩き出そうとした。
その時―――
俺の目が"奇妙な物"を捉えた。
おかしい。
さっきまでは前方にあんな"水溜まり"はなかったはず・・・
いや、有ったのかだろうか?確かに上ばかり見ていて下の方はあまり見ていなかった。
いや、違う。今、気にするのはそこじゃない。この際、あれが有った無かったはどうでもいい。俺が気にしなきゃならないのはその
たんなる水溜まりかと思ったが違った。それはまるで水をそのまま丸いゼリーにした様な立体の
何だ、あれは。生き物・・・なのか?
仮に生き物だとしてもそんな存在は、少なくとも現実ではあり得ないだろう。ひとまず近くの木に、身を
しばらく見ていたがその場に
いや、あの得体の知れない"何か"自体がそもそもおかしいのだが。
どうするか・・・見た感じではあるが害は無さそうに見える。
あくまで俺の
(思いきって近づいてみるか?)
あの存在を無視しても良いのだが、さすがにあんな
俺は
そのまま後ろからゆっくりと近づいて・・・
いや、ちょっとまて。俺が今見ているのはあの物体の
目や鼻、耳といったある程度の生物にあるはずの顔の部分が確認できない。
得体の知れない物体の、得体の知れなさを
―――くるり
その物体が回った。
いや、これが生物だとするなら振り返った・・・か?
仮に生物だとして、今のが振り返る
「・・・・・・・」
今、謎のゼリー体に
目やその他の
ヤバイ、俺が見ていたのは後ろ姿だったのか!?いや、今も後ろか前かはまったく解らないが。
現在進行形で謎のゼリー体と見つめ合っているが、
ならば野生の猫や犬にするように、ここは思いきってこちらも敵意が無い事を示してみよう。
低くした姿勢のまま利き手の右手ではなく、左手を自分の前に出す。一応、何があるか解らないので利き手は出さない事にした。そして目は謎のゼリー体を離す事なくじっと見つめ続ける。
1~2分程たった頃、謎のゼリー体に動きがあった。
なんと、謎のゼリー体が自分が出した左手に近づいてくるではないか!
内心ドキドキしながらその様子を、目を離さずに見続ける。
少しずつ左手と謎のゼリーの距離は縮まって行きやがて謎のゼリーが左手に触れる。
その時、俺の体に
「ッ――――!」
な、なんだこれは!程よくヒンヤリとした温度!
一見ヌメヌメしてそうな見た目に対し、実際に触れてみるとまるでサラッサラな水の塊を触っている様な手触り。そして何より、この弾力。とても言葉では言い表せないこの
「気持ちいい・・・・」
この世の物とは思えない感触に思わず声を漏らしてしまった。恐らく一生触っていても飽きない自信がある。
すっかりハマってしまった俺は、しばらく自分の手に伝わる気持ちよさを感じていた。
すると―――
―――スリスリ
なん・・・だと・・・?そんな事があり得るのか!
まだ出会って5分もたってないんだぞ!
確かに俺は昔から動物に最初は全く敵意を抱かない事から動物に好かれやすかった。
それが今回も良かったのかはわからない。
しかし俺は今現在この謎のゼリー体に頬ずりをされている。
謎のゼリー体がプルプルしている自分の体を、犬や猫が
はっきり言って素晴らしい。こんなにも素晴らしい事が世の中にあったのか。
良くみたらとても可愛いではないか。うん、とても可愛い。決めたぞ。
両手で優しく
「よーし、よしよしよしよしよしよしよし」
優しく
そして手に乗せたそれの感触を十分に楽しみながら、森を抜ける為に再び歩きだした。
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