第10話 村作り
全て木でできた建物の扉を開ける。
その家は一部屋しかないが、10
俺はギターケースと刀を部屋の
「いい感じだ・・・」
村を作る事に決めた後まず最初に取り掛かったのは住居の製作だ。村を作ると言ったからにはそれぞれの住居が必要だ。そしてその住居の製作に使った建材はこの森の木だ。
あまり人間の私利私欲で自然を破壊するのは良く思わないが、今回はこの森を支配しており、
自然破壊に対する罪悪感が消え去った俺は
その後すぐにトロルやゴブリン達の家を作ろうとしたのだが、それは自分達でやると言われてしまった。ゴブリンとトロルの言葉はわからないのでトレントに通訳してもらって話を聞いたが、なんでも俺がやった事を見ていた一体のゴブリンが建物の作り方を理解したらしく、これぐらいの事なら自分達でもできるから任せて欲しいとのことだった。
細かい部分の加工ならゴブリン達が持っている石の短剣で出来るかもしれないが木を切るのはどうするのだろう。と思いながら様子を見ていると、先ほどのゴブリンがトロルに指示を出した。するとトロルが魔法を
俺はその光景を見て
その後も一体のゴブリンが的確に指示を出して行き俺の家より縦に大きい建物が建った。それを見届けた俺はこうして今に
外の様子を
因みにトレント達に関しては家はいらないとのことだ。何故なら外で日の光を一定以上浴びてないと生命に支障をきたす事があるらしい。そのため例えトレント用の家を作ろうとしたら天井がない囲いのような作りにしなければいけない。そのような事情からトレント達は家は作らない事に決まった。
(あ、そういえば・・・)
外の様子を眺めていると、とても大切な事を思い出した。この世界で初めて会った魔物の事だ。すぐに俺は出来たての家を出るとトレント達が作業している場所に向かう。
トレント達は主に木を生やす作業を行っている。俺は作業をしている一体のトレントに近づき話かけた。
「作業中のところ悪い、スライムさんはまだ戻って来てないか?」
「イエ見カケテナイノデ、マダダト思ワレマス」
「そうか」
実は現在、スライムさんには食料となる魚を捕りに川に行ってもらっている。これは俺が指示した事ではなく、スライムさんが自分からやりたいと言い出した。なんとスライムという魔物も話すことが可能だったのだ。スライムという魔物には口に該当する器官が存在しないため声を出す事はできない。その代わりに彼らは体を震わして会話をするそうだ。人間で言うところの
それスライムさんが言ったのが『自分も何かやりたいので得意な魚捕りをしにいきたい。それとそのついでに
正直スライムさんを手放したくなかったが、本人がここまでやる気を出していたので仕方なく了承した。
それから大体2時間ほど
俺は少し心配だ。変な
しばらくウロウロしていると、やっとスライムさんが戻ってきた。
「おぉ、おかえり!怪我とか無いか?」
俺は帰ってきたスライムさんをすぐ抱き上げ、最高の気持ち良さを
「ナルホド。魔人サマ、アチラヲゴ覧クダサイ」
スライムさんが言った事を理解したトレントがある方向に向かって
それを見て俺がその方向に顔を向けると、そこには大量のスライムがいた。
「え、こんなに居るのか!?」
恐らく全てスライムさんが連れてきたスライム達だ。その数は100体以上いるかもしれない。自分が勝手に想像していた数より圧倒的に多い数で驚いた。それに種類や大きさも様々だ。
スライムさんと同じ水の様な透き通った色のスライムもいれば赤や青、白や黒といった様々な色をしてるスライムもいる。それらが雪崩の様に俺の下に近いてきた。
その多種多様なスライムを見ているとスライムの中、体内に動く何かが入っているスライムがいることに気付いた。
―――プルップルプル、プルンッ!
「ソレハ魚ダソウデス」
スライムさんのプルプル言語をトレントが翻訳してくれた。どうやら俺が気になっていた物の正体は魚らしい。どうやって捕獲したのかは分からないが宣言通りに魚を捕って来てくれたようだ。
魚の入ったスライム達が集まって来て、魚を『ペッ』と次々に吐き出していく。
吐き出された魚はビチビチと地面を数回跳ねたが、やがて跳ねなくなり地面でぐったりとした。
「こんなに・・・凄いな。今後も魚の捕獲はスライム達に担当してもらうのが適任だな」
そこそこな量の魚を捕って来てくれた。食料の方はこの魚とトレントが木の
それとこのスライム達の住居を作らなければならないな。こんなに数がいるならスライム達の家はマンション型の方がいいかもしれない。スライムマンションを作るとしてまずはこのスライム達が何体いるのかを調べなければならない。けどまぁ、今後も増える事があるかもしれないので少しぐらい多く作っても大丈夫か。なら早めに伝えて作ってもらっておいた方がいいだろう。
俺はスライムマンションの事を現場監督ゴブリンに伝えると、大量のスライム達を引き連れて新居に向かった。
「78・・・79・・・80・・・81」
あのあと俺は自分の新居でスライムを淡々と数える作業を行っていた。家の出入口から1列に並んでもらい、一体一体手に取りプニプニ触り心地を確かめながら数を数えていく。
数え終えたスライムはもう一度、魚を捕獲しに行ってもらっている。
「96・・・97・・・」
次で最後のスライムだ。スライムさんが連れてきたスライム達は全部で98体だった。
「98・・・っと」
俺の手を離れた最後のスライムが出ていく。
これでスライム達を確認し終わった。スライムにも色々な種類がいるようで、触ると暖かいスライムや逆にヒンヤリと冷たいスライム、触ると痺れるスライムなどもいた。触り心地も種類によって様々だった。因みに今日触ったスライムの中で個人的にオススメのスライムは、外見が白く濁った水の様な色をしてるスライムだ。他のスライムより軽くて触り心地がふわっふわだったのが印象的だ。だがまぁやっぱりスライムさんの触り心地が一番だな。
「数え終わったし、あのゴブリンに報告しに行くか」
スライムは全98体だ。スライムさんは別として、スライムマンションを作るとしたら25部屋のマンションを4号棟まで作くれば全員分の家が作れる。
(だけど完成までにはしばらく時間が掛かりそうだな。スライム達が夜に外に居るのは心配だ。マンションが出来るまでスライム達には俺の家にいてもらうか。別に他意はないぞ)
部屋がスライムで満たされる事を考えながら俺は外にはでて、作業現場に向かった。
「おぉ!なるほど」
スライムの数を伝えに現場にいくと思わず声に出すほど感心する場面に出くわした。魚の捕獲から帰ってきたであろうスライムが作業の手伝いをしていたのだ。そして俺が一番驚いたのはそのスライム達の手伝い方だ。
たくさんのスライムがキレイに並び、トロルがそのスライム達の上に木材を載せていく。木材を乗せたスライム達が転がると、乗って木材も転がっていった。
スライムが"コロ"の役割をしているのだ。コロとは重量物を運搬する際に荷物の下に敷き、転がして移動させるために使う円形の道具の事だ。これで物の
これを自分達で思いついたのか、そもそも知っていたのかは分からないが、自分たちで作業の効率化が出来てるのは凄く感心する。
(これだけ彼らがを頑張ってるんだ。彼らに何か・・・そうだ。料理でも振る舞うか)
彼らは好きで色々やってくれるが、何か返したいという気持ちが出てくる。
俺は現場監督ゴブリンにスライムの総数とスライムマンションの事を伝えると、俺はスライム達が捕ってきた魚やトレントが栽培した果実を使って料理することに決めた。と言っても今は調理器具もないので簡素なものになってしまうが。
俺はスライム達に捕って来て貰った魚が入れてある
「これは・・・」
捕ってきた魚を入れてある木製の籠の中身を見ると普通の魚だけではなく、凍りついて居る魚や
「そうか・・・。だからスライムさんが連れてきた時に魚を捕ってないスライムがいたのか。これは俺の確認不足だったな。後でトレントにスライムの種類について教えてもらうか。それでスライム達の中で魚の捕獲に向いて無さそうなのはさっきの運搬作業の方に回ってもらった方が良さそうだ」
今後魔物の事を勉強するのは俺の課題だ。一緒に生活する上で彼らの事を知らないのは色々と悪いしな。
これは今後の課題として今はこの魚のことだ。凍ってるのは良いとして、焦げてるのと毒っぽいのはもちろん使わない。全員分の量を調理するのも大変だが、まずは魚の仕分けに少し時間が掛かりそうだ。
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