第11話 下準備


朝起きた俺は少し困った事に気がついた。

それは道具がない事だ。木を切る時はトロルの魔法か、もしくは俺が切っていたので問題なかった。

細かい木の加工はゴブリンたちの短剣や斧で問題なかった。

しかし、畑を作るのに鍬が、水を汲むのにバケツが、食べ物を調理するのに鉄板が、その他の色々な事に道具や素材が欲しい。

文明の利器をあらかじめ知っているとどうしても不便に感じてしまう。


俺が石を切って加工し道具を自作してもいいが、出来れば鉄製の物の方が今後の事も考えると耐久度的にいいだろう。しかし、今から鉄を探すのは時間も掛かるしなにより困難だろう。

だから、手っ取り早く完成品が欲しい所だ。


俺は、まるで子供が遊ぶボールプールの様になってしまった現在の自宅で大量のスライムに埋もれながら頭を悩ませていた。


あの国にもう一度行ってみるか?いや、駄目だな。言葉が通じない上に服装が真っ黒なこのスーツでは目立ってしまう。何よりあの事故のこともある。だが、あの国の発展具合を見ると、最低限の道具はありそうだ。それにあの国以外の国や村などを知らないのも大きい。


とりあえず問題点は言葉、そして服装。

これを何とかすれば国に入れるだろう。しかし服装はともかく言葉は・・・

俺がなんとかして覚える他ないのだろうか?

そもそも俺たちの中にこの世界の人間の言葉がわかる奴いるのか?

トレントが喋ってるのは何故か日本語だからなぁ。だが、一番可能性があるのはトレントだろう。


そうと決まれば俺はスライムの海を泳ぎ、スライム達が玄関から外に出ないよう器用に自宅から出た。そしてトレントの下に向かった。









「トレント、お前人間の言葉とか解る?」


「人間ノ言葉デスカ?申シ訳ゴザイマセン魔人サマ。人間ノ言葉はワカリマセン」


「そうか・・・」


「オチカラニナレズ申シ訳ゴザイマセン」


「いや、良いよ。謝る事はない」


「シカシ、何故ソニヨウナ事ヲ?」


「ん、いや少しな考えていることがあるんだ」



トレントに聞いたが結果は駄目だった。

やはりトレントは魔物の言葉と何故日本語しか話させないらしい。何故、日本語が話せるのかは気になるがまた今度にしよう。今はトレントに事情を説明する事に専念した。



「ナルホド、ソウイウ事デスカ」


「何かいい解決策とかあるか?」



トレントに俺の考えを話した。トレントは自身に生えてる枝をウネウネと動かし一緒に悩んでいた。しばらくすると何か解決策を思い付いたのか全身の枝をピンッと立てた



「人間ニ化ケテ人間ヲ襲ッテイタ魔物ガイマス。ソノ魔物ニ聞ケバ何カ解ルカモシレマセン。」


「なるほど、人間に化けるか・・・」



人間に化ける事が出来る。確かにその魔物なら人間の言葉を話せてもおかしくない。それにあの国にも行った事があるかもしれない。

もし、行ったことがあるなら言葉と共にあの国の情報を欲しいものだ。



「その魔物は何処にいるんだ?」


「ソノ魔物ハカナリ遠クノ地ニイマスガ、問題アリマセン。トロル達ノ転移魔法デ行ケルハズデス」


「そうか、では早速お願いするか」


「ワカリマシタ」



転移魔法とはすごい便利な物だな。なにか使用制限などのものはあるのだろうか?今度、魔法についても色々聞いてみるか。

そんな事を思っているとトロル達の下に着いた。そのあとはトロル達にも事情を話すと、またもや『任せてくれ!』的な雰囲気で張り切っていた。


ここに来た時と同じようにトロル達が円を描くように並び始める。

そして一斉にぶつぶつと何かを唱え始める。

そしてしばらくすると円の中心に魔方陣が出来上がり、その上には白い円が現れる。


そしてその中に俺とトレントが入って行った。









景色が一変するとそこは、緑がほとんどなく大地の部分が所々砂になっている場所であった。

辺りには岩しかなく、こんなところに生物が生息出来るのか、果たして自然にこのような場所が出来る物なのかという色々な疑問を浮かべるが、そんな事は後回しにし目的の魔物の場所に行くべく俺の先導してくれているトレントのあとを付いていく。


しばらくすると岩山に着いた。その岩山には大きな横穴が空いてありどうやら洞窟になっているようだ。



「例ノ魔物ハコノ洞窟ヲ拠点トシテイルハズデス。」



トレントが洞窟に侵入する前に俺に教えてくれた。目的の魔物はこの何もない地のこの洞窟にいるらしい。一体どんな魔物なのか内心ワクワクしてしまっているのは内緒だ。


トレントと一緒にその洞窟に入って行く。



「ダレダ」



洞窟に入ってまもなく、その声は聞こえた。

トレントの様にカタコトだがしっかり日本語だ。どうやら例の魔物は少なくとも俺とは会話できそうだ。



「久シブリダナ。変革ノアンデッド」


「オ前・・・アノ時ノ・・・トレント・・・カ?」


「ソウダ。アノ時以来ダナ」


「・・・ソウダナ」



会話が一旦終わると姿が現れた。その魔物は黒いフードのようなものを被り、先端に石の付いた杖を持っていた。そのハッキリと姿が見える位近づくと魔物はフード取った。


その魔物の正体はアンデッドといわれるものの様だ。一見ただの人間の死体に見えるが、所々白骨化していた。本来眼球がある部分は空洞で、その場所は黒いよりまっ黒く、闇と言った方がいい色に見えた。



「ソレデ・・・ナンノ・・・ヨウダ」



俺が「ああ、俺たちは」まで言った所でトレントに遮られた。



「オ待チクダサイ。魔人サマ、ココハ私ガ説明イタシマス」


「ん?そうか?ならお願いする」


「ハイ」



トレントが代わりに事情をアンデッドに話してくれている。アンデッドからは所々に「・・・ナニ」「・・・ナント」「ソレハ・・・」等の相づちが聞こえる。だいたい4~5分でトレントは事情を説明し終えた様だ。



「事情ハ・・・ワカリマシタ・・・魔人サマ」


「そ、そうか」


「残念ナガラ・・・私ハ・・・人間ノ言葉ヲ・・・話セル訳デハアリマセン」


「・・・そうか」



宛は外れてしまった様だ。俺は少し気落ちして返事を返した。



「デスガ・・・人間ト・・・話セルヨウニナル・・・魔法ヲ使エマス」


「何!」



凄いなファンタジー。そんな魔法があるのか。何でもありだな、流石魔法だ。

これでことばが通じないという問題を解決できる。後は服装だな。服装をなんとか出来れば何とか国に入れるようになりそうだ。



「服モ・・・簡単ナ物ナラ・・・アリマス」


「本当か!?」


「・・・ハイ」



これなら問題はなくなった。言葉も通じる様になるし、服もこの世界で違和感の無いものを用意できる。これで俺はこの世界の旅人か何かだと偽り、あの国に入る事が出来る。だが、もしも身分証や入国許可証などが必要だったらどうするか。まぁそれはその時考えよう。



「魔人サマ・・・」


「どうした?」


「服ヲ譲ルノハ・・・結構デス。魔法モ・・・喜ンデ・・・使ワサセテ・・・イタダキマス」


「あ、ありがとう」


「デスノデ・・・1ツ・・・オ願イヲ聞イテ・・・イタダケマセンカ?」


「ああ、いいぞ。何かしてもらうんだから、対価を要求するのは当然だ。」


「アリガトウ・・・ゴザイマス。ソレデハ・・・私ヲ・・・魔人サマノ配下ニ・・・加エテ・・・イタダキタイデス」


「ああ、お前もか」



魔物は誰かの下で付き従いたい欲求があるんだったな。魔法も使ってもらい、服も貰って、この程度の要求なら逆に俺が何かお礼をしてやりたくなるな



「いいぞ、そのくらい。というか他にないのか?」


「アリガトウ・・・ゴザイマス。私ニハ・・・コレ以上ナイ・・・幸福デス」


「そうか・・・」



本当におかしな存在だな、魔物というのは。


ともかく、目的は達成された訳だ。俺達はその洞窟にあった服を持ち帰り、そのまま3人で拠点へと転移魔法で戻ってきた。



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