第12話 下調べ


「よし、準備完了だ」



俺はあらたに加わったアンデッドを連れて来た後、早速あの国に向かう準備を整えた。

服を着替え、アンデッドに言葉が通じるようになる魔法を掛けてもらった。この魔法が機能しているのは事を確認出来るのは実際に会話をしなければならないが、テストは出来ない。

そのため、ぶっつけ本番になってしまうが仕方ない。


それと、自分の愛刀も持っていく。

例のギターケースには入れず、腰にして持っていく事にした。あの襲ってきた男は剣を普通に持っていた事から、旅人たびびと護身用ごしんようで刀を持っていても大丈夫だろう。



今回のおもな目的は3つだ。

1つ目は本当にこの状態で実際に入れるかどうかだ。もし入れなかった場合は何が駄目なのかを分析して、おそらくあるだろう別の国や村で同じ事をする予定だ。


2つ目は道具等の購入出来る物の確認だ。村の開拓作業に使える物全般、一般的生活に使用する物、調理器具などなど。どういった物があるのか、どれくらいの価格なのかを調べる。今回は調べるだけで入手するのは次回の予定だ。


3つ目は資金しきん調達ちょうたつ出きるか否かの確認。ぶっちゃけいうと職探しだ。物を購入するのにも金がいる。おそらくこの世界にも通貨つうかは必ずある。だから、その通貨を得られる仕事をいくつか見繕うという訳だ。


今回はこの3つを主な目的として、今回はあの国に向かう。そして、十分に情報が得られたら時点で一度帰宅する事にした。得られた情報の結果によって変わるが、何をするにもこいつらに情報の共有と相談をしなければならないからな。



「魔人サマ」


「ん?どうした?」



これから向かおうって時にトレントが話しかけて来た。



「コレヲオ持チクダサイ」


「これは?」



そういってトレントから渡されたものはえだだった。見て触る限りではこれは単なる木の枝にしか思えない。15cm程の普通の木の枝だ。



「コレハ私ノ枝デス」


「ん?お前の?」


「ハイ。コレヲ地面ニ突キ刺スト、私ト通信つうしんガデキマス」


「ほー便利な物だな」


「コチラニ戻ル際ニコレデ連絡ヲオ願イシマス。ソウシマシタラ転移魔法ヲ開キマスノデ」


「ああ、なるほど。了解した。」



そりゃ魔力って有限な物を使って魔法を発現させてるのだから、ずっと使い続けてもらうのは悪いよな。

前回の様に短時間なら問題がないのだろうが、掛かる時間が未定な今回は、使い続けてもらうのはやめた方がいい。



「よし、行くか。悪いが転移魔法を頼む」


「ヴォオ!!」



見るのはこれで3回目の転移魔法の発動。

前回、前々回と変わらぬ動作で魔法陣が作られていく。


そうして出来た白い円に俺は1人で飛び込んだ。





次の瞬間には辺りは草原に代わりこの前、何者かに襲われたあの場所に戻ってきた。

後ろを振り向き、今しがた俺を転移させた魔法を確認すると。転移魔法は俺を転移させるという役目を終えて音もなく静かに消えていく所だった。



「無事、着いたな」



辺りを見渡すが、この前意識を奪い放置した奴の姿はないようだ。2日は経っているので、流石に起きたのだろう。

頭に浮かんだ奴を一瞬で外に追いやり俺は、あの城の上部分がなくなってしまっている国に向かって歩きだした。









「おお!」



この国――アドルフォン王国には思っていたよりすんなり入る事が出来た。入国許可書のような物は必要なかったし、刀も護身用という事で納得してくれた。何より言葉はしっかり通じた。流石魔法。相手の言葉は全て日本語に聞こえたので、恐らく俺の言葉はこちらの言語に聞こえるのだろう。服装も特に何も言われなかった。



「さて、まずは当初の目的を達成するかな」



この国に入って、人が多く賑わっている街並みに驚いた。それも一瞬で落ち着き、俺は残り2つの目的の為にこの国を練り歩いた。





最初に見つけたのは道具屋だった。

その道具屋はかなりの品揃えで日常に使える物から旅や戦闘に使える物まで、色々な物を販売していた。

もちろん目的の品である、くわおの、ナイフなどや調理器具であるなべや焼くため鉄板なども確認できた。おそらく大抵の物はここで揃うだろう。


次にその値段だ。どうやらこの世界の通貨は金貨きんか銀貨ぎんか銅貨どうかのようだ。金貨1枚で銀貨100枚の価値があり、銀貨1枚で銅貨100枚の価値があるという。その通貨には刻印などはされておらず単なる金、銀、銅を丸くて薄く、コインの様にカットしただけの物だ。


因みに鍬と斧は銅貨4枚で、鍋は銅貨6枚という価格だった。イマイチこの世界の金銭感覚きんせんかんかくが分からない。



その後様々な情報を得るために色々な人に話を聞いていた所、何やらハンターという職業があるというのだ。その話を聞いた俺は親切な人に道案内されてハンター組合という場所を訪れた。


そこには鎧を着こんだ者や摩訶不思議まかふしぎな格好でつえを持っている者など様々な人がいた。

おそらく彼らがハンターという職業の者たちなのだろう。


俺は早速受付に行き簡単に話を聞いた。


簡単に言うとハンターとは魔物を討伐する者の事だ。国や民間から魔物の討伐依頼がくるのでそれを受け、見事完了すると報酬が貰えるシステムとの事だ。報酬の内容は、依頼の難易度に比例ひれいして報酬が良くなって行くらしい。

そしてそのハンターになる条件は簡単な適正テストをすれば誰でも成れるというのだ。



その情報を心にメモして、俺はハンター組合を後にした。その後も俺は武器屋やら防具屋を見ながら、働ける場所を探して歩き回った。









「ふぅ、今知りたい事は一通り集まったかな」



そして今、3時間ほどこの国に歩き回り知り得た結果を整理していた。


道具屋は複数あったが、一番最初に見つけた道具屋が一番品揃えが良く、価格も安かった。今後購入するときはこの道具屋にする予定だ。

武器屋も発見したが、残念ながら刀は売られていなかった。防具も鎧のばかりで鎖帷子くさりかたびらのような物はなかった。


肝心のはたらぐちの方だが、ハンター以外は飲食店いんしょくてんの皿洗いなど雑用しかなく、給料も微妙そうな所しか見つからなかった。そのため今の所一番の就職候補はハンターって事になっている。



「さて、そろそろ帰るか」



必要な情報は集め終わったので、帰宅する事にした。俺は3時間前に入ってきた国の入り口からこの国を出ていった。もちろん出ていくときも特に何もなかった。



「あっ、あの城の事は何も聞かなかったな」



アドルフォン王国から出ていく際、あの城の事を聞き忘れた事に気がついた。だが、もう国から出てしまい、また入って情報を集めるのは少し面倒だ。国中を歩いたが被害のような所は全く見なかったが、果たして実際はどうなのだろうか。あのおそらく俺が切って・・・・・しまった城についてはまた次回に情報を集める事にした。



国を出てしばらく歩きこの地に転移してきた、大体だいたいの場所に着いた。流石にこの目印めじるしになるものが何もない草原で正確な位置を覚えておくのは無理だった。



「確かこの枝を地面に差せばいいんだよな?」



これから帰る為ここに来る前にトレントに言われた通り、貰った枝を地面に突き刺した。

直ぐには何も起こらなかったが30秒程たった頃、地面に突き刺した枝は少しずつ大きくなり40cmほどまで成長した。そこから見た目が少し変わり、まるで小さいトレントの様になった。



「魔人サマ、オ帰リデスカ?」



本物のトレントより高い声でその小さいトレントは喋りだした。



「ああ、とりあえず必要な情報は集まったから一旦そっちに帰る」


「ワカリマシタ。今トロル達ニ伝エテ転移魔法ヲ発動シマス」


「よろしく頼む」



会話が終わると小さいトレントは枯れてしまった。その直後近くに魔方陣と白い円が現れる。

俺はその円に飛込み、今の帰るべき俺達の場所に無事に帰った。



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