幕間 魔物の村
マサムネの朝は早い。
彼らスライムは意外な事に
スライムマンションの一部屋の大きさはだいたい1.5畳ほどだ。人間ならかなり
朝のいだいたい7時ごろになると睡眠を取らない種族であるアンデッドの一人が起こしにくる。勿論、全員を起こす訳ではない。睡眠が必要な種族の各代表だけを起こす。そしてその代表は次は自分の種族の仲間達を起こしにいくのだ。
―――コンコン
扉からノックする音が聞こえる。
そしてすぐさまスケルトンが1人、入ってきた。
そのスケルトンは「オァアァ」とうめき声にしか聞こえない声を発した。
すると、この部屋に置いてある黒い箱が開く。その中から出てきたのは一人のスライム。
スライムは『プルプル』と体を
スケルトンは「オアァ・・・」とうめき声を上げて出ていった。
この家はカケル―――魔人様の家だ。
そこに一人のスライム―――マサムネだけは住んでいる。
マサムネは魔人様の家から出ると自分以外のスライムを起こす為スライムマンションに向かった。
そこの一番近い部屋を開けて、その部屋の住人である1人のスライムを起こす。
そのスライムは外見が白く
体が白く濁っているのは空気が混ざっている為である。彼は他のスライムと比べると軽い。それは体の半分が空気だからだ。
体の半分が空気なので触り心地はフワフワだ。魔人様も気に入っていた。
―――むぎゅっ
マサムネがホワイトレススライムの体を押すと彼は目を覚ました。起きたホワイトレススライムは『プルプル』とマサムネに挨拶をし、マサムネも『プルプル』と挨拶をしっかり返した。
その後ホワイトレススライムは
そのためこれでマサムネの起こす役割は終わりだ。
何故、ホワイトレススライムを最初に起こしたのか。それは彼が魔人様のお気に入りの1人だからだ。勿論、一番はマサムネなのは動かないが魔人様はスライム種の中でも彼の触り心地を比較的、気に入っているため彼を最初に起こしたのだ。
決してマサムネが
起こすという朝の一仕事を終えたマサムネは村の各地へと見回りに向かう。次の彼の仕事は村の各地に異常がない事を確認したり、作業している魔物達に今後の作業方針を伝えたりする事だ。
起きたスライム達は各自それぞれの仕事場に向った。
大半のスライム達は川に向かう。彼らの仕事は水汲みと少量の魚の捕獲だ。
自身の体に水を取り込んだスライムは畑に向かい
その冷凍庫の中に
水を含んだスライムが水撒きをしているとリックが率いるスケルトン達が畑にやってくる。
スケルトンやゴーレム達は眠らないが魔人様の意見により、
休憩施設は現在作成中のため、簡単な椅子しかない
スケルトン達の大半はこの前、謎の少女に操られている所を魔人様に助けられこの村に来た者達だ。
薄汚い小娘ごときに操られるという
その畑の近くではジャック達、トレント達が果物を育てている。
トレント達の主な仕事は2つ。食用の果物栽培と、木の栽培だ。彼らは二手に別れて作業を行っている。果物などは魔法により急成長させてすぐに収穫することができるが、そうした場合味が落ちるという事が発覚している。そのため今は急成長はさせないにしても普通に成長するよりはずっと早く、というような程よく魔法を使っている。
ジャック達の果樹園の奥を見ると高速で飛んでいる魔物がいる。
ビートル族は基本的に森の
この"アイタル森林"は広いためトレント達でも常に状況が分かる訳ではない。そのため俊敏性が高いビートル族達が森の中から周辺近くまでを飛び回わり巡回しているのだ。彼らが一番警戒しているのは人間だ。ジャックの話だと滅多に人間がこの森まで来た事はないそうだが、万が一もある。その為ビートル族は常に警戒心を高めている。
トレント達の樹木農場で栽培した木はゴーレム達がオノで斬り倒し、その木は様々な施設や住居を制作するのに使用している。
木の
ゴーレムとアンデッド達が持ってきた木はパブル達トロルとグレム達ゴブリンが切り出し、細かい加工をして使える木材にしていく。
元々トロル達は木を切る作業とと運搬を行っていたが、魔人様がオノという道具を持ってきてくださった事とゴーレムやアンデッドが増えた事によりゴブリン達のように木の加工の作業へと移ったのだ。
木の加工はトロル達が魔法で大雑把な切断をし、ゴブリン達はその木を削ったりなどの細かい加工して
加工した木材を使いゴーレムとアンデッド達が組み立てを行う。
基本的には各魔物達の住居や倉庫、休憩所などの日常生活に必要な物と魔人様に指示された建物を優先して作成している。
そしてその彼ら過ごすの村の周りにはアンデッド・ナイトが見回りを行っている。
因みにこれはマサムネの発案である。
こうして一通り見回りをしたマサムネは次の仕事に向かう。
小さな
「オァ、オァァオオァァァァ」
―――プルプルプル
どうやら、建物を組み立てる作業の所でトラブル発生のようだ。マサムネはそのアンデッドと一緒にその現場に向かった。
そこではゴーレムとアンデッド達が加工された木材を使い、組み立て作業をしていた。
アンデッド達の話を聞くと高いところの作業が
今まで高い所の作業はゴーレムや背の高いアンデッドに持ち上げて貰い作業をしていたのだが、その方法では届かない所の作業が出てきてしまったとの事だ。
このままでは作業が止まってしまう為、マサムネは考える。
プルプルと体を揺らし考える。しばらく考えているとプルッと体を跳ねさせた。
―――プルップルプルプルン
「オァアァァ、オオァァアァ」
マサムネの指示を聞いたスケルトンはどこかに歩いていった。
マサムネが指示したのは
これでよし。指示を終えたマサムネは
それから3時間程たった頃。アンデッド・ナイトと共に一体のアンデッドがマサムネの元まで来た。
「オァアァァ」
どうやらアンデッド・ナイトが連れてきた彼は新しく魔人様の配下になった、この村のメンバーのようだ。
「初めましてだな。私はさと・・・君たちの言う所の魔人にここに来いと言われた物だ」
―――プルプル
初対面でも新たに仲間になったからにはしっかりと挨拶をする。挨拶は大事だ。
そしてここからはマサムネのもう1つの仕事。新メンバーの面接だ。
同じ魔物だからと言って自分以外の種族の事に詳しい事はない。むしろマサムネからしたら知らない魔物ばかりだ。そのためどんな魔物なのか、またどんな
「私はリビングデッドという種族だ。だが他のアンデッドとは素材が違うのでな、おそらくどのアンデッドよりも身体能力が
―――プルプル
まずは種族だ。魔物は様々な特徴があるが大きく分けるなら種族で分ける事が出来る。そのため種族は重要な情報だ。
マサムネはフムフムと頷き、目の前のリビングデッドの話の続きを聞く。
「私は君たちが言う魔人にこの村を守るように言われてきた」
―――プルッ
ふむ、とスライムは思う。今回このリビングデッドというアンデッドは魔人様に既に役割を指定されている者のようだ。ならば自分が余計な仕事を与えてはならない、と。
だが同時に思った。どこを守ってもらうか。
既にビートル族とアンデッド・ナイト達による警備体制はほぼ完成している。本人が言った通り他の魔物より強そうな彼を村の周辺に置いてしまうと折角の戦力が分散されてしまう。
マサムネはリビングデッドに他になにか魔人様からの指示はなかったか?と聞いた。
―――プルプルプル
「む?いや、悟・・・じゃあない。魔人からは村を守ってくれと言われただけだが・・・」
―――プルルッ
「ふむ。ならこの村の中とお主を守ればいいのではないか?」
―――プル?
「みたところお主がこの村で魔人の次に
―――プルプル!
なるほど。マサムネは納得した。それと同時に魔人様に感謝の気持ちを抱いた。離れていても自分を心配してくれている魔人様の気持ちはマサムネに確かに伝わったのだ。
こうしてリビングデッドはマサムネの護衛という仕事についた。
夕方になり、日が
それは料理場だ。そこでは複数のスライム達と、スケルトンが料理を行っている。
少し前に魔人様がスライム達と一緒に料理をした。その時の事を参考にしてスライム達が料理するのだ。料理長として、全体の指揮を取るのは1名のファイアスライムだ。
彼は他のスライムに指示を出しながら自分の上に鍋を乗せて温める。水を含んだスライムが鍋に水を入れると次第に
魔人様のとは少し味が違うそれは食事が必要な魔物達に振る舞われた。
料理長のファイアスライムは、いつか魔人様と同じ味のものを作れるようになるのが目標だそうだ。
完全に日が落ちる時間になると睡眠が必要な種族は寝る時間だ。
夜間は視界が悪くなるため、ほとんどの作業は中断する。アンデッド達は光がない
例えばアンデッド・ナイトが見逃してしまった動物が畑の物を荒らすかも知れない。
アンデッド・ナイトも引き続き村の警備を行うが、畑仕事を行っているアンデッドの夜間の仕事は畑の見回りになる。
ゴーレム達はアンデッド同じ睡眠が必要ない種族だが、アンデッド達と違い暗闇では目が見えないため夜間は簡易的な休憩所で待機だ。
ただしビートル族は睡眠が必要だが暗闇でも
こうしてこの村の1日が終わる。
次の日からマサムネを起こすのはこのリビングデッドの役目になった。
ただ新しく入ったばかりで村のリズムが分からない事と、他のアンデッド達とは全く別の仕事なので朝起こすタイミングが掴めず2日の間マサムネはいつもの起床時間より早く起きるハメになったという。
スライムの朝は早い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます