第7話 自覚する力

「なんだ・・・」



何が起こった。俺は飛ぶ斬撃ざんげきなんて使ってないはずだ。そもそもあの距離であの硬度のものはあのじじいでも不可能だろう。いや、その前に原因は俺なのだろうか。



「・・・・」



確かめるため、刀を構えて何もない空間に向かって先ほどと全く同じ動きをしてみる。



「何も起こらないな」



先ほどと同じ動きをしても何も起こらなかった。つまりあれをやった犯人は俺ではない可能性が高い。一安心だ。その前に飛ぶ斬撃なんて俺はできない。よって犯人は俺ではない。



「念のためだな」



念のためにもう一度、刀を構える。万が一があるため、先ほどのやり取りを完全再現させる。今度は完全再現するために、あの男の意識をとばした時と同じ様に刀に少しだけ殺気を込める・・・。そして先ほどと同じ動きをした結果――――



「・・・・・」



なんか出た。







目を凝らさないと見えない程の細さで紫がかった何かが俺の刀から飛び出た。急に俺が犯人の可能性が急上昇だ。


もう一度自分の愛刀をしっかりと見る。だが、刃こぼれはおろか、なんの異常は見られない。


先ほどと違うのは殺気を刀に込めたかどうかだけで、動きは寸分狂わず同じものだ。と、すると原因は殺気によるものだろう。



「試してみるか」



俺は少し実験することにした。

こんな現実ではおかしい現象をわからないままにしておくのは危険だ。

思いっきり刀に殺気を込めてみる。すると、刀が少し黒がかった紫色のオーラみたいのを纏っていた。



「おお!」



自分の新たなる力に俺は驚き、思わず声を出してしまった。

今、自分の持っている刀は見るからに禍々しいオーラを放ち、溢れる力の放出先を探しているように感じる。



「ふぅ・・・」



俺は軽く息を吐き、全身の力を抜く。俺はそのまま刀を鞘にしまい腰を落とし、構える。いわゆる居合の構えだ。居合とは抜刀術とも呼ばれる、それは鞘から抜き放つ動作で一撃を加えるか相手の攻撃を受け流し、二の太刀で相手にとどめを刺す武術だ。俺の一番好きで一番得意なこの武術。それを特大の殺気を込めたこの刀で放ってみる。



「ッッ!!・・・」
















悟が放ったそれは、先ほどとは桁違いの大きさで、禍々しい紫色でてきた三日月形の飛ぶ斬撃となり、とてつもない速度で空に向かって飛んで雲を斬り、数秒で見えなくなってしまった。



「はは・・・」



悟はどこか呆れたように少し笑った。 しばらく見えなくなった斬撃をそのまま見上げていたが、ふと、思い出した事があった。



(ん?まて、ということは?城を切ったのは俺って事になるのか?)



そう。何のきっかけでこの実験をしたかを、思い出したのだ。

実験の結果から、先の事件の犯人は悟である可能性が非常に高い。



(・・・・・・・)


「とりあえず・・・逃げるか」



しばらくの沈黙のあと考え出した答えは、まさかの逃走。そうと決まると悟はそそくさと刀をギターケースにしまい、モンスター集団の方に向かい、オーク(仮)の一体に預けていたスライムを回収する。



「えーこれから別の場所に移動したいと思うが、お前らはどうする?ついてくるのか?」



これからの行動を伝えて、どうするのかの疑問を投げ掛ける。そもそも、このモンスター集団の目的はなんなのか、というか何故ついてくるのか。相手の言葉がわからない以上、知るにはこちらから問いかけて反応をみるしかない。

一体のオーク(仮)が一歩前にでて口をひらく。



「ヴォヴォオォヴ」


「・・・悪い、何を言ってるかわからなかった」



雰囲気的に大体な感じでは分かるが、ジェスチャー等がない純粋な言葉はまだ悟には早かったようだ。

言ってくれたオーク(仮)が少しだけしょんぼりしている。



「すまん。今のは俺の質問が悪かった。」


「えーっと、じゃあー、ついて来る奴は手を上げてくれ」



言葉での返事が難しいならばこちらからYESかNOの簡単な質問をして、二通りの指示をしておけば何とか大丈夫だろうと思い、手を繋ぐ上げるという簡単な指示をした。


結果はモンスター集団が全員手を上ているという端から見たらシュールな絵になっていた。



「そうか。まぁ別についてくるのは構わないが、多少の協力はしてもらうぞ? あと、いちいち聞くのは面倒だから、ついてきたくなくなったら何時でもいなくなっても大丈夫だから」


「ヴォ!」



オーク(仮)が悟にも分かる簡単な返事をしてこの問題はとりあえず終わった。そして次の問題は逃走先である。

全くの見知らぬ土地なので悟はなにもわからない。

最初の森に帰るのもいいが、そんなに距離が離れてる訳でもないのでもしかしたら犯人探しをそこまで行ってくるかもしれない。

そう考えると、もう少し離れてる場所に行きたい悟であった。



「あー早速で悪いが、あそこの他に人がいるとこしらないか?小さい集落的なところでもいいから」


「ヴォウ・・・」



オーク(仮)はここ以外に知らなかったようで、少し申し訳無さそうに言いながら首をブンブンと横に振っている。悟は「そうか・・・」と簡単に返した。



「じゃあここから離れた場所で、居心地の良さそうな所を教えてくれ」


「ヴオォヴォ!ヴォヴヴ、ヴオォオォ!」


「・・・え?」



『任せてくれ!』的な雰囲気で何やら言っていたオーク(仮)が他のオーク(仮)を集めて、円を描くように並び始める。

そして一斉にぶつぶつと何かを唱え始めた。


しばらくすると円の中心に魔方陣が出来上がり、その上には白い円が現れた。



「ヴォ!!」


「お、おう」



悟は初めて見る魔法らしい魔法に驚きと何故こんなことになったかという疑問が混ざり合い、元気に『出来ました!!』的な雰囲気で言ってきたオーク(仮)に曖昧な返事しかできなかった。



「え、なにこれ?どうすんの?」


「・・・ヴォ!ヴォヴオオオヴ」


「グガッ!」



悟は訳がわからず思った疑問をそのまま口にした。

オーク(仮)がゴブリン(仮)に向かって謎の言葉を言うと、一体のゴブリン(仮)が白い円の中に入っていった。恐らくそう指示をしたのだろう。



「ヴォ!」


「お、おう」



『こんな感じです!』的な雰囲気でこちらに言ってくる。どこかしらドヤ顔しるようにも見えなくもない顔だ。つまりは悟もあの白い円に入れということだろう。



「マジか」


「ヴォヴォ!ヴォウヴォウ!」


「・・・行ってみるか」



白い円の所で『ささっ!どうぞどうぞ!』と言わんばかりにスタンバイしているオーク(仮)に悟は微妙な顔をするが、魔法という未知の物に興味があり内心ワクワクしていた。

意を決して中に入っていった。











一方、その頃



魔界の最奥の地でいつもの日課を行う者がいた。

赤いマントをつけており、手には金属でできた様なガントレットを身に付けているため一見、人間に見えるが、人間ではなく魔物である。それが事実であること証明するように頭に角が二本ついている。


その魔物はかつての魔王の部下であり、部下の中では最も地位の高い4体の幹部―――いわゆる四天王―――の内の1体であった。名をオラクガ。百数年前の魔王軍と勇者の戦いで生き残った幹部は残念ながら彼だけである。


そんな彼は毎日、ある場所を訪れている。そこは魔界の最奥にあり、他の魔物もあまり近寄らない場所にある。外見は祠の様な作りになっており、それは魔界にあるとは思えないほど神聖を放っている。それは魔の者は近づくだけでダメージが入るほどである。


そんな場所に彼は躊躇なく入っていく。


かなりダメージを受けているはずだが、表情などを一切変えずに淡々と祠を進んで行く。通路を進んでいくと広い空間にでた。そこの中央には黒い箱が1つと、その上に丸い水晶の様な物があるだけで他にはなにもない。

黒い箱はいたるところに魔方陣がかかれており、水晶の方はとても澄んでいるキレイな水晶ではあるが、中心にだけ黒く禍々しい小さな球体が浮かんでいる。


彼は2つの物体に近づき、水晶の方に手を添えた。すると水晶の中にあった黒い球体がほんの少しだけ大きくなった。その事を確認すると手を離して黒い箱の方を見る。



「魔王様・・・」



彼はこの場所に封印されている者の名を呟き、そのままほこらをあとにした。


ここはかつての勇者が作った建造物であり、そこには魔王が封印されている祠である。










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