第6話 始まりの異変
やはり・・・
人の言葉ではない。やはりアレは魔の存在だ。そして今までのどの敵よりも強い。一体何故、こんな奴が"人間界"に?
いや、それよりも・・・
(まさかあの一撃が避けられるとは・・・)
アレを避けられた時点で、恐らく奴の強さは私以外のSランクハンターでも手も足もでないであろう。斯く言う私も勝てるとは限らないが、しかしッ!
(こいつは私が殺さねばならない。私が今、ここで殺しておかねばならない。一切の出し惜しみしない!)
私がここで奴を殺しておかねば何が起きるか・・・!
自分の後ろには守るべき者が、人が、国がある!王国の者達にあの時の自分と同じ思いをさせないためにも。守ると決めたものは例えこの身が滅びようと守り抜いてみせる!!
もう、あの時とは違う。今の自分には力がある。魔物を討ち滅ぼすために鍛えたあげた力が!!
「《魔力変換・光/コンバート・ブライトネス》《加えられる光/ライト・コンフュージョン》」
ペェスタは
太陽光でも、
高位の魔法になればその効果は強力になり、それに比例して必要な魔力量も多くなる。持久戦になることも考えてペェスタはこの魔法を使用したのだ。
2つ目の魔法は自身の速度を上げる強化魔法。《光の如く/アーズ・オブ・ライト》ほどの効果は出ないが、代わりに効果時間が長い魔法だ。
続けて様々な自己強化魔法を淡々と唱えていく、《光の影/シャドウ・ライト》《光の鎧/グロー・アーマー》《閃光の反撃/フラッシュ・カウンター》《不屈の輝き/タフネス・グリッター》《魔法強化・光/ライト・マジック・ブースト》。
「・・・」
そこまで強化魔法を唱えたあとに、改めて自身の目の前にいる
いつの間にか相手の手には剣らしき刃物が握られていた。その剣は見たことのない剣であった。剣にしては刀身が細身で長いのだ。
ペェスタは魔法の詠唱中でも敵から目を離してはいなかった。だがもう一度自身の覚悟が鈍らないように、敵を改めて視覚した。こちらが目を離さなかったにも
(相手がどんな武器を持っていようが、関係ない。全力でこいつ殺す。今考えるのはそれだけだ!)
自分の中で先ほど使った魔法の再詠唱可能時間が経過したことを感じた。
「《アービル・グリ―――》!!!」
先ほどの奇襲時にも使った光属性、最上級自己強化魔法を使用しようとした刹那。
ペェスタは自身の首を剣で切られる瞬間を幻視した。
そのまま意識を刈り取られ、ペェスタ・プラクターは地面に倒れ付してしまった。
「・・・・・」
何だったんだこいつ。いきなり背後に現れて、切りかかってくるとは。
あの攻撃は避けるの結構ギリギリだった。剣を構えて何かぶつぶつ言ってたからとりあえず、
と言うかやはり、言語が違ったな。普通にショックだ。何か喋りかけられたっぽいから適当に答えたが、答えた後に殺気が増した。
俺、何か良くない事でも言ったか?「こんにちは」って挨拶しただけなんだが。そもそも言語が違うから伝わらないと思うが、そこのところどうなっているのだろうか?
後ろのこいつらの様に俺の言葉だけが相手に伝わっているのか?いや、それだとこいつが挨拶しただけでキレたヤバい奴って事になるな。流石に違うか。
疑問は多い。だが、立ち止まってる訳にもいかない。こいつは・・・まぁ無視でいいか。殺してはない気絶させただけだし。大丈夫だろう。
「ヴォォォヴォォォ!!」
色々と考えていると、後ろが騒がしいのに気づいた。
「ヴォ!ヴォ!ヴォォォ!ヴォォ!」
「おい、急にどうした、落ち着け」
「・・・・・・・」
俺が落ち着けと言った瞬間に騒がしかった奴らがピタリと黙った。落ち着けと言ったのは自分だがこうも急に黙られると変な気分になる。
全く・・・
「一体どうした?何か騒ぐような事でもあったか?」
改めて質問をしてみる。
すると、一体のオーク(仮)が前に出て来て―――
「ヴォォオォォォ!ヴォォォォォヴォッヴォォヴォッ!」
指差しなどの軽いジェスチャーをしながら俺には理解出来ない言語で答えてくれました。
とりあえず、訳がわからない俺は指差しされた方向、自分の目的地である国のある方向を振り替えって見てみる。
「・・・・・・・・・・・」
言葉は出なかった。何でそうなったかも理解できなかった。
何が起こっていたかというと。
国の外壁から見えていた城。その城はいつの間にか二つに分断されておりその上部、それが切り飛ばされた様に宙を舞っていたのだ。
このアドルフォン王国、そこそこの歴史を持つこの国に前代未聞の出来事が起こった。
通常ではあり得ない事に、この王国の城が斬られてしまった。何の物音もせず、まるで人の首を
―――ドゴォォォォォォオオオオオン!!!!!
突然の
それは国中に響き渡るほど大きなものだった。
その轟音に人々はパニックになり、民が国中を駆け回った。
ただ城の敷地内の被害は甚大であり、死者こそ出なかったものの、城に使えていた使用人や兵士、たまたま来ていたハンター若干名と、貴族数名が重軽傷を負っていた。
この国で一番の権力を持つ人物、国王はと言うと。今日は奇跡的に私用で城の敷地外に出掛ける、いわゆるお忍びの外出をしており難をのがれていた。
「な、なんじゃ!今の音は!!」
「国王様!城の方からです!!」
国王は轟音に驚いて声を上げ、自身の護衛に問いかける。護衛は城の方から立ち上る城を隠すほど大きい土煙を確認し、王の質問に答えた。
「一体何が・・・」
「わかりません。ただ、城で何か起こった事は確かです。もしかしたら敵襲かもしれません。直ちに私が確認してきますので、国王様は万が一に備えどこかに隠れていてください!」
「分かった。頼むぞ、戦士長」
「はっ!お任せください。」
「お前たち!国王様を安全な所へ」
「「はっ!」」
護衛で来ていた戦士長と呼ばれた男は自分の部下2名に国王を安全な場所に避難するように指示する。
当たり前だが、国王様に何かあってはまずい。
部下に連れられて避難する国王の後ろ姿を見届けたあと、戦士長は城の方向に走り出した。
走りながら自分と逆方向、城から離れていくように人々が逃げてくのを見て最悪の場合を想定しておく。
だが事実は想定を、いや常識を遥かに上回っていた。
「な、なんだ!これは!!」
戦士長は城の入り口まで来て驚きの声を上げた。城にたどり着くまでに、巻き上がっていた土煙はほとんどなくなっていた。その為、城の現状を確認することができた。しかしそれは信じられるものではなかった。
城は上半分がなくなっており、その上半分と思われる大きな石の塊が中庭にめり込んでいる。その周りには塊と同じ材質の石片や城の内部にあったであろう
「おい、そこのお前!何か見たか!!何があった!!」
戦士長は入り口付近で棒立ちをしている一人の兵士を見つける。その兵士は少し前の自分と同じように状況が理解できずに唖然としているようだ。戦士長はその兵士に近寄り、つい怒鳴るように問いただしてしまった。
「せ、戦士長・・・!」
「おい、何があった!一体この国で何が起きた!」
「そ、それが・・・し、城が・・・!」
「城がどうかしたのか!」
「城が・・・城が斬られましたァ!!!」
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