第14話 ハンター試験


「すみません。ハンターになる試験受けたいのですが」


「はい。ハンター希望者ですね。それでしたら、ちょうどこれから試験が始まる所なので第3模擬戦場に向かってください」


「分かりました。えーっとその第3模擬戦場というのはどこに・・・」


「あそこの扉からまっすぐ言って2つ目の十字路を右に行いけば第3模擬戦場です」


「分かりました」



悟は受付で言われた通りに進み第3模擬戦場に向かった。そこには彼と同じようにハンターに成りに来たと思われる人物が、既に数名待機していた。その者達の装備は様々で、しっかりと鎧を纏っている者もいれば、不思議なローブを着て杖を持っている者もいる。それらは悟を含めて男性8名、女性2名の計10名の人物がハンターというものに成りに来ていた。

悟は他9名と同じように待機していた。そんな彼を他9名は物珍しく観察している。

その理由は装備だろう。身につけている防具は特になく、薄着1枚を着ているだけだ。その腰には細い長剣という珍しい武器がぶら下がっているが、とてもハンターに成りに来たと思われる装備ではない。



「おい、お前」



1人が、ぼーっとしてる悟に近づき声を掛けた。チェストプレートとガントレットを装備している青年だ。その腰には普通の剣が差してある。



「今日ここはハンター試験を行う場所だぞ。場所を間違えてるんじゃないのか?」


「ん?いや、間違えてないな。俺はここにハンター試験を受けにきた」


「なに?その格好でか?」



青年は少し驚いたが、馬鹿にするように次の言葉をいった。



「何か問題が?」



今度は悟が少し驚いた。自分は何かおかしい格好でもしているのだろうか、もしかしたら指定された格好があるのだろうか、武器や装備に何か制限でもあったのだろうか。格好を指摘され様々な不安が生まれる。しかし、受付には何も言われなかったという事実もある。これから試験を受けるという自分の格好に何か問題があったら受付の者が指摘してもおかしくない。



「問題も何もこれからハンターに成るための適正試験が行われるんだぜ?防具も無しに戦闘が行えるか?万が一が有っても自己責任なんだぞ。それかお前、あれか?防具無しで試験受けたら試験官が手加減してくれるとでも思ったのか?それは甘ぇよ。その人物が本当に魔物と戦えるかを見なくちゃならねぇのに手加減してくれる訳ねぇだろ。組合も下手に素人をハンターさせて無意味な死人を出したくねぇんだわ」


「なるほど」



色々話した青年に対して悟は一言で返した。



(なるほど、試験は戦闘試験だったのか。相手にするのは試験官。そしてその際に負った怪我等に対して組合は責任を追わない。と)



悟からしたら知らない事を知れただけで、青年が伝えたかった事に対してはどうでもよかった。

だが、一言でどうでもよさそうに返された青年はそれが気に食わなかったようだ。



「なるほど、だと?お前よほど腕に自信があるのか知らねぇが調子に乗ってるんじゃ―――」



この第3模擬戦場に入ってくる人物を見て青年は言葉を止めた。青年は軽く舌打ちをし、悟から離れていった。



「これよりハンター適正試験を行う!」



入ってきた人物は2名。1人は30代位の男で、鎧を着て剣を持っている。髪はが短髪で白色なのが特徴的だ。もう1人はメガネを掛けている青年で、剣や鎧などは装備しておらず紙とペンだけを持っていた。

2名は模擬戦場の中央にたちハンター適正試験開始を宣言した。

悟を除く9名は試験を開始宣言した2名の前に集まる。悟もそれを見てから遅れて加わった。



「私は今回の試験官を勤めるテイテス・ファトラだ。」



剣を持っている方の男が自己紹介をする。その際に悟の方をチラリと見た。



「試験内容は私との模擬戦だ。特にルールは存在しない。総合的な戦闘力を見るため使える物は全て使ってかまわない。模擬戦は1人1人順番に行う。終了の合図は彼、イデム・クレークが行う。模擬戦の際に怪我を負うこともあるだろう。しかし、申し訳ないがその際はこちらでは責任はとらない。辞退する者がいるなら先に行ってくれ。以上の事で何か質問や意見があるなら挙手を頼む」



特に質問もなければ辞退する者も現れなかった。ここに居る者は参加前から試験についての情報を知り、それらの事については了承済みだった為、今さら質問がある者も辞退する者もいなかった。ただし悟は今日はじめて試験の内容を知ったがもちろん辞退する気はさらさらない。



「特にいないようだな。では早速始める特にしよう。最初はそこの君だ 」


「はい!」



テイテスが最初に指名したのは先ほど悟に言い寄ってきた青年だ。



「これより模擬戦を行うから君達は下がっていてくれ」



その言葉で指名された青年以外の9名は十分に距離をとった。



「では始めよう。いつでもいいぞ」



テイテスは残りの9名が距離を取った事を確認すると、試験を開始した。テイテスと青年が剣を構える。2名の間は5mほど、両者とも様子を伺っている。



「デヤァッ!!」



最初は動いたのは青年の方だった。

青年は剣でテイテスを切り付けた。しかし、ベテランの剣士であるテイテスはそれを楽々かわす。それを予期していたのか青年は剣を持っていない方の腕をテイテスに向けた。



「ファイヤーボール!」


「ッッ!?」



青年のガントレットから半径15cmほどの火の球が放たれる。テイテスはあわてて攻撃を中断し回避行動に移す。避けられた火の球はそのまま壁に衝突し、小さな爆発を起こした。



「攻撃魔法が使えるとは、魔法戦士か」


「ええ、いつかペェスタさんのような凄腕ハンターになりますよ、俺は」



戦士が補助魔法を使えるというのは多々ある。しかし、攻撃魔法になると使える物は極端に減る。至近距離なら魔法を使うより、攻撃した方が早く、離れて遠くから狙うなら最初から魔法オンリーの魔法使いの方が強い。戦士と攻撃魔法は両立させるには相性が悪いと、今まで思われてきた。そんな中、ペェスタ・プラクターという人物が戦士と攻撃魔法を両立させ、タイミングさえ合えばとても協力な攻撃手段になると証明させた。そのためペェスタに憧れ、魔法戦士が最近急増しているのだ。



「はい。もう結構です」



両者の戦いを見ていたメガネの男が終了を告げた。両者が戦っている最中何やらメモを取っ手いたようだ。そして早めの終了の合図は青年が十分にハンターへの適正があるということだ。


終了を告げられ青年は剣をしまい、教官のテイテスかれ離れて他のメンバーが待っている方へ歩いていった。



「よし、では次は君だ」



テイテスが次の人物を指名する。こうして、次々と試験が行われていった。





「はい、もう結構です」



しばらくして9番目の人物の試験が終わった。この試験は次で最後の人物となる。その最後の人物は悟であった。



「では最後は君だ」



最後人物、悟が指名される。悟は特に返事をするなく 中央へ歩いていった。

悟は指名が最後というのもあったが少し退屈していたのだ。他のメンバー使用する魔法は色々な種類があって興味が引かれたが、戦士、剣術については達人である悟からしたら呆れる程のものだった。



「念のため確認するが、その格好でいいのか?」



テイテスが最初に気になった悟の格好について疑問を投げ掛けた。やはり、防具も何も無い戦士というのはおかしいものなのだ。



「ええ、この格好で問題ありません」


「そうか。わかった」



テイテスは返事を返すと剣を構えた。対して悟は刀を構える事はせず棒立ちの状態のままだ。

テイテスが不思議に思っていると悟が話す。



「どこからでもどうぞ」


「本気か?」


「ええ、本気です」



テイテスを挑発し待ちの姿勢を崩さない。

それを見ている他のメンバーは呆れた様子で悟の事を馬鹿にしていた。



「自分で行った結果だ。悪く思うなよっ!」



そして、様子を伺っていまテイテスは遂に攻撃を仕掛けた。ベテラン戦士テイテスの強さはハンターランクにするとAランクだ。この世界では強い方なのだ。しかし、今回の相手は悪い。

異世界の剣の達人だ。だが、その情報を知る術はテイテスにはない。


結果、テイテスの攻撃は空を切った。悟は最小限の動きでテイテスの攻撃かわしていた。

かわされた事に驚くテイテスだが、続けて連続の攻撃を仕掛けた。



「ッ!?」



悟は全ての攻撃を最小限の動きで回避しつづける。それでもテイテスは攻撃を止めず、自身が使える補助魔法を使用し攻撃を続けた。

しかし、補助魔法で身体能力を強化しても結果は変わらず。悟は攻撃を回避し続けてけた。


悟はただ自負の力を見せつけたいではない。面倒だったのだ、激しく動くのが。だが、攻撃を食らうなんて選択肢はない。結果相手の攻撃を避け続け圧倒する結果になる。


そして、連撃の僅かな隙を付き、悟は刀を抜刀。テイテスが相手が動いたと理解した時には既に悟の刀はテイテスの首もとに当てられていた。



「ッ!・・・早いな」


「どうも」



一部始終を見ていて他のメンバーと記録係であるメガネ男性はポカンと口を開けて何が起こったか分からない様子だった。



「も、もう結構です」



そんな中、記録係の男性が正気を取り戻し、試験の終わりを宣言する。それを聞いた悟は刀を鞘に納めた。



こうしてハンター試験は終了した。結果は全員合格。ハンターに登録するため名前などの情報を受付にて行うためハンター組合の受付に戻る最中に悟は声をかけられた。



「君、少しいいか?」


「何か?」



声を掛けたのはテイテスだった。悟は立ち止まりテイテス方に向き直る。テイテスは先ほどの試験よりも真剣な眼差しで悟を見ていた。



「なに、ハンター登録の事で話したい事があってな。別室にお願いできるか?」



「・・・わかった」



そうして悟は別室に案内された。そこにはソファーが2つあり、対面するソファーの真ん中にはテーブルがある。悟は座るように言われるとそのソファーに座った。座ってすぐに使用人と思わしき女性がカップに入った飲み物を用意してくれた。



「で、何の話なんだ?」



悟は用意された飲み物には口を付けず、話を催促する。



「ああ、ハンターのランク制についてはしているだろう。ハンターは皆最初は一番下ランク、Fランクからスタートする決まりだ。どんな実力を持っていても最初は皆同じにする事で少しでも不公平さを減らしている。しかし、先日ある事件が起きた。この国の城が何者かに破壊されたのだ。」



テイテスの発言に悟はドキリとする。それもそのはず、おそらくテイテスが言っている人物。この件の犯人は自分だからだ。悟は感情を表に出さないように話の続きを聞いた。



「その後、城が破壊されたのは魔物の仕業だとわかった。その情報を持ってきたのはペェスタ・プラクターというSランクのハンターだ。そのSランクハンターが今回の事件の首謀者と思わしき魔物に遭遇し敗北したと言ったのだ。」



この話を聞きながら悟はもしかしてあの男?と予想をつける。その男は悟に急に襲いかかった謎の人物。意識を刈り取りそのまま放置した人物の事だ。



「我々ハンター組合はこの事を重く見ている。その魔物の捜索と討伐を計画しているが、何せ情報が足りない。ハンター全員に情報の提供を求めているが、全く集まらないのだ。そんな時、これほどの事を起こした魔物が下級の魔物な訳がない事に気付いた我々は上位のハンターに魔物討伐依頼の際にこの国を攻撃した魔物の情報を集めるように伝えた。

だが、上位のハンターも数が知れてる。そこで今、実力があるのに下のランクにいる人物を上位ランクに上げているのだ。そして君も実力がある。そのため、いきなりだが上位ランクからはじめないか?」



その言葉に悟は少し考えた。上位ランクから始める事のメリットとデメリット。だが、上位ランクから始める事のデメリットとはほとんどなく、ただ単に全体的に受けれる依頼が増えるというメリットだけであった。



「ああ、別にいいぞ」



知らないだけで、何らかのデメリットはあるかもしれないが悟はそこはあまり考えずに返事をした。



「そうか!では早速ハンター登録をしよう。時間を取らせてしまった礼だ。こちらで登録しておくので名前だけ教えてくれ」


「そうか、ありがたくお願いしよう。名前はさい―――」



そこまで言って止めた。本当に自分の名前で登録してもいいのか?彼はそう思った。彼は1度もこの世界来て名乗っていない。そして別に自身の身分を証明する物はないのだ。別に偽名を使っても問題ない事と、念のために悟はここは偽名を使った。



「名前はカケル・サカシタだ」



使ったのは師匠の名。何故この名前にしたのか。それは彼のみが知る事だ。

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