魔人に就職しました。
ミネラル・ウィンター
第0話 はじまり
あれは、最上 悟が中学3年・・・中学最後の
その日は終業式だった為、午前中に
「まぁ・・・お主でいいか」
その声は老人の様な声でどこか
しかしそこには誰もおらず、辺りを
少し考えたが俺は
「こっちじゃ」
歩を進めた
しかし次の瞬間、背後から身の毛のよだつ様な
目を覚ますと俺は建物の中にいた。最初は自分の家だと思ってしまったが意識が覚醒し頭が働き始めた後に改めて見渡すとそこは自分の家ではない事が分かった。だが
俺は
―――ガラッ
俺が玄関に向かうと、ちょうど玄関が開き老人が現れた。その老人は少し長身で髪全部が
「おお、起きてたか」
玄関から入ってきた老人は一言だけ発するとそのまま家に入り、
俺もこの謎の状況の説明が聞けると思って
「お主には"
「は?」とつい口から
「ワシには子が居なくてな、居たら自分の子に継いで貰う方がよかったんじゃが・・・継ぐものが居ない事も、子が居ない事にも気付いたのが昨日だったんでの、もう手遅れじゃった。だからお主を
「・・・・・」
聞いている俺の心なかでは「なに言ってんだこいつ」と言うセリフで
聞き終わって
つまりこの老人は、何かしら後を継がせたい事があるが自分に子供は居ない為、継がせる事は出来ない。だから誘拐して、そいつに継いでもらおう。という事だろう。
整理して理解したが、やはり「なに言ってんだこいつ」というセリフが頭の中からなくなることはなかった。
「とりあえず、帰りますね」
そう言って俺は普通に外に出た。場所はかなり
「やはり、あのじじぃはボケを拗らせてしまったのだろう。
歳を取るという事に恐怖を覚えながら、俺は山を降りていた。かなり降りてきたと思ったがまだまだ山の中だ。あとどれだけあるのか、と考えると疲れている体がしんどくなる。
「はぁ、少ししんどいな。・・・あのクソじじいめ」
特に鍛えたりしてない男子中学生であった俺にこの険しい山下りは
それでも歩かなければ帰ることはできない。俺は少しだけ休憩し、また山を下り始めた。しばらく山道を下って歩いているとある動物に出くわした。
―――フゴッ
出会ったのは"イノシシ"だった。黒色の毛皮で覆われており、口からは牙がチラリと見える事を考えると豚とは別の
「へえーイノシシがいるのか。初めて見た」
俺はその辺に
別にイノシシが怖くない訳ではない。確かにイノシシに襲われたら恐ろしい、
つまり何が言いたいのかと言うと。
襲われたら怖い。襲われなければ怖くない。
簡単に言うとこういう事だ。別に自分に害が無いのなら恐怖する意味も必要もない。昔から、自分のこういう所とか他の人とはズレてる事を理解していた。でも、嫌いではなかった。むしろ自分の好き所の1つなのだろう。
俺はイノシシに構うことなく、横を通り過ぎようとした。
―――ザシュッ
次の瞬間、なぜかイノシシの頭が
「うおぁ!」
切断された頭部が少しだけ宙を舞い、血液を撒き散らす。突然のグロテスクな出来事に当然、俺は驚いた。
何がどうなったらイノシシの頭が突然、吹っ飛ぶなんて
「はっはっはっ。今夜はイノシシじゃな」
さっきの老人だ。しかし、先ほどと違うのは"
俺はイノシシを切った所もその刀に血が付着しているところも見てないが、なぜかこの刀でこの男がイノシシを切ったと理解した。そしてイノシシを切ったと思われるその
「さて、戻るぞ」
老人は俺が見惚れていた刀を
血のように真っ赤で黒い雲模様が入った鞘。そしてそれにしっかりと収まるキレイな刀身。
今思えば、鞘と刀は二つで一つ。俺の中でそう決定付けたのはこの時だったかもしれない。
俺が刀に見惚れていると老人は片手で切ったイノシシの
そして、もう片方の手は俺の後ろ
「え、あ!おいっ!!」
俺はそれに対して
結局その日俺は家に帰れなかった。
晩飯のイノシシ鍋は意外と美味しかった。
あれから約10年が経った。
最初の内は家に帰ろうとしていたが、初日のように毎度毎度連れ戻されるため俺は帰宅を諦めた。
両親についても最初は心配してるだろうな程度には思っていた。だが、今ではほとんど気にしてない。俺が普通とはズレてるという理由もあるだろうが、慣れとは恐ろしいものだ。
約10年間、俺はじじいの言う"殺刀気真流"を継ぐため頑張らさせられた。
簡単に言うと殺刀気真流とは"
何でもじじいが考案したものらしい。
人は元より何かしら気配を感じる事が出来る。人の視線だったり、人そのものの気配だったり、
殺気で切り、殺気で
それが"殺刀気真流"。
そして現在、俺はそんなバカげた剣術をマスターしつつある。
思い返せばこの10年間に色々とあった。
最初は
そして今、俺は全ての元凶であるじじいと対面している。お互いに刀を持ち、辺りには殺気が立ち込めている。一般人の第三者がこの光景を見たら、あまりの威圧感に声も上げることもできないだろう。
大気が歪むようなそんな威圧感が当たり広がる。
「では、見事ワシを倒せたら"
「ああ、あの
これより
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