━☆ 》31話~歌の効果を実感したようです

 「ちょっと待てって」



 そう言うとミチルは、神官に走って行った。そして、すぐに戻って来た。

 装備出来たのかな? どこも変わった感じしないけど。



 「これ凄い! ランク1で魔法防御+15ある! しかもMPが+5つき! いやぁ、ランクアップして腕力増えてよかったぁ」


 「うん? どういう事? って、装備変わってないね」


 「……シシリー出番!」


 「装備の見た目は、今はエレメントガードのコーデでしょう。シールドにも腕力が1必要って事よ。ランク4のランクアップボーナスで腕力が2増えたのよ。ランクが上がってなければ、装備できなかって事よ」


 「そっか。腕力ね! 腕力が必要なのって武器だけじゃなかったのね」


 「主に手に装備するものにあるわ。両手装備でないと、盾は装備出来ないわ。剣士以外でそうしたい場合は、サブで両手装備を付けるしかないわね。因みに今のところ神官にはないわよ」



 そうでしょうね。最初から腕力1だし……。腕力もないと結局装備できないもんね。腕力とかもボーナスでつくのね。



 「さて、準備も整ったし、行くか!」



 ミチルに続き、私も神殿を出る。

 そして、さっき通った道を進む。



 「そう言えばさ。このトータスシールドのランク上げるのに、シールドのコアが必要だって言われたんだけど、武器のコアで代用できる?」


 「レアの場合は、出来ないわよ。頑張って貯めるのね。さっきのモンスターもそのコア落とすわよ。って、そのコアの方が確率高いはずなんだけどね」


 「やっぱり貯めないとだめなのか! ランク上げるのに20個必要なんだけど!」


 「大変なんだね」


 「……いいよなぁ。シシリーに上げてもらえるやつわ!」



 やっぱりシシリーが上げていると思っているんだ。まあ、それしか方法が思いつかないもんね。



 「戦闘で楽してるんだからいいじゃない」


 「楽してるのは、俺じゃなくてなつめ!」


 「え! だって私、サポート役のジョブなんでしょう?」


 「そうだけどさぁ。まあ歌はかなり助かってる。あれがないとここまで来てないからな」


 「私も歌には救われているわ」



 SP回復が出来るから大助かりよ!


 お話ししながら歩いていると、森深くなってきた。

 草も胸ぐらいあるのもある。本当に草をかき分けて前に進む。



 「おっと。モンスターか!」


 「なつめ! 歌よ!」


 「うん!」



 私は、物理攻撃の歌、物理防御の歌そして魔法防御の歌を歌った。



 「攻撃力UP!」


 「ガードチェンジ!」



 これで戦闘準備完了!



 「よっしゃ! 行くぜ!」



 目の前に現れたのは、木のおばけ! 3体。

 木なのに動いてるし、目も口もある! なんか気味が悪い。

 ミチルは、その一体に斬りかかった。ってあっけなく倒れたんだけど!?

 でも残り二体の反撃。二回攻撃を受けたけど、5%ぐらいしか減ってない!



 「おぉ! 魔法攻撃があまり効かない! これなら攻撃を気にせずに……うわぁ!!」



 余裕で斬りに向かったミチルは、マヌケにも後ろにいたモンスターに捕らえられた!

 枝を手の様に動かしていたけど、不意にシュルっと伸ばし、ミチルに巻き付けた! おかげでミチルは、枝でグルグルです。

 あの枝、柔らかいんだね!



 「シシリー! 何とかしてくれ!」


 「情けないわね! 余裕ぶって敵に背を向けるからでしょう? なつめ! 眠りの歌よ!」


 「うん!」



 ミチルは、地味に魔法攻撃を二体から受け、HPが70%ぐらいになっている。今まで一番攻撃が早いモンスターかも。

 私は、眠りの歌を歌った。

 モンスターは、するすると枝の束縛を緩めた。何とかミチルは這い出て来る。



 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 「サンキュ! あぁ、酷い目にあった……」



 HP回復の歌も歌っておく。

 ミチルは、這い出るとモンスター二体共直ぐに倒した。



 「うん。今回も楽しかったわ!」


 「だから! 俺で遊ぶなって! 今回は、なつめも危なかっただろう!」


 「あら問題ないわよ。なつめが魔法攻撃を受けてもダメージゼロだから。グルグルにされても歌は歌えるし」


 「え? そうなの?」



 私が驚いて言うと、シシリーがそうなのと頷いた。



 「あの魔法攻撃は、全体攻撃だったからね」


 「そうだったんだ! なんか周りでシュって言う音が聞こえると思った!」


 「マジか! って、その天然ぶり、恐れ入った……」


 「何よそれ! 攻撃されていると思わなかったから仕方ないでしょう? 目に見えないだもん!」


 「まぁ、風魔法だからね。枝を動かしていたのは、あれで魔法を繰り出していたのよ」


 「なるほど」



 そう言う事だったんだ。でもよかった。これで私もダメージ受けていたらパニックになっていたかも。



 「それにしても思ったより弱いな」


 「ミチルは、サブにファイター攻撃型を選んでるから攻撃力が10増えてるでしょう? そして、剣もランク4にしてある。攻撃力UPして歌の効力をつけてるから、一撃でギリギリ倒しているのよ」


 「そっか。さっきのシールドの装備を付けてないと魔法攻撃もろ受けていたし、全体攻撃みたいだから本当なら大変相手かもな」


 「下手したすぐに全滅ね。あの枝の様な手で攻撃しているから、次々と攻撃してくるのよ。だから枝を切り落とすといいわ。普通にダメも入るし、攻撃も減る。絶対に回復系がいないと無理な敵よ」


 「うん。バカにして悪かった!」


 「え? 私バカにされてたの?」


 「あ、いや。えーと、凄く頼りにしてます!」


 「本当にお調子者よね」


 「うるせー」



 また言い合いが始まったわ。

 シシリーの説明で、歌がなければ私達やられちゃうって事はわかったわ!

 詩人を選んでよかった。



 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 「うん?」


 「もう、言い合いやめて進もうよ」


 「あ、はいはい」



 ミチルはそう言うと歩き始める。そうすると、シシリーがスウッと前に出て、道案内をまた始めた。

 そしてまたモンスターと遭遇。

 今度は、先に眠らせて攻撃する。

 こうして暫く進んだ。



 「ここよ」



 シシリーは、ひときわ太い木の前で言った。背も高い。

 もしかしてこの木の枝が、魔白の枝?



 「よく枝を見て」


 「あ! 白い部分がある!」



 枝の先っぽ。指ぐらい細い枝が、真っ白!

 でもあれ、どうやって取るの?



 「うへぇ。どうすんだよ……。剣すら届かないだろう?」


 「木に衝撃を与えると落ちて来るのよ。ミチルお願いね! なつめ、落ちたら拾うのよ! 小さいから探すの大変だと思うけどね」


 「げ! 俺が衝撃与える方かよ!」


 「あ、衝撃と言っても攻撃すればいいから」


 「まあ、それならいいか」



 なんと! 剣で斬るだけで落ちて来るって事? 凄い!

 ミチルは、剣を抜き木を剣で叩いた。

 文字通り叩いた感じ。木は、ブルンと震えた。



 「ちょ! めちゃ硬くないか? 手にジーンときた。剣でジーンときたのは、この世界で初めてだ」



 なんか、感想言っているけど、私はそんば場合じゃない!

 見えただけで、10個ほど落ちた!

 ここら辺のハズなんだけどなぁ。

 何せ草が深い。って全然見つからないんだけど!



 「ねえ、シシリー! ないんだけど!」


 「あるわよ。この仕事クエストは、探す担当の方が大変よ」


 「え~!! これ20本必要なんだけど!!」


 「マジかよ!」


 「たぶん、20本以上は落ちていると思うわよ。頑張って!」


 「俺も探すわ」


 「ありがとう!」



 ミチルと私は、四つん這いになって枝を探す。

 緑の中に、指程の大きさの白を探し出すのって結構大変!


 あ! あった! やっと一個目!



 「一つ言うと、枝を落としたのがミチルだから拾うのを手伝ってもらうと、経験値半分も入らないからね」



 シシリーが隣に来てボソッと呟いた。

 そんな事言われても、これ一人だと無理です!

 一時間程探して、私が12本ミチルが16本見つけた。ミチルの方が多いんですけど!



 「じゃ一旦、王都に戻りましょうか」


 「いいけどさ、俺の拠点探しのヒントはどうなった?」


 「それは、一旦戻ってから」


 「忘れてなければいいんだ」



 私達は、来た道のりを戻って王都に帰った。途中で私は、めでたくレベル20になりました!

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