━☆ 》18話~守備は万全です

 私は走って村に向かっていた。だって、敵に遭遇するのが怖いもの!



 「ちょっと、ストープ!」


 「え? 何?」



 シシリーに言われ、私は立ち止まった。



 「まずは、ここら辺で、メインをランクアップさせておきましょう」


 「え? ここで?」


 「ここまでくれば、ミチルから見えないし。まあ、村に入ってからでもいいけど。他の人には、わからないから」



 振り返って見るもミチルの姿は見えない。

 そっか。私は、神官にランクを上げてもらうわけじゃないから本当に村に戻らなくてもいいのね。

 シシリーの言う通り、ランクアップしときますか。



 「ランクアップ!」



 《メインジョブ神官がランク4になりました》


 《サブジョブを一つ獲得出来ます》



 「で、サブってどうするの?」


 「そうね。ランク戦でるのなら製作者をサブにしても仕方ないわね」


 「なるほど。ところでランク戦ってどんな感じ?」


 「うーん。専用マップに移動して感じね。まだ、公開できないのよ。まあ、サブの方は、ちゃんと考慮して選んであげるから任せて頂戴!」


 「うん。宜しく」


 「では、村に向かいましょう。サブ取得して、スキル上げたらミチルを呼びましょう」



 私は頷いて、また走り出した。

 村に着くと、そのまま神殿に入り列に並んだ。



 「サブジョブを選びたいのですが」


 「なつめさんが選べるジョブはこちらになります」



 順番が来て、サブ選びを始める。



 剣士【物理攻撃力+3/けん武器攻撃力UP】

 武闘家【物理クリティカル+5/反撃】

 プーリスト【MP+20/つえヒール】

 魔法使い(氷系)【MP回復+1/つえコールド】

 巫女【つえヒール/つえ除去】

 狩人【弓攻撃/魔法防御+3】

 パン職人【SP+30/SP回復+3】

 製作者【転写/製作】

 チェンジマスター(ガード)【ガードチェンジ/HP+20】



 あ、製作者って本当にある。

 うん? チェンジマスター? これってどんなジョブ? 今回は、この二つが増えたみたいね。



 「チェンジマスターをサブにして」


 「え? わかったわ!」



 まあHP20増えるし、スキルだと思うけどガードとかついてるから防御を上げるのかも。



 「あの、チェンジマスターをお願いします」


 「ではなつめさんに、チェンジマスター(ガード)の素質を与えます。ステム様のご加護がありますように」



 サブを取得した私は、村の外に出た。

 そして、人気のないところに移る。



 「ねえ、モンスター出てこないよね?」


 「大丈夫よ。それよりスキルをあげるわよ!」


 「うん……」


 「ミチルが傍にいるとやりづらいでしょう?」


 「そうね。このガードチェンジを上げればいいのね?」



 私が聞くと、シシリーがそうだと頷いた。



 「ガードチェンジをランクアップ!」



 《ガードチェンジがランク2になりました》



 「研ぎ澄まされた技を使う者の癒しの時間。みなぎる力の源よ。蘇れ♪」



 私は、すかさずSP回復の歌を歌った。体が光に包まれる。



 「それ、ランク4までだから。そして、終わったら神官の服も一つ上げてランク4にするわよ」


 「うん。研ぎ澄まされた技を使う者の癒しの時間。漲る力の源よ。蘇れ♪」



 こうして、ガードチェンジをMAXまで上げた。



 ガードチェンジ【ランクMAX/最大MPの20%を消費して、消費したMPの3倍の値を物理防御と魔法防御に加算する】



 見て驚いた。MPを消費して防御を強化できるんだ!

 さすがMAX。消費したMPの3倍だって! 今、最大MPが35だからその20%は7で、その3倍だから21ずつ防御が増えるの? すごくない?



 「何これ? すごいね。すごいんだよね?」


 「凄いわよ! このジョブをサブにする事でやっと、一緒に戦闘出来るって感じかしらね。って、MAXだから逆に普通の剣士より防御あるわよ。しかも戦闘終了まで効果があるからね!」


 「これで、即死はなくなったのね!」


 「そうね。HPも増えたし。あ、ほら服もランクアップして。物理防御が増えるから」


 「わかったわ! 神官の服をランクアップ!」



 私は光に包まれた。



 「研ぎ澄まされた技を使う者の癒しの時間。漲る力の源よ。蘇れ♪ ステータスオープン」



 【名前:なつめ | レベル:15| 経験値:23,021| メインジョブ:神官ランク4】

 【HP:50/50 | MP:35/35| SP:13/50】


 【メインジョブ:神官 | ランク:4 | サブジョブ:魔法使い(火系)/詩人/チェンジマスター(ガード)】


 神官【MP+10/SP+20/HP回復+2/MP回復+1/SP回復+3/つえクリーンアップ/つえ祈り/耐性付与】


 サブ補正 魔法使い(火系)【魔法攻撃力+1/つえファイヤー】

      詩人【歌/マッピング】

      チェンジマスター(ガード)【ガードチェンジ/HP+20】


 【HP:30+20|MP:15+20|SP:30+20|物攻:1+1|魔攻:0+1|物防:0+5|魔防:0|物クリ:0|魔クリ:0|腕力:1】

 回復【HP:2+1|MP:1+1|SP:3+2】



 私は、ステータスを見てみた。

 うん。強くなっているよね? 守備は……。



 「さて、ミ……」


 「おい! そこで何やってんだ?」


 「きゃ!」



 声を掛けて来たのは、ミチルだった!

 何でここにいるの?



 「ミチルこそ、何でここにいるのよ」



 シシリーが聞いた。

 ここは、パッと見て目につく場所じゃなく木の陰。



 「うん? ランク4になったようなのに声がかからないから村に来た」


 「………」



 村に来たって。ここ、村の外なんですけど……。



 「神官を使ってないとやっぱりばれてるみたいね。確認したのかもね」


 「確認?」


 「私達だけを村に行かせたのはその為って事よ」



 あ、経験値稼ぎをしたかった訳じゃなくて、私達がどうするか確かめたかったって事?



 「おーい。何、こそこそしてんだ? どうせジョブも取得したんだろう?」



 《後一時間でこの世界を離脱します》



 「あ……」


 「どうした?」


 「お時間が来たみたい。まずは、登録をすませちゃいましょう?」


 「わかった。行こうぜ」



 シシリーの提案にミチルは頷いた。

 問い詰められなくて、私はホッと胸を撫で下ろす。

 シシリーが寝袋に入り、歩き出したミチルに私は着いて行く。


 ミチルって勘がいいのね。

 って、別に本当の事話してもいいんじゃない?

 シシリーじゃなくて、ランクアップスキルがガチャで手に入れたって言っても大丈夫なんじゃない?



 「ねえ。思ったんだけどスキルの事、話してもいいんじゃないかな? ミチルなら誰かに話さないでしょう? そうしたら、探られるって事もなくなるし」


 「確かに話さないでしょうね。でも、自分にも使えって言って来る可能性はあるわ。あなただけならそのスキルの事を誤魔化せるけど、ミチルまでがんがんランクが上がったら周りが気づくでしょう」



 確かに。ミチルは、他の人とも仲良くしてるみたいだし。私と一緒に行動するようになっていきなり強くなったら確かに怪しい。

 でも、他人は出来ないって事にすればよくない?



 「自分専用だって言えばよくない?」


 「私に使えた時点で反論されるわよ。試しに使ってみろって言われたらばれちゃうでしょう? まあミチルにバレても大丈夫だけど、他の人にバレたら追いかけ回されるわよ。お金もコアも使わずランクを上げられるのだから。神官のあなただから目立ってないだけ! ミチルのような剣士が、これを持っていたら飛びぬけて凄い事になっているでしょうね」



 言われればそうだ。

 ミチルは鎧だって教えてくれたけど、それは、私のユニークを知りたかったから。ミチルの場合、教えても大した事ないもんね。


 あれ? でも他の人とチームを組んだら私のランクがわかるなら、がんがん上げられなくない?



 「うーん。あのさ……」


 「お前達、内緒話好きだよなぁ……」



 突然クルッとこっちを向いてミチルが言った。



 「もう村だからシシリー大人しくしておけよ」


 「はいはい」



 取りあえず今は、ランク戦の登録をしちゃいますか。

 村の奥に兵士が立っていた。その人に、ミチルは話しかける。



 「俺達、ランク戦に参加したいんだけど」


 「チームで挑まれるという事で宜しいですか?」


 「あぁ」


 「宜しいですか?」


 「お前にも聞いてるんだよ」


 「え? あ、はい。いいです」


 「ランク戦に登録しますと、ランク戦終了までメインランクを上げられません。今、登録しても大丈夫ですか?」


 「「はい」」


 「では、ミチルさんとなつめさんチームは、ランク8で登録をしました。開催される明日までお待ちください」



 あっさりと登録が終了したわね。



 「あのさ。ちょっとだけ確認したい事があるんだよな。外いいか?」


 「うん……」



 外って村の外だよね?

 もしかしてシシリーのヒミツに気が付いたとか?

 チラッとシシリーが入っている寝袋を見た。シシリーは、大丈夫と頷いた。

 シシリーがいざとなれば、何とかしてくれるみたい。

 私達は、村を出てさっきの場所へ向かった。

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