━☆ 》17話~コアとランクの関係

 村に着いて、チームは解散になった。



 「じゃ、私はこれで。また一緒に行きましょうね」


 「おう。また声掛けるから宜しくな」



 こはるさんは、ルンルンで手を振り去って行った。



 「で、お前はどうするんだ?」


 「どうするって?」


 「いや、今回お試しで遺跡行っただろう? ていうか、毎回こういうのしか受けられないのなら暫くは、普通に狩るっていうのも手だけどな。ただし、お金は入らないからな」


 「え? お金はどうやって手に入れるの?」


 「だからそれが仕事クエストでだろう? って、これシシリーが説明するもんだろう」


 「はいはい。お金は仕事で欲しがるアイテムを神官に売る事によっても手に入る。基本装備品は売ってないから買う事はないわ」


 「えっと。お金ってあまり使わないの?」



 今までやった事があるゲームって、一生懸命お金を貯めて装備品を買っていたんだけど。ここって違うんだ。



 「うーん。そうね。ランクを上げるのがメインかしら。サブジョブで魔法やスキルを手に入れて、それを上げる。装備品も新しく買え替えるんじゃなくて、お金とコアを使ってランクを上げて行く。そういうイメージね。だからサブ選びは大切よ」


 「え? じゃ、さっき手にいれたコアって、装備品と種類が合わなかったら使えなくない?」


 「こほん。その辺は後で説明してあげるわ」


 「うん? 俺に気にせず説明していいぜ」


 「そうね。……ねえ、ミチル。あなたは、ランク戦って出ないのかしら?」


 「参加するつもりだけど」


 「登録は?」


 「いや、まだ。ランク4で登録するつもりだったから。まさか、参加させるつもりか? 無理じゃねぇ?」



 ランク戦って何?

 ってシシリー、また勝手に話を進めようとしてない?



 「ふふふ。ねえ、組まない?」


 「ちょっと待ってシシリー! 私、何もわからないし勝手に話を進めないでよ!」


 「なるほど。そう言う手もあるか」


 「だから! わからない私に説明もなしに進めないでってば!」


 「もう。そんなに怒らないの。ランク戦というのは、その名の通りメインのランクが同じ同士が争うイベントよ」



 あ、なるほど。だからランク戦。

 って、それじゃミチルが言ったように私には無理でしょう!?



 「シシリー。私、ヨワヨワなんだけど……」


 「大丈夫よ。ミチルと組めば。ランク戦は、三人まで組むことが出来るの。その場合、その合計がランクの値になるわ。なつめも4にして、ランク8に挑めばいいのよ」


 「いいのよって、そんな簡単に……」


 「悪くない提案だと俺は思うぜ。ランク戦に登録した時点で、ランク戦が終わるまでランクは上げられなくなる。けど、スキルや魔法はあげられる。だからランクを低いままそっちを上げている奴も多い」



 なるほど。ランクをわざと上げずに魔法やスキルを上げるのね。装備はメインランクまでしか上げられないけど、全部の装備を上げれば強くなるよね?

 まあバシップ以外のスキルなどは、戦闘しないと上げられないけど。



 「今回、こはるはランク3で登録したらしいからな。そこら辺が多いだろうな」


 「そうね。チームを組まないのならレベルだけを上げて、ってなるわね」


 「あの……二人で合わせてランク8にしても三人までいいのなら、三人合わせてランク8という人達もいるよね? それに比べたら私達弱くない? ミチル一人の方が強そうだけど……」


 「わかってねぇな。回復出来る強みがあるだろう?」


 「それって強みなの?」


 「今の段階だとかなりの強みよ。普通は、回復より攻撃系のサブをとるでしょう? それにSPやMPを回復出来るのは大きわよ」


 シシリーの言葉に、ミチルが頷く。

 そういうものなのか。で、ランク戦って具体的にどんな事をするんだろう?


 「ねえ、ランク戦ってどんな事をするの? まさかプレイヤー同士で戦うとか?」


 「そうじゃないみたいだな。何か宝探しみたいな感じに書かれていたけど。まだ一度も開催されてないからな。で、登録するなら今日までだぜ。どうする?」


 「え!? 今日? 私まだ14レベルだけど……」


 「組むって言うならレベル上げは手伝うよ」


 「まあ参加するかどうかは、なつめの判断にまかせるわ」



 うううう。任せると言ってるけど、二人共参加するよなっていう目で見てるじゃない!



 「……後で、組むんじゃなかったって言わないならいいけど」


 「よしきた! じゃ、俺は武器のランクを上げて来る。その間に色々説明しておけよ!」


 「え? お金あるの?」



 メインのランクアップしてないんじゃないの?

 そう思って質問したんだけど、ジッと私の顔を見てからシシリーの顔を見て頷く。



 「うん。金はない。でも上げ方はあるからシシリーに聞けよ。じゃ、ちょっくら行って来る」



 手を軽く振って、ミチルは行ってしまった。

 シシリーを見ると、はぁっとため息をつかれたんだけど!



 「あれは、ばれちゃったわね」


 「え? 何が?」


 「神官に装備品をランクアップしてもらってないって事が!」



 あ、そっか!

 普通はそうやってあげるんだもんね。



 「あの……お金なくても武器ランク上げられるってどうやるの?」


 「コアってこの世界では、お金に近い存在なの。たぶん、ミチルは武器をランク3から4にするんだと思うけど、清めの水と剣のコア20個あればランクを上げてもらえるわ」


 「え? じゃ、お金いらなくない?」


 「メインのランクだけは、コアは使えないの。因みに武器以外の装備品は、どのコアでも使えるわ。お金は、メインのランクアップに使う為に必要だから仕事は必要よ。普通はね」



 そういう仕組みだったのか。

 シシリーの言う通り、ばれたかもね。でもどうやっているかは、わからないと思うけどね。



 「まあ取りあえず、仕事を完了させましょう」


 「あ! そうだったね」



 シシリーに言われ思い出した私は、炎の石を神官に渡して報酬の100,000Gを受け取った。

 なんか、一気にお金持ちになったわ。でもこれ、私には使い道なくない?



 「ねえ、私、お金あっても仕方なくない?」


 「あるわよ。コアとお金だとお金の方が価値があるわ。どうしても欲しい物を売ってもらうのに役に立つわ。この世界は動き始めたばかりだから。お金は、貯めておく事ね!」


 「なるほど」



 もし使わない装備を売ってもらう時に、コアよりお金の方が売ってもらえる可能性があるって事ね!

 あ、そう言えば、ランクアップした装備って売れるのかな?



 「ねえ、ランクアップした装備品も売れるの?」


 「出来るわよ。ただ今はまだ、それだけのお金やコアを用意できるかって事ね。出来るだけ、元を取りたいでしょう? ただし、最初から装備しているのは、神官に寄付しか出来ないわ」


 「え!? 寄付?」


 「えぇ。お金にはならないけど、信仰に影響するからランク上げにいいかもね。寄付する時は、ランクMAXにしてからをお薦めするわ」



 そっか。お金を寄付するのと同じような感じなのね。

 私は、ランク上げに神官を使ってないから、これで信仰ランクをあげますか。まだ先だけどね。



 「お待たせ」


 「今、軽く説明が終わったところよ」


 「OK。で、後どれくらいでレベル上がりそうだ?」


 「あと、1,500ってぐらいね。そこら辺のモンスターを10体ぐらいかしら」


 「本当にお前便利だな」


 「便利って何よ!」


 「おっと。失礼。物知りだな」


 「ふん。ミチルになんかもう何も教えてあげない!」


 「そんな怒るなって」



 はぁ……。また一人置いていかれているよ、私。



「うんじゃ、チーム組み直すか」



 そう言ってミチルは、手を出して来た。

 私は、その手の上に手を乗せる。



 《チーム『ミチル』に入りますか?》



 「はい」



 《チーム『ミチル』に入りました》



 「うんじゃ行くか」



 私は頷いてミチルについて行く。

 しばらくすると、タタタタっと目の前に何かが出て来た!



 「でか!」



 大きなニワトリです! 大きいと言っても大型犬の大きさですが。それでも十分大きいよね?

 しかもこのニワトリ、足が太い!

 あれでキックされたら凄く痛そう!



 「でたでた!」



 剣を抜きながらミチルは言った。やっぱりモンスターなのね。



 「ほら、物理攻撃の歌よ!」


 「あ、うん」



 私はシシリーに急かされて、物理攻撃の歌を歌った。

 光に包まれると、ミチルは「おりゃ」と切りかかって行く。

 モンスターは、一撃で消え去った。



 「おぉ。武器のランク上げて、歌でも攻撃力上げたら一撃か! いいな。ストレスが無い!」



 また出て来たモンスターにミチルは切りかかって行く。

 歌は基本、五分間有効らしい。でも、今のところ、時間を計るしか効力が続いているか確かめる方法がない。

 歌は重ねて掛ける事ができるとシシリーは言っていた。

 と言っても、増えるんじゃなくて、またそこから五分間らしいけどね。

 って、さっきからひっきりなしに、このモンスターが出て来るんだけど?



 「きりがないのね」


 「ここは、モンスターが出て来るスポットなの。素通りしてもある程度しか追って来ないわ。経験値稼ぎにいいわね。コアもドロップするしね」


 「だな。遺跡に行くのもいいけど、ソロじゃ行けないからな」


 「ソロ?」


 「一人でって意味よ。やっぱり遺跡には、回復薬がないのならチームを組まないときついでしょうね」


 「そういうもんなんだ」



 ミチルなら余裕だと思っていたわ。



 《プレイヤーレベルが15になりました》



 シシリーが言っていた通り、10体ほどミチルが倒した時にレベルが上がった!



 「レベルが上がったわ!」


 「よし、じゃランク上げて登録だな」


 「そうね。ランクさえ上げていれば、登録したあとにサブを選んでも大丈夫だから」


 「うん。わかった。ミチル、ありがとう」


 「おう。俺はここで経験値稼ぎしてるわ。戻れるだろう? チームはこのままにしておくから終わったら呼んで」


 「うん」


 「了解よ」



 私達が返事をすると、手をひらひらとして、またあの大きなニワトリのモンスターに斬りかかって行った。

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