━☆ 》16話~魔法は痛いらしい
私達は、宝箱を目指し奥へ進んで行く。でも、本来の目的は炎の石を手に入れるんじゃなかったのかな?
あ! 宝箱に入ってるのかな?
「ねえ、シシリー。あの宝箱に炎の石が入っているの?」
「違うわよ。何が入っているかは私にもわからないけど、炎の石はさっきの敵がドロップするアイテムよ。レアだから中々落ちないと思うけどね」
「何! あの敵がドロップするのかよ! 言えよな」
私達の会話に、ミチルが口を挟んで来た。
確かにミチルが言う通り、聞かなくても教えてくれてもいいんじゃない?
「あら、聞かなかったじゃない」
「聞かなくても普通言うだろう? それを取りに来ているんだから!」
「宝箱を手に入れたら教えるつもりだったわよ」
「全く。何も言わないし、ボスのドロップかと思ったぜ」
ミチルは、安堵したように言った。
まあ、ボスだと強いだろうから私は死ぬわね。
「そんなわけないでしょう。
「そんなの俺は知らなかった。まったく。こっちは……」
「やっぱり、仕事だったんじゃない。って、それってなつめちゃんの仕事? え? ちょっと待って。あなた私と同じランク3でしょう?」
「えっと……」
もうシシリーのバカ~!
ミチルが誤魔化してくれたのに、ばらしてどうするのよ!
「裏の仕事よ。間違ってなつめが受けちゃったの。彼女、この通り初心者だからね。この事は、内緒でお願いね」
「裏の仕事ね~。まあ、いいわ。内緒にしてあげる」
にっこりほほ笑んで、こはるさんがそう言ってくれた。
って、何私のせいにしているのよ!
こうなったのって、シシリーのせいなのに~!
「この妖精、口から先に生まれただろう……」
「ふふふ。どうだったかしら? ねぇ、なつめ」
「………」
私が、生まれ変わらせました!
何かシシリーって、ランクアップしたらお口が達者になって……。
「うんじゃ、じゃんじゃん敵を倒して、炎の石を出すか! なあ、シシリーそれっていくつでも出るアイテムか? 仕事用のアイテム?」
「基本的に仕事用とかはないわ。炎の石は何度でもドロップするわよ」
「だったら一個ずつ持って帰るか!」
「あらそうね。売ったら結構な値段になりそう」
「うん? 炎の石って神官に売れるの?」
「仕事で欲しがるものは、神官に売れるわよ。五つ葉もそうだったでしょう?」
「あ、そう言われれば……」
なるほど。売れるアイテムかどうかは、それで判断すればいいのね。
それなら装備品は、確かに売れないわね。
「ターゲットが近づて来たわよ!」
シシリーがそう言うと、二人は身構えた。
マップを見ると四つの赤い点が近づいて来る。
「お出ましだ! なつめ、歌宜しく!」
「うん!」
私は、物理攻撃の歌と魔法攻撃の歌を歌った。二回光に包まる。これで、物理攻撃と魔法攻撃が10%ずつ上がった。
「よし。サンキュー! さっきより数がいるから攻撃されないように気を付けれよ」
「うん」
ミチルに言われ、私は素直に頷いた。
炎の石を手にいれる前に、死んだら悲しい。
「おりゃ!」
「コールド!」
相変わらず不思議なもので、固い岩のモンスターが剣の攻撃で瀕死の状態。
そこに、こはるさんのコールドが飛んでいき仕留める。
ミチルは、次の敵に向かって走り出す。
それとは違う岩のモンスターが、何か凄い事になってる。体が炎で包まっていて、あれはガードをしているのかな?
「こはる、避けろ!」
「え!? きゃー!!」
違った! あれ、攻撃する為の準備だったみたい。
体を纏っていた炎は、びゅーんとこはるさんに飛んで行った!
ミチルが叫ぶもそれは、こはるさんにヒットする。彼女は、悲鳴を上げてうずくまった!
「大丈夫か!?」
「大丈夫?」
ミチルは、その場で叫ぶ。
私は、こはるさんに近づいた。
こはるさんは、顔をあげると涙目だった。
「めちゃ痛い! 魔法攻撃は、受けたくないわ!」
「あら? 受けたらMP回復するわよ?」
「嫌よ! なつめちゃん! 歌でサポートお願いね!」
ガシッと両腕を掴まれて、私はこくこくと頷いた。
こはるさんは、必死の様子。余程痛かったのかも。
うん。攻撃は、特に魔法は受けないで逃げまくるわ!
「……元気そうだな」
そう呟くとミチルは、モンスターに向き直った。
「スピリット!」
「な! お前な! 配分を考えろ!」
ミチルが攻撃しようとすると、こはるさんが杖を振って敵に精霊魔法を打った!
三体居たモンスターは、全滅です。
「大丈夫よ! なつめちゃん、歌お願いね」
「……うん」
さっきのサポートって、精霊魔法で倒すからMP回復宜しくって事だったのね。
「まあ、俺は楽だからいいけど」
そう言いながらミチルは、ちょっと不満そう。
取りあえず、MP回復の歌を歌った。
「あ! これもしかして、炎の石か?」
モンスターがいた場所に、ミチルが近づいた。そして、手を伸ばした。
何かを拾い見つめている。
「それが、炎の石よ。なつめ、よかったわね!」
「え? 私が先に貰っていいの?」
「そうだな。必要なのは、なつめだし。ほれ」
拾った炎の石を手に、近づいた私の前に出した。
さっきのモンスターをミニチュアにしたような感じの石。色は、熱せされた石のよう。
「あ、熱くない?」
「熱かったら俺が持っていられないだろう。大丈夫だから手を出せって」
「うん……」
恐る恐る出した手に、炎の石が手渡された。
ミチルが言った様に、全然熱くない。
私は、鞄に炎の石をしまった。
「うんじゃ、あと二個手に入れるぞ! あ、なつめ。こはるがスピリット使ったらMP回復の歌宜しくな」
「あ、そうだね」
私は、またMP回復の歌を歌った。
進みながら一分経つと歌い、こはるさんのMPは100%になった。
━☆・*。・+ °。+ *°。°。+ *°。°。+ *°。
「スピリット!」
「くそ! またコアだ! 全然炎の石でないじゃないか!」
《プレイヤーレベルが14になりました》
そう言いながら、小さなビー玉の様なコアをミチルは拾い上げる。
もうかれこれ一時間、モンスターを倒しているけど、コアしかドロップしていない。
「思ったより出ないわね」
「本当だよ。レベル上がったけど、こねぇな」
ミチルも上がったんだ。私は二つも上がった!
ぶうぶう文句を言っているミチルだけど、あれからこはるさんがスピリットで、モンスターを倒している。
あ、歌を歌わないと!
私は、MP回復の歌を歌った。
「言ったでしょ。レアだって」
「っち。どうする? 宝箱取って帰るか?」
「そうね。そろそろ疲れたわ」
「ここなら何とかなりそうだ。狩場にするかな」
「あら、いいわね。なつめちゃんが居れば楽勝よ」
え~!! 私はもう来たくないんだけど!
私は、攻撃を受ければ死ぬんだけど!
「私はもう来たくないかな……」
「そうね。もう少し防御強化してからの方がいいかもね」
私は、シシリーが私の意見に賛成してくれて、ホッとした。
「あら、残念」
「うんじゃ、宝箱取って帰るか」
私達は、宝箱に向かって歩き出す。
この一時間で、この階はマッピング率99%。宝箱を取ると100%になる。シシリーに言われて気が付いた。
目安になっていいかも。
宝箱のところに到着。
近くで戦っていたので、モンスターに出会わなかった。
かぱっと、ミチルがあける。
私達は、覗き込んだ。
そこには、杖が入っていた!
「杖だわ!」
そう言って、こはるさんは私に振り向いた。そして、シシリーをジッと見つめる。
「そうね。今回は、譲るわ」
「まあ、歌を歌って戦闘に参加するなら杖無くてもいいだろうからな」
「わあ! ありがとう」
シシリーが言うと、その方がいいとミチルが頷く。嬉しそうにこはるさんは、宝箱から杖を取り出した。
杖は、何か赤っぽい。先っぽが炎の様な形をしている。
「ねえ、シシリー。あれってなんていう杖なの?」
「あれは、見た目通り『炎の杖』ね。火系の魔法攻撃が2倍になるわ。ランク1の状態だと、MP+20とMP回復+2がついてるの。まあ、なつめが貰うより、こはるにあげた方がいいでしょう」
「うん。そうね」
今の所、私が攻撃をして戦闘をする予定はないし。
こはるさんが、MP増えた方が精霊魔法使える回数増えるからね。って、一回分だね。
「それじゃ、後はここから出るだけだな。出会った敵を倒して終了って事で」
「OK!」
こはるさんは、新しく手に入れた炎の杖を握りしめ、元気にミチルに返事を返した。
遺跡から出るまでに二度モンスターに出会うも、こはるさんが精霊魔法で倒す。
「うーん! 外だぁ」
伸びをしてミチルが言った。
「さてと、コアを分け合うか」
そう言うとミチルは、鞄から遺跡で手に入れたコアを出した。
よく見るとコアにはマークがついている。
「杖のコアは、なつめでいいか?」
「そうね。欲しいところだけど、これ譲ってもらったからね」
こはるさんは、ミチルの言葉に頷きながらさっき手に入れた杖を見せるように掲げた。
ミチルの手には、
「これ、どうする?」
「じゃ、それは私がもらおうかしら」
「いいか。なつめ」
「いいわよ」
ミチルが私に聞いたのに、シシリーが答えた。
まあ、私にはわからないからどっちにしても、シシリーに聞いたかもしれないけど。
「それじゃ、はい」
「ありがとう」
ミチルからこはるさんは、コアを受け取り鞄にしまう。
そして、私達は村に向かって歩き出した。
初めての遺跡はなんとかなったよね?
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