━☆ 》24話~ランク戦4後ろには気を付けて

 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」



 4分の1までいったん減ったミチルのHPは、全回復した。

 そう言えば、なんで一気に減ったんだろう?

 後ろから攻撃されたから? 場所って関係あるの?



 「ねえ、何で一気にHP減ったの?」


 「クリティカルだろう」


 「クリティカルは、1・5倍の威力があるのよ。それと歌の効果が切れたのよ」


 「あ、そっか。歌の効果が切れたのか」



 納得。歌の効果が切れて防御力が戻った所に、通常の1.5倍の攻撃を受けたって事ね。

 私だったら死んでるわね。



 「そう言えば、ここで死んだらどうなるの?」


 「コーデチェンジした神殿に、HPが半分になって戻るわ」


 「そうだったんだ」


 「どっちかが死んだらアウトだな……。さて、進むか」



 ミチルは、リューキさんが無事なのを確認すると、そう言って走り出した。



 「ところであとどれくらい?」


 「そうね。後一回、戦闘があるわ」


 「俺は、距離とか時間とか聞いたんだけど。まあいいや。後一回戦闘だな。了解!」



 走り続けていると、マップに何か違う場所が端に現れ始めた。



 「ストーップ」



 シシリーの合図で私達は止まった。

 赤い点は、八つある。さっきより多いけど大丈夫かな?



 「先に聞いておく。何体だ?」


 「八体」


 「げ! そんなにいるのかよ。さて、どうするかな」


 「そうね。なつめには、ずっと歌を歌ってもらう事になりそうね」


 「え!? ずっと?」


 「チェンジガードの後に、一回MP回復を歌ってからファイヤーを二回放つ。その後に、物理防御の歌を歌って、MP回復でしょう。それから……」


 「ちょっと待って! 覚えきれないわ! 戦いながらだし」


 「大丈夫。指示は出すわ。どうミチル、それでいい?」


 「いいけど、ただ逃げるだけはするなよ」


 「うん。わかった! 逃げながら歌うわ!」


 「じゃまずは、物理防御と物理と魔法攻撃の歌よ」


 私は頷いて、物理攻撃の歌と物理防御の歌、それと魔法攻撃の歌を歌った。

 歌い終わると、私とミチルは走り出す。



 「二人共OKよ」


 「攻撃力UP!」


 「ガードチェンジ!」



 ミチルは、モンスターに近づくけど、私はその場でMP回復の歌を歌う。



 「ファイヤー! ファイヤー!」



 そして、ファイヤーを連続攻撃! 二体を倒した。



 「物理防御の歌! そしてMP回復」



 頷いて物理防御の歌を歌い、それからMP回復の歌を歌う。



 「ファイヤー!」



 更に一体倒した。 その間に、ミチルも二体倒していた。



 《プレイヤーレベルが16になりました》



 あ、レベルアップした! やったー!



 「次は、物理攻撃の歌。そして魔法攻撃の歌。それからMP回復の歌よ!」



 シシリーに言われた通り、物理攻撃の歌、魔法攻撃の歌、MP回復の歌を歌った。

 って、リアルでもこんなに一生懸命歌った事ないわ!



 「悪いけど、HP回復も頼む!」



 ミチルを見れば、残りの三体に囲まれていた。

 HPが半分切っている!



 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」



 私は、慌てて歌った!

 ミチルの体は、光に包まれ25%回復する。



 「サンキュ!」


 「なつめ! あと一息よ! ファイヤーよ!」


 「うん! ファイヤー!」



 ミチルが相手にしていた一体を倒すと、ミチルも一体倒す。

 後はきっと、ミチルが倒してくれるよね?

 私はMP回復の歌を歌うもファイヤーは唱えない。



 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」



 ミチルが最後のモンスターを倒した!



 「疲れた」


 「私も。歌い疲れた……。でも、ミチルに攻撃が集中してよかった」


 「タゲを取ったからな」


 「タゲ?」


 「シシリー説明して……」



 私が聞くと、ミチルが疲れた様にシシリーに言った。



 「敵を叩いて、自分に攻撃が向くようにしたって事よ」


 「え? そうだったの? ありがとう」


 「死なれたら困るからな。まあでも、なつめがファイヤー使えてよかったぜ」


 「一発で倒せるって楽しいね」


 「っち。神官なのにファイヤーMAXってあり得ないけどな! けど助かったよ。後は、MPだな」


 「大丈夫よ。今の戦闘でレベルが上がったからMPのMAXが一つ増えて、ぎりぎり3回使える様になったわ」


 「そうなんだ」


 「そうなんだって、お前が言うのか……」



 はぁっと。ミチルが大きなため息をついた。

 いやだって、そこら辺がよくわからないから……。



 「まあわからなくても使えるから問題ないわよ。なつめ、HP回復とMP回復ね」



 言う通りだけどさ……。

 私はシシリーに言われた通り、HP回復の歌とMP回復の歌を歌った。

 ミチルは、HP全回復したみたい。

 私のMPは、あと二回回復が必要ね。



 「さてと。この先に地底湖があるわよ。あ、そうそう後ろには気を付けてね。なつめは、歩きながらMP回復よ」



 シシリーが気を付けてと言ったので、振り向いたんだけど何もいない。勿論、マップにも敵は表示されていない。

 私は、MP回復の歌を歌った。



 「わかった。気を付けるよ。行こう」



 ミチルの後を私達が着いて行く。

 カーブを曲がると目の前に広い場所が見える!

 その奥に水が……。あれが地底湖ね!

 そうそう。歌を歌わなきゃ。

 MP回復の歌を歌った。



 ミチルは剣を抜き、地底湖に進んで行く。

 って、突然振り向いた!


 え? どうなってるの!?

 リューキさんが、ナイフでミチルに襲い掛かっていた!

 それをミチルは、弾き飛ばす。



 「どういう事だ? あんた、本当は何者なんだよ」


 「なつめ、もっと下がって!」


 「え? うん……」



 下がるって離れろって事?

 どうすればいいのか、わからないんだけど!

 取りあえず、シシリーについて行く。



 「ねえ。あれだけの台詞で、ミチルはどうしてわかったの?」


 「一応本人も聞いているから気を付けてとしか言えなかったけど、気づいてもらえたわね」


 「まさか地底湖まで来れる程の力があるとはな。まあいい。ここで、私が始末しよう」


 「え!? やっぱり悪い人なの?」


 「力抜けるからお前は黙ってろ! それより歌!」



 黙ってろって……。それなのに歌えって……。

 もう! 後でちゃんと教えてよね!



 「物理攻撃と魔法防御の歌、物理防御の歌よ。それとチェンジよ」


 「うん」



 私は、物理攻撃の歌、魔法防御と物理防御の歌を歌った。



 「ガードチェンジ!」



 これで……うん?



 「魔法攻撃の歌は?」


 「魔法は使わないから必要ないわ」


 「じゃ、俺だけでって事だな。攻撃力UP!」



 よくわからないけど、私はここでサポートなのね。



 「攻撃受けたら直ぐにHP回復の歌よ!」


 「うん!」


 「3ターン持たせないといけないからね」



 ボソッとシシリーが呟いた。

 3ターン?



 「受けろ! ウォーターカッター!」


 「後ろよ!」



 リューキさんとほぼ同時に、シシリーが叫んだ!

 ミチルが振り返ると、地底湖の水がびゅっとミチルに飛んできた!

 それを寸前でかわす!

 シシリーが叫んでなかったらきっとかわせてないと思う。

 


 「あぶねぇ……」


 「伏せて!」


 「ウォーターボム!」


 「何やってるの! なつめ、あなたもよ!」


 「え!? きゃー!」



 私は吹き飛んだ!

 って、突然私もと言われても!



 「っち! なつめには、一々言ってやらないとわからないだろうが!」


 「あら、やるわね。って、なつめ、HP回復の歌!」



 体を起こした私にシシリーが言った。

 ミチルは、リューキさんに斬りかかっていた!

 そうだ歌!

 恐ろしい事に、HPが5しかない!



「優しい風よ。傷を癒せよ♪」



 私は、25%回復した。ミチルは、全回復したみたい。



 「っく。貴様!」


 「マジックドレイン!」



 またミチルに魔法で襲い掛かろうとリューキさんがするも、洞窟の方から声が聞こえた!



 「確保!」



 タタタタと、リキュールさんに近づく兵士達。

 命令をしたのは、猫耳の男の子!?

 もしかして、ミーヤさん? って、どうなってるの?



 「離せ!」



 リキュールさんが、暴れている。



 「大丈夫か? って、お前よく生きてたな」


 「離れていたから余波ですんだのよ」


 「申し訳ない。お怪我をさせてしまったようで。ハイヒール!」



 パーッと私の体は光に包まれ、HPが全回復した!

 凄い!



 「誰?」



 男の子を指差し、ミチルはシシリーに聞いた。



 「これは、失礼。私は、タタイヤと申します」


 「え!?」



 猫耳だしミーヤさんの方だと思った!



 「あいつ、あべこべに言っていやがったな」


 「うん? そう言えば、彼の縄を解いたのはあなたたちでしょうか?」


 「あ、すまん。ミーヤと言う孫が捕まったからって聞いて、ここまで連れて来たんだ」


 「ミーヤは、彼ですが」



 タタイヤさんが振り向いた先は、あのご老人!

 あの人が、ミーヤさんって言うの?

 じゃ、リューキって名前は適当?



 「あいつ、自分の名前も嘘ついていたのかよ。リューキって嘘つきやがって」


 「竜起人りゅうきじんの末裔だからそうなのったのかもしれませんね」



 タタイヤさんが言った竜起人ってなんだろう?



 「ところであなたちは、エルフですか?」



 タタイヤさんの質問に、ミチルはチラッとシシリーを見た。

 きっとなんて答えたらいいのか確認したんだと思う。シシリーは、頷いた。



 「そうだけど……」


 「あぁ! やっぱり! 伝説エルフ! 森の守り人! 私は、この山の麓にある街の警備小隊長です! ぜひお困りな事があったら来てください!」



 エルフって伝説の種族だったの?



 「そうだ! そのままだと街に入りづらいですよね? これをどうぞ。変身できます!」



 ミチルは、タタイヤさんからコア!? を受け取った!

 もしかして、それがコーデコア!?



 「連れていけ!」



 くるっと振り向くと、兵士たちに命令を出し、私達に一礼して立ち去った。



 「マジか。最後意味わかんなかったけど、思ったより簡単に手に入ったな」



 ミチルの手には、二つのコーデコアがあった!



 《プレイヤーレベルが17になりました》



 え? レベルが上がった? なんで?



 「おぉ、レベルが上がった! もしかしてクエストクリアすると経験値も貰えるのか?」


 「そうよ」



 そういう事なのね。納得です。

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