━☆ 》35話~作戦は失敗だったようです

 「仕方ねぇ!」


 「きゃー!」



 いきなりミチルに抱き着かれた!

 そう思ったらフワッと浮いた感覚。そして、辺りが歪んだ。


 うん? あれ? 神殿?

 っていうか、凄い視線を感じる……。



 「うーん。こういう死に方は、痛みがないみたいだな」



 横から声が聞こえ振り向くと、凄く近くにミチルの顔が!!

 って、ミチルが私に抱き着いていた!



 「きゃー!!」



 がばっと私はミチルから飛びのいて起きた!

 見渡せば、数人の人が私達を見ている。ちょうど神殿に居たプレイヤーだと思うけど。



 「結局、抱き着いてるじゃない」


 「っるせー。着き落とせばよかったのかよ!」



 シシリーがボゾッと言うと、ミチルがそう返した。

 あ、そっか。

 私を抱きしめて崖から飛び降りたのね!!

 ミチルも起き上がる。そして、徐に鞄の中を確認した。



 「入ってるな。シシリーの言う通りだ。ちょっと外出ようぜ」



 何故かミチルの寝袋に入っているシシリーが、そうねと答える。

 いつのまに!!

 見つからない様にだろうけど……。

 神殿からでると、NPC達が歩いている。



 「ねえ、さっきの人達ってプレイヤーだよね?」


 「だな。ランク戦に参加しないやつもいるからな。なにせランクを上げられなくなるから。三日間だけど、その間に上げるって言う手もある。第一回ってうたっているぐらいだから次もあるだろう? ランクが容易に上がらなくなってから参加って言うのも一つの手だからな」


 「そうね。レアさえ倒せれば、この王都には来る事が出来るし、ここに来てからが本番みたいな感じかしら?」


 「そうなんだ」



 なるほど。ランク上げをするって事か。



 「ねえ、ここってどれくらいのランクでこれるの?」


 「ランク4があればこれるわよ。勿論チームを組んでだけどね。一度来ればワープ出来る様になるし、次は一人でこれるわ」


 「そっか」


 「でも普通は、毒攻撃もあるし3人以上で来るでしょうね」


 「だな。誰か死ねば、一旦戻らないといけないし」


 「あ、そっか。倒しきれないのか……」


 「倒しきれないというか、王都にそいつだけ行けない。まあ、倒しきる前に戻ってこれるなら別だけどな」


 「そんな事をしていたら全滅でしょう? 回復役がいれば別でしょうけど」



 そう言われればそうね。毒に侵されればHPは最終的に半分の攻撃を受けるんだし、ミチルは攻撃自体はノーダメージだったけど、受けていれば毒に侵された時点で、毒を除去できなければ死んじゃうもんね。

 神官を連れていれば、クリーンアップで都度除去できるけど、戦力にならないし人数は必要よね。

 って、私達凄いバランスを取れたチーム!? って、二人だけど。



 「どこでお金数えるかな……」


 「街の外の木陰で大丈夫じゃない? モンスターも近くはあまり出現しないし」


 「OK。そうするか」



 手に入れたお金ね。

 私達は、王都から出て、すぐの木陰に腰を下ろした。


 ミチルは、鞄からお金が入った袋を出していく。私も出す。

 このゲームには、お財布がってこの鞄もそうだけど、どこに入っているのって感じに入って行く。

 だから鞄にしまっているお金は、道具として存在しているみたい。



 「なんだこれ! 全部1Gコインかよ!」


 「え? そうなの?」



 そう言えばこの世界のお金って、現実のお金みたいに数種類あった。1、10、100、1,000Gだけど。見た事あるのは。

 見れば、本当に1Gばっかり……。盗賊にしてはせこいわね!



 「シシリーどういう事だよ! 最初に見たこれだけ100Gなんだけど!!」


 「そう言われてもね。あぁいうのは、決まってないから……。そもそも両替の輸送を襲って集めたというシナリオだからね。違うアジトにあるのかもね」


 「あるのかもね。じゃねぇ!」



 100Gのコインが入った袋を掲げミチルが言うも、シシリーはつらっとして答える。

 私達が持ち出した袋は、二人合わせて42袋。そのうち一袋が100Gが100枚入った袋で、後は1Gが100枚入った物。合わせて14,100G也。

 って、すくな!!

 ミチルが怒るのも無理ないわ。



 「あんな目にあって、これはないだろう!!」


 「本当は、報酬も貰えるはずだったの。1千万G!」


 「はあ?」


 「だから、あそこで頭が登場しなければ、通報して報酬が貰えたの。それこそ、頭も捕らえる事が出来ればミチルが言っていた村を作る権利も貰えるわ」



 という事は、本来なら頭は来ないはずだったって事?



 「まさか、なつめのランクが関係しているとか言わないよな?」


 「違うわよ。あれは、ランクは関係ないはず。回数で決まるのよ。なつめ達は初めてだから頭が登場する事はなかったのよね……。しかも、回数をこなしても頭と出会う可能性は低くて、逆に頭を捕らえるのが大変はずなんだけど……」


 「その情報間違ってるだろう! どうすんだよ! 大損じゃん!」



 大損でもないけど、マイナスではあるわね。

 なんか知らないけど、縄って結構高いのよね。

 シシリーの話だと、職業が色々揃って来ると、プレイヤーが作る様になって、市場に出回るようになる。そうすると、アイテムは安くなるそうだけど……。



 「そうね。金のなる木でも作りますか」


 「はあ? また、そんな怪しげな! もうちょっと普通で出来ないか?」


 「普通で集めたいのなら仕事を受けないさいよ。それが一番よ。ランクが上がれば、お給金が高いのも出るから」


 「そのランクを上げたいからお金が必要なんじゃないか!」



 はあっとミチルがため息を漏らす。

 そうだった! その為にお金集めするのよね!



 「仕方ないわね。今回は、私にも非があるわ。なつめ、次のサブは狩人よ。そして、その次が捕獲者」


 「捕獲者? それってテイマーか?」


 シシリーが私に突然言うもミチルが質問をする。

 テイマーって何だろう? 捕獲者は何となくわかるわ! 何かを捕獲する職業よね? あ、この場合……モンスターを捕獲!?



 「テイマーは、モンスターを味方にして戦わせる職業だけど、捕獲者は名の通りモンスターを捕獲をするのよ。ちょうどからのコアもある事だし。捕獲できるのは、レアモンスターだけだけど」


 「空のコア?」



 そう言えば、鞄の中に入っているわね。賊から奪ったやつだけど。

 シシリーに聞いたミチルは、そんなの持っているのかとジッと私を見る。



 「あ、さっきのところで、何も描かれてないコアと石を見つけて」


 「ほら。頭にかぶせた袋の中身よ」


 「お前、ちゃっかりしてるなぁ」


 「な! シシリーがそう言ったのよ!」



 ムッとして返すと、ミチルがニコッと微笑んだ。

 なんか怖いんですけど……。



 「まあ、お前はただでランク上げられるんだろう? だったら25レベルまで上げておいて、ランクを上げられるようになったら即、捕獲者とれよ!」


 「……わかったわよ」



 って、なんでシシリーのしりぬぐいさせられるのよ!

 そもそもお金が必要なのは、ミチルでしょうが!

 でもミチルもランクが上がらないと、強い所には行けないわよね。



 「うんじゃ、アタルの実の仕事をしつつ……」


 「絶対いや!!」


 「ちぇ。それがお金溜めやすいのになぁ」


 「それなら協力なんてしないから!!」


 「戦うの俺じゃん!」


 「嫌よ。それ倒しに行くならミチル一人で行けばいいわ!」


 「あー。はいはい。じゃ、討伐にするよ。まったく。俺が一人で行ってもなつめのレベル上がんないだろうが……」



 あ、そうでした。でも嫌だし!

 ミチルがおれて、私達は木のモンスターを倒してレベル上げをする事になった。

 あー。よかった。

 今レベル22だから後3レベルね。これならそんなに苦労しなくても上がるよね?



 「で、俺は次、何にしたらいい? マジカルアタッカーでいいのか?」


 「そうね。それで攻撃も上がるし、サブを取得する順番はミチルに任せるわ」


 「了解! じゃ、ちょっと待ってて! 仕事受けて来る。あ、なつめも受ける?」


 「そうね。どうせならそうしたら?」



 ミチルは私に聞いたけど、答えたのはシシリーだった。

 まあ、いつもの事だけど。

 私は頷き、素早くお金の袋を鞄にしまう。

 お金を入れても重くならないのがいいよね! リアルならこんなに鞄に入っていたら重くてしょうがない。

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ランクアップ!~枕が誘(いざな)う夢の世界で…… すみ 小桜 @sumitan

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