━☆ 》7話~ランクアップ失敗!?
私はてくてくと木陰に向かっていた。さっきのランクアップの続きをするつもり。って、もう少し奥でやらないと見られちゃうから少し奥に入る。
「ねぇ、もう一つ提案があるんだけど」
ここら辺でいいかなと立ち止まったらシシリーが話しかけて来た。
「提案って?」
「耐性をランクアップしない? 耐性はバシップスキルだからMPもSPも消費しないから上げてもいいと思うのよ」
「そうなんだ! で、バシップスキルって何?」
「あぁ、そこからなのね。バシップって言うのは、何もしなくても常時発動しているスキルよ。なのでどんな時もなつめには毒は無効って事よ。理解出来た?」
「うん。ばっちり!」
そっかぁ。使わなくても発動しているスキルってあるんだ。って、耐性ってスキルだったんだ。
「で、耐性がランクアップするとどうなるの?」
「どうって……毒以外の物も耐性に付くわ」
「あ、なるほど。そうなるのか! それやっておきましょう! ありがとう、シシリー!」
お礼を言うとシシリーは嬉しそうに頷いた。
ではまず、服をランクアップする前に耐性をランクアップさせておきますか。
胸に手をあて呟く。
「耐性をランクアップ!」
《耐性付与がランク2になりました》
上手くいったわ! さて、寝袋で寝ましょう。
寝袋を腰から外し、それに潜り込む。
「耐性はランク5まで出来るわよ」
「そうなんだ。じゃ後3回ね」
そっか。バシップスキルならいっぺんにMAXまで出来るんだ。サブジョブを選ぶ時に、それも考慮して選んでもいいかな?
SPが回復すると寝袋から這い出て呟く。
「耐性をランクアップ!」
――それを耐性がMAXになるまでやった。
そして寝袋に入り、耐性を確認する。
「ステータスオープン」
耐性付与【バシップスキル/ランク:MAX/効果:毒・麻痺・睡眠・やけど・氷結の無効化】
聞いた事あるようなないような単語が……。取りあえず今は直接役に立たなそうだけど、ないよりはいいよね。こういうのを使う敵に会う様な場所には行きたくないかも。
そういえば、レベル足りてないけどメインジョブってランクアップ出来ないのかな? 武器も魔法もスキルも出来たんだから出来そうじゃない?
よし、試してみよう!
私はSPが回復して寝袋の外に出た。
「メインジョブがランクアップ出来るか試してみるわ!」
「え? まあいいけど。私の知っているデータにはないからどうなるかはわからないわよ」
「うん……」
そうだった。成功してランクアップしても保証はなかったんだった。試してみて変になったら、頑張ってプレイヤーレベルを10まで上げよう!
「よし……」
手を首元に当てた。
「ランクアップ!」
今の所体に異常はない。
《経験値が足りません! ランクアップに失敗しました!》
「え?! 失敗?」
一回成功してるし、失敗するとは思わなかった。
「経験値が足りないって……。魔法やスキルはランクアップ出来たのになんで?」
「多分だけど、魔法やスキルはランクアップすると、使用回数のカウントがリセットされるのよね。でもプレイヤーの経験値は、レベルが上がってもリセットされず、積み重なっていくのよ。まあ最初からそういう仕様だったとは思うけど……」
「そうなんだ。でも、出来ない事がわかったし……って、失敗してもSPって減るんだ……」
見るとしっかりSPは0になっていた。まあ発動はしているから当たり前だよね。
はぁっとため息をつきつつ、寝袋に入った。
「レベルが達していれば、メインジョブにもランクアップ使えるんだからいいじゃない」
「そうだけどさ……」
そうなんだけどさ。神官ってレベル上がりづらいんでしょう! うーん。次のサブジョブは、ちゃんと考えて選ばないとレベル上げ大変かもね。
《プレイヤーレベルが8になりました》
うん? え? 8!?
突然寝ていたらレベルが凄い上がった! どういう事?
「あ、ミチルが仕事を完了したみたいね」
「あ、そっか。びっくりした。こんなに上がるんだ……」
一体いくら経験値入ったのよ。
「ステータスオープン」
経験値を見れば、1256になっていた!
そっか。五つ葉一個の採取で10経験値貰えていたもんね。100個だから単純に計算しても1000になるわけか……。これ、おいしいかも!
「シシリーの作戦ナイスだわ! 凄い稼げる!」
「でしょう」
そう言うとシシリーも嬉しそうに返した。
思ったけど、戦闘をしないのなら服をランクアップするのは後でもいいかも。レベル10になれば、メインジョブをランクアップさせて、サブジョブの魔法やスキルをランクアップさせるんだからその方が都合がいいよね?
「服をランクアップさせるのは、次のメインジョブをランクアップさせた後にする事にするわ」
「それがいいかもね。ミチルが上手く仕事を引き受けてきてくれれば、レベル10なんて直ぐよ」
私は、うんと頷いた。
と、その時だった――
『おーい、ミチルだけど。三人から請け負ったけど大丈夫か?』
ミチルからだ!
請け負ってくれたんだ!
「ミチルへ――なつめです。ありがとう! 大丈夫です。お願いします。……どうぞ」
『あ、手数料だけど一人100Gなんだけどいいか?』
あ、手数料! すっかり忘れていた! 今の私にしたら大金だわ。
「ミチルへ――大丈夫です! ありがとう。……どうぞ」
『じゃ、一時間ぐらいで行くから、頼むな!』
「ミチルへ――はーい。気を付けてね……どうぞ」
『おう! じゃな』
わぁ。お金も入って、得した気分。まだ入ってないけど。
私はSPが回復したので、のそのそと寝袋から出た。
「一時間か何してようかな」
「仕事をこなして待っていたらどうでしょう。しかし一時間ですか……」
「うん? どうしたの?」
「いえ、別に。お金を稼ぎましょう!」
私は、深緑の神殿に入った。相変わらずほとんど人がいない。
神官に話しかけて、五つ葉の採取の仕事を引き受けミチルが来るまでこなしていた。
『おーい。ミチルだけど近くまで来たから、毒の沼で待ってて』
五回こなした時に、ミチルから連絡が入った。
「ミチルへ――わかった。向かうわ……どうぞ」
私は毒の沼に向かうと、すぐにミチルは現れた。
「お待たせ。これが袋。三つとも100個な。大丈夫か?」
「うん。頑張る」
私はミチルが見守る中、五つ葉を巾着袋に詰めていく。
30分程で採取できた。
「はい」
「おぉ、ご苦労さん。お金は後で貰って来るから」
「うん」
ミチルに巾着袋を三つとも渡した。
まあ、初めての仕事相手に、先にお金は渡さないよね。
「ところでなつめは、ずっとここにいるのか?」
「なんで?」
「いや、普通は出発地点から離れていくもんだろう? なんでここに戻って来たのかなって。もしかして迷子というか、どこ行っていいかわかんないのかなって思ってさ」
この人、強引な上に世話焼きなのね。
「あ、お構いなく。ちょっとフラフラしていただけだから」
「そっか。村まで行きたくなったら声掛けろよ。連れて行ってやるから」
「うん。ありがとう」
「うんじゃな。また後でな」
ミチルはまた大きく手を振り去って行った。
「ちょっとだけいいかな?」
「え? 何?」
「まず悦明しやすいように、フレンド欄見てもらっていい?」
「え? どうやって?」
「そうだったね。説明しないとだった。フレンドオープンって言えば見れるから」
「フレンドオープン」
私は頷いて呟いた。
ミチルの名前があった。
契約フレンド【○ミチル/メインジョブ:剣士/ランク:3】
「見てわかるようにプレイヤーレベルじゃなくて、メインジョブランクが表示されるのよ」
「うん。そうだね」
「メインジョブってランクアップしないと上がらないでしょう? ランク4辺りから上げづらくなるのよ。お金がかかるから。つまりプレイヤーレベルが上がっても、メインジョブランクが追い付かなくなるわけ」
「あぁ、そうなんだ」
「そうなんだ……じゃなくて! 相手にもなつめのメインジョブランクが筒抜けって事よ! さっきまでレベル5だったなつめが、ランクを上げれば10になったってばれるわよ! まあばれてもいいかもれしれないけど、驚くでしょうね」
「あ! そういう事か!」
そういう事ですとシシリーは頷く。
どうすればいいのよ! って、そうなるって事がわかってるならフレンドになる前に教えてよね!
「解除の仕方わかる?」
勝手に解除したら怒るかな?
でもまあ、あの人なら色々聞いてきそうだし……。
「無理ね。普通のフレンドならどちらかが解除すれば出来るけど、契約フレンドだし」
「え? フレンドに種類あるの?」
「組んで仕事をする時になるフレンドを契約フレンドって言うの。これはどっちも了承しないと解除できないの。仕事のトラブルを減らす為のものだけど……」
「え? だったら契約する前に行ってよ!」
「そう言われてもね。ミチルはフレンドって言っていたから。私が表に出て行ってよかったのならストーップって止めたけどね」
あぁ、そう言えば、ばれない様にずっと隠れて大人しくしていたんだっけ……。これは気軽にランクアップ出来ないよう! どうしよう!
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