━☆ 》2話~就活活動は基本です

 気が付くと建物の中だった。

 白く五角形の壁に中心が高くなっているステンドガラス風の天井。その中心付近に五人の男の人が背を合わせ立っていた。自分と同じ紫色の神官さんのような感じ。

 壁には五つのドアがあり、建物内は人はまばら。



 「何ここ? 教会?」


 『そうですね。そのような感じです。この世界で信仰されている深緑の神を崇める建物でもあります』


 

 そう言ってシシリーが指差したのは、五人が背にしている真ん中のねじれた木の幹。それは、建物の外まで続いていた。要はこれを囲う様に建物を建てられた感じ。



 『真ん中にいる五人は神官で、寄付をすれば色々な癒しをしてくれます。HP・MP・SPの回復。毒などの除去。ステム様を信仰しているプレイヤーなら誰でも癒してくださります』


 「はぁ……。信仰ですか。じゃ信仰していない人はどうするんですか?」


 『その人達は、自力で回復かアイテムで回復になります』


 「なるほど。で、どうやったら信者になれるの?」


 『なつめは神官なので、すでに信者ですよ。左腕を見てみて。信者の証の幹の腕輪があるでしょ?』



 私はシシリーに言われるまま腕を見てみた。左腕には確かに五ミリ程のねじれた幹のようなリングがあった。


 ついでに自分の姿も見てみると、紫色の袴? のような出で立ち。巫女? それに右手には杖を握っていた。よく描かれる変哲もない杖。先っぽがちょっとくるっとなっている木の杖。


 後は左肩から斜め掛けした鞄。左腰にぶら下がっている得体のしれない袋。何だろうこれ?



 「ねえ、これは何?」



 私は袋を指差し聞いた。



 『それは簡易寝袋です。それに入って寝る事が出来ます。そうすると一分間にステータスの回復値分だけ回復する事が出来ます。使用は安全地帯をお薦めします。因みに安全地帯でも、村や町の道端で寝るのは禁止されていますので、この建物の中で寝る事をお薦めしますよ』


 「そうなんだ……」



 寝袋って……。

 腰に下げている袋は手をグーにしたぐらいの大きさしかない。ついでに重さも感じない。


 本当に寝袋なのだろうか?

 で、これで寝るとステータスの回復値分回復……。



 「ステータスってどうやって見るの?」


 『ステータスオープンで見えるようになりますよ』


 「ステータスオープン?」



 フッと目の前にステータスが現れた!


 驚いた……。



 『文字に触れるようなイメージでタッチすれば、詳細が表示されますよ』



 なるほど。


 私はステータスを見てみると――



 【名前:なつめ | レベル:1 | 経験値:0 | メインジョブ:神官ランク1】

 【HP:10/10 | MP:10/10 | SP:10/10】

 【魔法:つえクリーンアップ】

 【スキル:つえ祈り/ランクアップ】

      ▼



 ――と、これしかない。



 「えっと。回復数値ってどれかな?」


 『それは▼をタッチすると次のが表示されますよ。魔法やスキルをタッチすれば、消費量や効果、今のランクが表示されます』



 なるほど。▼ね。私はタッチしてみた――



      ▲

 【メインジョブ:神官 | ランク:1 | サブジョブ:なし】

 神官【HP回復+1/MP回復+1/SP回復+1/つえクリーンアップ/つえ祈り/耐性付与】

      ▼



 HPとMPとSP全部が1ずつ回復するみたい。あと魔法とスキルは、神官のだったんだ。


 更に▼をタッチしてみた――



      ▲

 【HP:10|MP:10|SP:10|物攻:1+1|物防:0+1|魔攻:0|魔防:0|物クリ:0|魔クリ:0|腕力:1】

 回復【HP:1+1|MP:1+1|SP:1+1】

      ▼



 物理攻撃にプラス1ある。うーん、武器補正なのかな?


 もう一回▼をタッチする――



      ▲

 装備【頭:―/体:神官の服/右手:神官の杖/左手:ステムの幹輪/足:神官の靴/鞄:肩掛け鞄】

 アイテム【―】【0ガト



 これで最後らしい。▼が表示されない。

 そうだ。杖の詳細を見てみるかな。


 神官の杖をタッチすると詳細が表示された――



 つえ神官の杖【ランク1/物理攻撃+1/重さ1】



 やっぱりこれに攻撃力がついていた。って、これだけ? 物理攻撃派なの神官って……。それに武器にもランクがあったんだ。

 あ、そうだ。手に入れたランクアップも見てみようっと!


 私は、ランクアップにタッチした――



 ランクアップ【ユニークスキル/ランクアップ不可/消費:SP最大分消費/効果:SPと引き換えにあらゆるものをランクアップさせる】



 ランクアップさせるスキル? そう言えばランクアップって本来どうやったらなるものなんだろう?



 「ねえ、ランクアップスキルって色んなのをランクアップさせるスキルみたんだんだけど、普通はランクアップってどうやったら出来るものなの?」


 『メインジョブで言いますと、プレイヤーレベルが5になるとランクアップが出来るようになり、ここの神官に寄付をするとランクアップしてくれます。魔法やスキルは、使用回数が条件値までいくと勝手にランクアップします。装備品やアイテムは、基本的にアイテムなどでランクアップさせます』



 なるほど。本当に色んな物がランクアップするんだ。って、めちゃくちゃ凄いスキルじゃない? このランクアップっていうスキル!


 試してみたいけど……やっぱりちょっと怖いな。

 うーん魔法やスキルをランクアップする? あ、でもランクアップってレベルアップみたいなもんだよね? だったら魔法とかランクアップしたら消費量上がるよね? 私がやった事あるRPGはそうだった!



 「魔法とかってランクアップすると、消費量って上がるの?」


 『はい。上がります。勿論、効果も上がりますよ。ところでチュートリアル進めないんですか?』


 「チュートリアル? あ、説明ね。そうだった! チュートリアルって何やるの?」


 『はい。まずは、神官に話しかけて就活して頂きます!』


 「へ? 就活!?」


 『はい。戦闘をこなしてもいいんですが、就活登録しておくと自分にあった仕事クエストを紹介してくれます。荷物運びなんていう仕事もあり、移動の時に受けると一石二鳥ですよ!』


 「なるほど! じゃ、まずは就活しますね!」



 なんか現実と変わらないな。仕事探ししなきゃいけないなんて……。


 私は一番近い神官に話しかけた。



 「あのすみません。えっと、仕事をしたいので登録をしたいのですが……」


 「はい。お名前は?」


 「なつめです」


 「なつめさんですね。はい、登録終わりました。私達に話しかけて下されば、仕事がある時にご紹介します」


 「はい。お願いします」



 私は軽く礼をしてそう言った。


 登録めちゃ簡単。書類を交わさない所が現実と違うところだよね。



 『では次に仕事をしてみましょう。神官に話しかけて仕事を受けて下さい。注意点ですが、仕事を放棄するとお金は貰えません。また、ペナルティーとして一時的にその系統の仕事の依頼が受けられなくなります。例えば、モンスター退治ならそういう仕事は表示されなくなりますのでご注意下さい』



 私は頷いた。


 まあ、現実でもそうだもんね。


 私は先ほどの神官に話しかけた。



 「あの仕事をしたいのですが?」


 「そうですね。なつめさんにはこれなどどうでしょうか?」



 そう言うと、私の目の前にリストが表示された!



 【五つ葉集め/10G】



 『詳細を見てみましょう。五つ葉集めをタッチして下さい』



 シシリーに言われた通りタッチすると詳細が表示された。



 五つ葉集め【仕事内容:五つ葉を一つ採取する/場所:毒の沼/報酬:10G】



 毒の沼? って、最初から難易度高くないですか?



 『では詳細を確認出来たら受けてみましょう。神官に伝えて下さい』



 え? これをやるの? まあ、これしか表示されていなんだから受けるしかないけど……。



 「えっと。この五つ葉集め、お願いします」


 「では、なつめさんにこの仕事をお願いします。頑張って下さいね」


 「……はい」



 またもや簡単に依頼を受ける事は出来たけど……。



 『心配いりませんよ。耐性のランク1は毒なので、毒の沼の影響は受けません』



 あ、そうなんだ。そっかこれ、神官用の仕事なんだ!



 『では毒の沼に向かう為に、北に向かいましょう。ついてきて下さい』



 ぴゅーっと、ドアの方に向かい扉を通り抜けて行った!


 シシリーって触れるのにドアは通り抜けるんだ! って妙な関心してないで追いかけないと!


 私はドアを開けて驚いた!


 森の中だった! ちょっとここら辺だけ木が少なくて開けているだけで、周りは木ばかり……。


 普通スタート地点って町だったりしない?



 『そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。この世界はプレイヤーが作っていく事になっていまして、エルフ王がいる王都とその近くにある村しか現在ありませんから。これから森に点在する深緑の神殿を中心に村へと発展する予定です』



 私はシシリーの説明に神殿を振り向いた。

 深緑の神殿は、白い壁が緑に浮き目立ち、天井のステンドガラスが綺麗で、その中心から突き出ているねじれた幹は高く、遠くからでも見えて目印になりそう。



 『村にすらなっていないのでここら辺は安全地帯ではないですが、モンスターはそうそう出てこないので大丈夫です』



 そっか。村ですらないのか……って、凄いゲームだね。


 シシリーがふわふわと浮いている所に看板がある。


 注意! この先、毒の沼です――


 だって。この向こう側らしい。

 見ると少し先が緑じゃなくて黒っぽく見える。


 思ったけど、毒がなくても入りたくないかも……。



 『では、行きますよ!』



 私は溜息をしつつ、シシリーについて行った。



―――――――――――――――――――――――――――――――

つえは、杖のマークだと思って下さい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る