━☆ 》28話~必殺!眠りの歌

 私は、王都ってもっと遠い所にあって賑わっていると思っていた。

 でもレアモンスターを倒し、暫く走ると森深くなり蔦で囲まれた場所が見えて来た。都なのに森の中なのね。

 この蔦、塀の役割をしているらしく、門の所にはごてごての鎧を着た剣士? が立っている。


 その門をくぐると、中は幹がにょきっと伸びた神殿が10程見え、所々にあるみたい。ずっと向こうまで見える。

 そして、道は舗装されているとはいいがたい土の道。その上を馬車が走っている!


 一応、パン屋とかもあるみたい。商店の様な建物が見える。建物と言っても露店の様な感じ。

 でも人がまばらなんだよね。王都なのに……。



 「人が少ないね」


 「ほぼ、NPCなんじゃないか?」


 「え? なんで?」


 「なんでって。プレイヤーがここに来てないからだろう? まずレアを倒してこないといけないし、今ランク戦中だし。まだ来る必要がないんじゃないか?」


 「あ、そっか」



 ランク戦するからランク上げてない人が多いんだっけ?

 それにしても村の方が人が多いってどうよ。



 「うんじゃまず、仕事クエストを完了しておこうぜ」


 「うん」



 私達は、近くの神殿に入った。ここにもプレイヤーはいない。

 仕事を完了させ5万G手に入れた。



 「で、どうすんだ」


 「そうね。仕事を請け負って、南に向かいましょう。『アタルの実』を請け負うのよ」


 「OK」



 ミチルは、ルンルンで神官に向かった。

 私も仕事を請け負うとリストを見ると、凄い数があった……。



 「何これ……」


 「王都では、場所が関係なく自分が受けられる仕事が表示されるからね。ちゃんと場所をチェックしないと大変な目に遭うわよ」


 「何、その仕組み」


 「まあ一応、早い者勝ちの仕事もあるからね。請け負える村まで行っていたら間に合わない時に、ここで受けられるし。使い方次第かしら」



 このゲームって親切なのかよくわかんないわよね。

 私は、シシリーが言っていた『アタルの実』の取得を請け負った。



 「それじゃ出発するわよ」



 私達は、南の門から街の外に出た。



 「ここに出るモンスターってどんな感じ?」


 「うーん」



 シシリーは、ちらっと私を見る。

 何? なんで見るの?



 「あぁ。なるほど」



 そう言いつつ、ミチルは剣を抜いた。

 きゃー!! 虫!! 虫のモンスターだわ! ハエとかそういう感じのです!



 「ほら、頑張って歌を歌ってちょうだい!」


 「もう! 早く終わらせて帰るからね!」



 私は、物理防御と物理攻撃の歌を歌った。

 近づきたくから、ここで待機してます!



 「攻撃力UP!」



 ミチルは、走って近づき叫ぶ。

 モンスターは2体。

 あぁ、いやだ! ぶーんって羽音が聞こえるよ!


 ザン!

 ミチルは一体に斬りつけた。HPは半分を切った!

 二回の攻撃で倒せそうだわ。

 そう思っていたら攻撃を受けたモンスターの羽がぱあっと輝くと、スピードがアップした!



 「ちょっと待て! めちゃ早いんだけど!」



 ミチルが二打目を与えようとするも、スッと交わし逆に攻撃を受けた。って30%以上受けてるわ! 歌を歌っても全回復しない!



 「優しい風よ。傷を癒せよ♪」


 「あぁ、もう! ちょこまかと! もうファイヤーとかで倒せないか!」


 「無理ね。場所が云々より魔法耐性があるのよ。倒しきれないからなつめがやられちゃうわ」


 「じゃ、他に手はないか? 早すぎて攻撃当たんねぇ!!」



 攻撃しては、反撃を何とか交わしている。でもその攻撃が当たらない。



 「そうね。なつめ、眠りの歌よ! 歌をランクアップよ!」


 「え!」



 シシリーは、最後は囁いて言った。どうやら歌の次のランクは、眠りの歌みたい。



 「歌をランクアップ」


 《歌がランク11になりました》



 私は、こっそりランクアップする。そして、直接歌詞を見ながら眠りの歌う。

 すると二体のモンスターは、光に包まれひらひらとゆっくり落下していく。

 そこへためらいなくミチルは一撃を入れ、一体を消滅させた。



 「ミチル攻撃は待って! なつめ! 魔封じの歌よ!」


 「うん!」



 魔封じの歌は、覚えている。歌うと眠っているモンスターは、光に包まれた。でもまだ、眠っている。



 「攻撃してOKよ」


 「サンキュ!」



 ザン!

 寝ているモンスターを攻撃すると、目を覚ましミチルから逃げようとする。だが、ミチルはまた攻撃を与え倒した!



 「あのさ! そういう方法があるなら最初からしてくれ!」



 くるっとシシリーに振り向き、少しムッとしてミチルは言った。



 「だって、なつめが戦うの嫌そうだったし」


 「いいや! ワザとだろう! 俺で遊ぶなって言ってるだろう!」


 「次からは、私も参加するからね。ほら回復! 優しい風よ。傷を癒せよ♪」



 私達は光に包まれ、ミチルはHPが全回復した。



 「次から今の作戦でいくならまず、眠らせてから魔封じね! 魔封じはかかる確率50%なの。でも眠りの歌は、1回限りだけど必ず聞くわ。眠っている間は、魔封じも100%の確率で掛かるわ。因みに眠っている時間は2分間よ」


 「OK。次からは、眠りの歌と魔封じの歌の後に攻撃する。宜しくな。なつめ」


 「うん。じゃ、メモっておく!」



 私は、地図のメモに眠りの歌の歌詞をメモった。



 「もう少し先の木に、アタルの実がなっているわ」


 「それって何に使うものなの?」


 「命中率をUPさせるアイテムの材料よ。って、私達には作れないけどね。そういう設定って事」


 「へえ」


 「要は、それを使えばさっきのモンスターを歌を歌わずに倒せるって事ね」


 「なるほど!」


 「なるほどじゃない! 攻撃出来ないんだから補助をしろ! そんなの買っていたらお金がいくつあっても足りないからな!」


 「わかってるわよ。でも、なんか一気にモンスターが強くなった感じだね」


 「普通は、二人で同時に攻撃して仕留めるのが、さっきのモンスターの倒し方よ。だから二撃で倒せる様にならないと倒せなくなるわ」


 「やっぱり最初から俺一人じゃ倒せないじゃないか!」


 「うふふ。刺激的なのがお好みの様なので」


 「そういう刺激はいらねぇ!」


 「あら怖い!」



 そう言ってシシリーは、私の寝袋へ避難した。

 なんでいつもシシリーは、こうなのかしら?



 「ねえ、シシリー。最初から教えてあげておいてよ」


 「全部教えたら確かに苦労せずにすすめるでしょうけど、楽しみが半減するわよ? 達成感もないでしょう。それに、聞かれたりお願いされたら教えているじゃない。それで十分よ」


 「まあ、確かにな。急いでいるわけでもないし」



 怒っていたミチルもシシリーの言葉に納得している。

 楽しみ方は人それぞれかもしれないけど、強くなって一番になりたいとかじゃないからまあこれでもいいか。……二人が喧嘩しなければね。



 「うんじゃ行くか」


 「うん」



 暫く進むと、リンゴの木の様に実がなっている。



 「これか?」


 「そうよ」


 「随分簡単に手にはいるんだな」


 「えぇ。さっきのモンスターさえ倒せるならこのクエストをやれば、お金を貯めやすいわよ」


 「いやよ!」



 シシリーの言葉に私は、速攻嫌だと意見した。

 虫系のモンスターとなんて戦い、いや会いたくないわ!



 「やっぱりなぁ……はぁ」



 私の言葉を聞いて、ミチルがため息をついた。予想はしていたみたい。



 「残念だったわね。ミチル」


 「ちぇ。で、なつめが嫌がらない仕事はないのかよ!」


 「そうねぇ。拠点探しでもする?」


 「拠点探し?」



 シシリーの言葉に、ミチルが復唱する。



 「神殿のど真ん中の幹を探すのよ。受けるのは誰でも受けれて、完了は早い者勝ち。それはチームを組んでいても同じだから一人が請け負って、お金は分ければいいわ」


 「なるほどな。シシリーがいたらすぐに発見だな」


 「そこまでやったら不公平でしょう? ヒントは教えてあげる」


 「ちぇ。まあ、今度はそれにするか! 何か楽しそうだし」



 ミチルはやる気みたい。

 まあ、戦うのは主にミチルだし。お金が必要なのもミチルだから仕事の件に関しては、ミチルに選ばせよう。

 それより経験値よね!



 「ねえ、シシリー。もしミチルが請け負ったら経験値は私に入らない?」


 「前にも言ったけど、仕事の経験値はそれをやっと人になるわ。チームを組んでやれば、二人で分け合う事になるのよ。だから、前にやった炎の石も経験値は、三等分されているわ」


 「え!?」


 「うん? どうした?」


 「ううん。何でもない」



 こっそり聞いていて驚いて声を上げたものだからミチルが私達を見た。

 仕事はチームを組んでやると分割されるんだ。あ。同じのを請け負えば、一人分ずつの経験値が入るって事よね。

 なるほど、なるほど。



 「じゃ、戻るか!」


 「うん!」



 帰り道も同じ様な場所で、モンスターと遭遇した。

 私が、眠りの歌で眠らせ、魔封じで封じるとミチルは三体のモンスターを難なく倒す。


 よく考えれば、ミチルの武器って初期の武器だよね?

 ランクは4みたいだけど、それでも攻撃力はそれなりにあると思う。

 防御を気にしなくていい分、初期のでもさくさく進めるのね!



  《後一時間でこの世界を離脱します》



 そんな事を考えて歩いていたら、いつものアナウンスが聞こえた。

 そして私達は、無事に街に戻り今日のプレイを終えたのでした。

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