ランクアップ!~枕が誘(いざな)う夢の世界で……
すみ 小桜
━★ 》1話~素敵な夢のプレゼント
私は今、ベットの上で正座をしてジッと枕を見つめている。
この枕は今日、私の二十歳の誕生日におじいちゃんが買ってくれた誕生日プレゼント。
『今流行の枕らしい。夢で仕事が出来る画期的なモノらしいから社会人になる前に練習にと思ってな』
そうニッコリと渡された枕だが、解説書を見ると――
時間がないけどゲームを楽しみたいあなた! 夢の中でゲームをしませんか? VRを体験しながら睡眠をとれてしまう、そんな夢の様な画期的なゲームが誕生! 目覚まし付きで、寝過ごしもなし!
――そう書いてあったんだけど……。
おじいちゃん。これゲームかもしれない。
電源さえ入れなければ普通の枕だし、目覚まし付きで必ず目を覚ます事ができるらしいから、今日は試してみて無理っぽかったら明日から普通の枕として使おう!
私は、意を決して枕に頭を乗せた。
私がした事があるゲームは、有名なRPGぐらいなものだ。しかも人にこれどうしたらいい? などと質問しながら進めていた程ゲーム音痴。
大丈夫かな? サポーターがいるって書いてあったから大丈夫だと思うけど……。
《
サーバー? そう言えばこの枕、一人一個でマイまくらだったっけ……。
私の意識は一旦ここで途切れた――。
━☆・*。・+ °。+ *°。°。+ *°。°。+ *°。
うん? ここは?
真っ暗闇の中に何故か鏡がある。その前に私は立っているみたいで……。
って、これ私?
鏡に映る私は、顔は私っぽいけど何か違う……。あ! 耳だ! 耳が尖がっている! なんで? ゲームだから? それに何故下着姿?
私は首を傾げる。
『ようこそ! In the dream world へ!』
「きゃ!」
突然声を掛けられ私は飛び跳ねる程驚いた! 振り向いて更に驚いた!
だって! 妖精さん? ツインテールの可愛い女の子がフワフワと浮いて、私の傍らにいるんだもの!
『あ、驚かせてごめんね~。私はサポーターのシシリーです。宜しくね』
「宜しく……」
サポーターって人じゃないんだ。って、不思議。画像じゃなくて本当にそこにいるみたい。あ、そっか! 夢の中でゲームする感じなんだ!
これ、触ってもいいのかな?
『いやん』
「あ、ごめん。触れるか試そうかと思って……」
触れるか試す為に人差し指でつんっとしたら、シシリーさんは体を縮こまらせた。お腹あたりを突いたはずなのに、胸を隠し背を向けジッとこっちを見ている。
『おさわり禁止ですので気をつけてくださいね!』
「あ、ダメだったんだ。ごめんなさい」
『では気を取り直して、キャラメイクを始めますか』
「キャラメイク?」
お化粧でもするのかな?
私は、鏡に映る自身を見た。
いや、その前に服を着させて欲しい。
「お化粧の前に服を着たいんだけど……」
『化粧の事ではありませんよ。あなたの設定をするんですよ。まずはお名前を決めましょう!』
私はなるほどと頷いた。
設定の事だったのね!
「えっと……夏萌……」
『漢字は使えません。平仮名かカタカナになります。また重複して名前をつけられないので、早い者勝ちです。文字数は二文字以上になります』
「では、なつめ、でお願いします」
『重複はないようですので、なつめで登録しますね。これからは、なつめとお呼びします。あ、私の事もシシリーでいいですよ。チュートリアル終了までサポート致します』
「チュートリアル?」
『なつめは、MMOはやったことありませんか?』
「たぶんないと思います」
シシリーは、腕を組みうんうんと頷いた。
『ではご説明を。ゲームのやり方をゲームを進めながら説明する事をいいます』
「そうなんだ。じゃ、やった事がなくても出来そうだね」
うんうんとシシリーは頷く。
『まず最初に見た目を決めましょうか。髪の色と長さはどう致しますか?』
「あ、そういうのも決められるんだ」
『ランダムもありますよ。瞳も色を決められるので、セットで考えるといいかもです』
どうしようかな。みんなきっとカラフルだよね……。よし!
「あえて黒にします! 髪の色は黒。瞳は赤……。いや、赤だと何か怖いかな? うーん。でも瞳は黒じゃなくてもいいかな? あ、紫!」
『では、髪は黒、瞳は紫にします。髪の長さはどういたしますか?』
「今ぐらいでいいです」
リアルの長さは胸辺りの長さでストレート。鏡の映っている姿です。
『了解です。こんな感じです』
こんな感じって……。瞳しか変わってないし、近づかないとよく見えないし……。
『では次にジョブを決めて頂きます』
そうシシリーが言うと、目の前の鏡には剣を構えた私がいた。しかも鎧を着ている。
『このゲームを始めるのに四種類のジョブが用意されています。まずはそこからメインジョブを決めて頂きます。今目の前に見えるのが剣士です。次が武闘家。次が魔法使い。次が神官ですよ』
「何となくジョブはわかるけど、どれを選んでいいかわからない……」
『そうですよね。ではIn the dream world世界観をお話ししますので、それで検討してみて下さい』
シシリーはそう言って話してくれた――。
エルフの国が舞台で、プレイヤーはエルフ。
プレイヤーは、遺跡にいるモンスターを退治したり、現実世界のように仕事をして生活をします。
そしてプレイヤーにはレベルがあり、5レベル毎にメインジョブをランクアップさせる事が出来ます。ランクアップするとサブジョブを設定できるようになる。サブはランクアップさせる事は出来ないが、サブジョブの選び方次第で、色んなジョブの選択肢が広がって行きます。
その為、別名このゲームは、ジョブコレクターゲームとも言われています。
ジョブには戦闘系と生活系があり、モンスターと戦ういわゆる冒険者になるのなら戦闘系を選ぶとよいでしょう。
さらっとだけど、説明をしてくれた。
要は、メインは強くなっていくけど、サブはならない。だけど数は増やしていけるって事ね。
『メインジョブの職種によって、ランクアップボーナス、レベル補正が変わります。剣士なら物理攻撃力に、武闘家はクリティカルに、魔法使いは魔法攻撃力に、神官はSPに補正が主につきます。またサブジョブもランクアップはしませんが、選んだジョブの補正が付きます』
なるほど。剣士ならレベルが上がるごとに物理攻撃力が増えるって事ね。ところでSPってなんだろう?
「あの、SPって何に影響するの? あまり聞かないからわからないんだけど」
『SPはスキルを使うのに必要な数値です。魔法を使うとMPが消費されるのと一緒で、スキルを使うとSPが消費されます。あ、それとメインジョブに選んだ時にだけ、剣士なら両手に武器可能で、武闘家なら二回攻撃が可能です。これは、蹴り攻撃がバシップとしてついています。魔法使いは魔封じ無効で、神官は毒などの耐性があります』
なんか余計選ぶのが難しくなった気がする。
攻撃系は強そう。剣士だって両手に武器を装備すれば二回攻撃でしょう? 魔法使いは魔法を封じられないのなら心強いのね?
「そう言えば、戦闘方法ってどういうの? ターン制?」
『ターン……って。VRってどんなのかご存知ですか? すべてリアルなんですよ。つまり戦闘も剣士なら普通に切り付け、武闘家なら蹴ったり殴ったり。魔法使いなら呪文を唱えて魔法攻撃。神官なら回復などのサポートとなります』
なんですって!
じゃ、目の前にモンスターがデーンと立ちはだかるって事!?
無理! だってスライムみたいのならいいけど、熊の様なでかいモンスターとか、虫のようなモンスターだったら勝てる気がしないというか、戦いたくない!
「生活系のジョブってどれですか……?」
冒険者は私には無理だわ!
『うーん。神官でしょうか。このジョブは戦闘は不向きで、しかも自分しかHPを回復させられないので、上級者向きですよ。サブで次は他の人を回復するジョブを選べば、チームを組んで戦闘は出来ますが、ソロでは難しいですよ』
本当に戦闘はしたくないんだけど。って、上級者向きなんだ。
そう言えば、経験値って戦闘をしないと手に入らないのかな?
「あの経験値って戦闘しないと入らないですか?」
『いえ。
レベル上がらなくてもいいから生活系で行こう!
「では、神官でお願いします!」
『ステータス確認は宜しいですか?』
「いえ。後でいいです」
どうせ見てもわからないし。
『では次に……』
「え? まだあるの?」
『はい。初回限定のおまけでユニークガチャを一回引けます』
あ、そう言えば、おじいちゃんが初回限定版でおまけ付きだって言っていたっけ。ユニークって何だろう? ガチャはくじの事だよね?
『お待たせしました! このガチャは、スキル・魔法・装備品・ジョブの中から一つ必ずユニークが当たるガチャです! しかもこのガチャで当たったユニークは、この世界で一つだけ! 一点ものになります! では、このボタンをどうぞ!』
よくわからないけど、目の前に出て来たボタンを押せばいいのね?
私は、えいっとボタンを押した。
《スキル――ランクアップを獲得しました》
パンパカパーンという効果音と共に声が聞こえた。
『おめでとうございます。ランクアップというスキルを獲得しましたよ!』
「ありがとう。よくわからないけど、いいものなの?」
『ユニークと言うのは、それこそランクの中て一番いい物をさします。ですのでかなりいい物なんですよ!』
そうだったんだ! スキルって魔法のような物だよね? だったら使い方教えてもらって存分に堪能しよう!
――私は何も知らなかったのでこの時はそう思ったけど、本当に凄いスキルだった!
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