━☆ 》8話~待っているからね。しばしのお別れ

 はぁ……。

 私は大きなため息を漏らした。

 何か結構大変なんですけど。有利になるはずのスキルを使うと色々と……って、別にいいじゃない? ミチルって私より先に始めていたみたいだし、同じくガチャでユニーク持ってるよね?

 聞かれたら内緒で通せばいいじゃない! 向こうだって何らかのユニークだと思うだろうし。


 私はうんうんと頷き、開き直った!



 「気にしない事にする!」


 「そう。まあ人を気にしていたら楽しくないわよね」



 30分以上も悩んじゃったよ!

 さて、経験値が入るまで、また仕事でもこなしていますか。


 神殿で仕事を請け負い、五つ葉を採取する。


 しかしこれも飽きたなぁ。

 今度ランクアップしたら、違う場所に行ってみるかな。

 五つ葉の請け負いは出来なくなるけど、違うのが出来るかもしれないし。

 よし! そうしよう!



 「次、ランクアップしたら違う所に行ってみる!」


 「いつも突然ね。そうね。だったらミチルに護衛頼んだら? お金持って来てくれるんでしょ? 村に連れて行ってもらえばいいと思うわ」


 「あぁ、なるほど! ここに一人で来るくらいだもんね。そうするわ!」



 《プレイヤーレベルが9になりました》


 《プレイヤーレベルが10になりました》



 「あ! 上がった!」



 よし! レベル10まで上がった! ジョブをランクアップだわ!


 私は請け負っていた仕事を完了させ、木陰に急いだ。



 「ランクアップ!」



 慣れたもので、戸惑いなく遂行した。



 《メインジョブ神官がランク3になりました》


 《サブジョブを一つ獲得出来るます》



 「よし! 後はサブジョブを選ぶだけだわ!」



 私は嬉しさにスキップしながら神殿に向かっていた――。



 『ミチルだけど、これからそっちに向かうな。一時間ぐらいで着く』



 あ、ミチルだ。そうだ、村の件伝えなくちゃ。



 『で、ついでだからまた請け負ってきたぜ。今度は二件。先にお金も貰っておいたから宜しくな!』



 「は? 何それ!」



 私は叫んでいた。周りに人はいないので注目を浴びる事はなかったけど……。何勝手に請け負ってるのよ! 頼んでないじゃん!



 「それこそ、ミチルに徳などないのにね」



 シシリーは、くすくす笑いながら言った。

 お人好し何だか知らないけど、あれはお礼の一環じゃなかったの?!



 『あれ? おーい。聞こえてるか?』



 あー。はいはい。



 「ミチルへ――はい。聞こえてますよ。請け負いは今回で終わりでお願いします。私も村に行ってみたいのですが、帰り同行してもいいですか? ……どうぞ」


 『OK。じゃ、沼の前で待ってて。じゃな』



 「はぁ。取りあえず、ジョブだけ選んでおきましょうか……」


 「そうね。どこでも内容は同じですものね」



 さっきの気分はどこへやら。

 まあ、お金と経験値増えるからいいか。そして村についたらフレンド解除ね!


 神殿に入った私は、神官に話しかける。



 「あのサブジョブを選びたいのですが」


 「なつめさんが選べるジョブはこちらになります」



 剣士【物理攻撃力+3/けん武器攻撃力UP】

 武闘家【物理クリティカル+5/反撃】

 プーリスト【MP+20/つえヒール】

 魔法使い(氷系)【MP回復+1/つえコールド】

 巫女【つえヒール/つえ除去】

 狩人【弓攻撃/魔法防御+3】

 詩人【歌/マッピング】

 パン職人【SP+30/SP回復+3】



 わぁ。何かいっぱい増えてる。見ても全然わかんないんですけど。


 「ねぇ、シシリーどれ選んだらいい?」


 「そうねぇ。どういうのを目指すかによるわね」


 「戦闘しないで過ごしたいです……」


 「じゃパン職人でも選んじゃう?」


 「それっていったいどんなジョブなの?」


 「要は、そのジョブを持っていると、パン屋で働けるって事。まあ、パン屋がないと役に立たないけどね」



 それじゃダメじゃん! 行った村になかったらどうにもならない。



 「じゃ、狩人ってどんなの?」


 「これねぇ。弓がないと役に立たないと思うけど。まあ魔法防御はつくけどね」


 「じゃ。詩人は?」


 「歌はランクアップすると歌える歌が増えていい感じかな。マッピングは地図作製。ランクアップさせると機能が上がりますよ。どちらも冒険スキルですけどね……」



 確かに。地図作製なんて冒険に出ないと使わないよね。



 「あ、でも金儲けにはなるかな。次のジョブで製作者を選べば……」


 「製作者?」


 「詩人を選んだ後に出て来る職業で、転写と製作するスキルを持っているの。マッピングって自分しか見れないんだけど、転写と制作で地図を起こす事が出来て……。つまり紙に書き写す事が出来るのよ。上手くいけば売れるわよ」



 なるほど。そういうジョブがあるんだ。でも私に使いこなせるかな? って、それってあちこち行かなくちゃいけないって事だよね? 戦闘無理な私にどうすれと……。



 「あぁ、凄そうだけど、世界を歩き回るって事だよね? 私、生きていけますかね?」


 「そうだった。ヨワヨワでしたね。まあ一人では無理だろうね。でも歌は結構魅力的だけどね」


 「歌?」



 うんうんとシシリーは頷く。



 「歌はMPもSPも消費しないし、チームを組んだ全員か敵全体に効果があるの。歌ってから一分間は同じ歌は歌えないけどね。後は、一フレーズ的な歌詞を覚えなくちゃいけない事かな?」



 マジで歌んですね……。

 ちょっと恥ずかしいんだけど。でも確かにMPもSPも消費しないのなら、MAXまでランク上げられるよね? そう思うとそそられるかも……。



 「歌の効果って具体的にどんなの?」


 「回復系、相手を眠らせるでしょう。後は攻撃力UPとか……。かなりいっぱいある。多分ランクアップさせられるのは、歌がトップじゃないかな? ただし全部歌わないとダメだから、逆にいっぱいだと歌を覚えきれるかどうかよね……」


 「便利そうと思ったけど、そういう問題もあるんだ……」


 「まあ使うのだけ覚えればいいけど。普通は、ランクアップしたら覚えて行くからそこまでじゃないんだろうけどね」


 「確かに……」



 うーん。迷うなぁ。無難にまた魔法使い系にするとか? 巫女というのもあるね。



 「聞かれる前に巫女を説明すると、巫女は他人のHP回復と毒などの除去などが出来るジョブです。これはどちらかというと冒険向きですけど、除去のスキルを上げると、神殿でも仕事が出来るようになります」



 あぁ、いっぱいジョブがあり過ぎて悩む!

 取りあえず剣士、武闘家とプーリストは除外ね。魔法使いもいらないかな? 私に魔法の使い分けが出来るかわからないし。そうなると……巫女か詩人かな? パン職人はパン屋がないとダメだし。

 巫女はスキルをランクアップすれば……。SPが足りなくて、一回っぽきりのスキルになっちゃうか。

 え、じゃ今有力のって詩人?



 「詩人でも大丈夫かな?」


 「そうね。ステータスが増えないのが難点だけど後の事を考えるといいかもね」


 「じゃ、それにしましょう!」



 詩人に決めました!



 「あの、詩人でお願いします!」


 「ではなつめさんに、詩人の素質を与えます。ステム様のご加護がありますように」



 やっと決まったかという顔つきで神官が言っていたけど、無事に二つ目のジョブを手に入れました!



 「うん? 右上に今まで無かった物が表示されている! これが地図?」



 右上に地図らしき物が表示されていて、私が歩くとスクロールしています。ずっと見ていると酔いそうです……。



 「それが地図ね。それもマップオープンで色々設定できるから。今はまだ線だけの感じだろうけど、ランクアップさせれば、場所の名前表示とか……。そうだ! フレンドを表示させる事も出来るわよ!」


 「へえ、そうなんだ。私的にはそれは使わないと思う……。でもまあ便利よね」


 「あ、その地図は、なつめが行った事あるところなら確認出来るよ。ランクが上がれば書き込みも出来るし」



 書き込みかぁ。まあ地図は追々ランクアップさせるかな。まずは歌だよね。



 『ミチルだけど、もう少しで着くから沼で待ってて』



 え? もう着くの? 私一時間近く悩んでいたんだ。そりゃ、神官もあんな顔つきをする訳だ。



 「ミチルへ――わかった。向かいます……どうぞ」



 歌のランクアップは、後にしますか。

 毒の沼に着くと、ミチルが直ぐにやってきた。



 「お待たせ。あ、これが手数料ね。五人分で500G」


 「ありがとう。ミチルは、手数料貰ってるの?」


 「いや。俺はいいの。こういうので恩を売っておくのも手だから気にすんな」



 別にそういうのを気にしている訳じゃないんだけどね。



 「じゃ、今回も頼むな」



 私は巾着袋を受け取った。

 足を毒の沼に一歩踏み入れた時だった。



 《後一時間でこの世界を離脱します》



 ――と、聞こえたのは……。

 どういう事?



 「後一時間で目を覚ますみたいですね」


 「そういう事……」



 私とシシリーはぼぞぼぞと会話を交わす。

 どうやら後一時間で起こされるようです。で、こういう場合はどうしたらいいんでしょか? 取りあえず、五つ葉の採取は終わらせよう。


 20分程で終わり、ミチルに手渡す。


 「おう、ご苦労さん。で、直ぐに出発しても大丈夫か?」


 「その事なんだけど……採取を始める時に、後一時間で離脱ですって聞こえて……」


 「何?! じゃ、このまま行っても離脱前には村にたどり着けないぞ……。どうすっかなぁ」


 「あ、それ持って村に戻っていいですよ。待ってますよね。頼んだ人……」



 ミチルは腕を組んで考え込んでいる。

 別にいいのに。あ、そっか。村に行きたいっていったからか。


 「あ、私の事はいいから。明日INしたらまったり向かうから気にしないで」


 「わかった。取りあえずこれは、渡しておくわ。で、明日一緒に村に行こうぜ。INしたら話しかけて。うんじゃ、また明日!」


 「え!? だから、いいってば……。行っちゃった」


 「いいんじゃない? 護衛したいって言ってるんだし」


 「はぁ……。まあ、いっか。離脱するまでの間、歌のランクアップでもするかな」


 「うんうん。それがいいね」


 私は木陰に向かった。

 着いてからランクアップする前に歌を見てみた。



 「ステータスオープン」



 歌【ランク:1(500)/HP回復の歌】



 効果が表示されていないけどHPが回復するのはわかる。タッチしてみると、詳細が出て来た。



 HP回復の歌【歌詞:優しい風よ。傷を癒せよ。/効果:チーム全員のHPをそれぞれ10%回復する】



 歌って言うより、詩だね。で、10%か。これランクアップしていくと%増えるのかな?

 ……さてやりますか。



 「歌をランクアップ!」


 《歌がランク2になりました》



 よし、上がった! さあ寝ましょう。

 私は寝袋に入り込む。


 う~ん、おかしい。何か全回復が遅い。そう思ってステータスを見てみる事にした。



 「ステータスオープン」



 レベル10だとSPが25あって、SP回復が3だから9分かかるんだ。

 どうりで遅いなぁって思ったわけだ。


 9分って結構長いなぁ……。


 少し経って全回復し、寝袋から出てまたランクアップする。それを繰り返し、ランク4になった時だった。



 《後五分で離脱します》



 ――そうアナウンスが聞こえた。


 後五分か。今日はここまでにしよう。

 そそくさと寝袋に入る。


 歌どうなったかな?



 「ステータスオープン」



 歌【ランク:4(3,000)/HP回復の歌・物理攻撃の歌・魔法攻撃の歌・物理防御の歌】



 おぉ、増えてる。確認して見ると――

 物理攻撃が+10%、魔法攻撃が+10%、物理防御が+20%になるらしい。歌えばだけどね。

 いっぺんに4つは無理かな。取りあえずHP回復は覚えよう。



 《離脱まで後60秒……》



 あと一分切ったか。



 「シシリー。今日はありがとうね」


 「うん。……ランクアップしてくれてありがとう」


 「え?!」



 シシリーは照れながら言って、後ろを向いた。



 《離脱まで後30秒……》



 よかった。嫌ではなかったのね。



 「また明日ね。待ってるからね」


 「うん。また明日」



 《離脱まで10秒……8、7、……》



 カウントダウンが始まり、私はこの世界から離脱した――。

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