━☆ 》6話~最初のお友達ミチル

 碧い髪に碧い瞳の少年が、私を見下ろしていた。


 ぎゃー! もしかして見られていた?

 ドキドキドキ……。


 いや大丈夫。何をしていたかなんてきっとわからない。



 「あんたさっきから何してたんだ?」



 ほら、わかってない……って、ずっと見ていたんですか?!



 「あんた、レベルなんぼ?」


 「え? えっと……5」


 「やっぱり初心者か。あぁサポーターいなくなったからどうしていいかわからなくなったか? まずは、神殿以外で寝たら危ないぜ。ここら辺はモンスターいないけどさ」


 「ご親切にどうも……」



 少年はしゃがみ込んで、そう教えてくれた。そして動こうとせず、ニコニコとこっちをみているんですけど……。



 「で、おたく神官だよな?」


 「そうですけど……」


 「あ、俺、ミチル。宜しくな! いやぁ、やっと見つかったぜ」



 見つかった? どういう事?



 「いや、神官選んだやつってあまりいないんだな。まあ、俺も選ぼうとは思わないけど……」


 「普通はサブで選ぶ職業ですよね……」



 いつの間にか寝袋の中に隠れたシシリーがぼぞっと呟いた。



 「何よ、いいじゃない! 生活系を選んだんだから!」


 「あ、ごめん。別に馬鹿にしたわけじゃないから……」



 シシリーに言ったんだけど、ミチルさんは自分に言われたと思ったみたいです。



 「ところでそこから出ないの?」



 寝袋を指差しミチルさんは言った。



 「え? あ、はい……」



 ずっと寝袋の中に居ても仕方がないので、私は這い出た。



 「それは、腰につけると勝手に縮むから……」


 「え!?」


 「しまい方わからなくて、出たり入ったりしていたんだろ?」



 私が驚くと、違うのかとミチルさんは言った。

 そういう事にしておいて、寝袋を腰につける。寝袋は小さくなった。



 「で、名前は?」


 「……なつめ」


 「なつめって呼び捨てでいい? 俺もミチルでいいからさ」


 「あ、はい……」



 何だろう、この人。ぐいぐいくるなぁ……。



 「お願いがあるんだけど」


 「お願い?」



 ミチルは頷くと毒の沼の方を指差した。



 「毒の沼から五つ葉を集めるのを手伝って欲しいんだ」


 「え? 何で私が?」



 今、知り合ったばっかりだよね?

 そっか。神官を探している風だったけど、自分が毒の沼に入るとダメージを受けるからか。



 「実はさ、仕事受けたんだけど五つ葉の採取100個。100個だと沼に入らないと集められなくて。お礼はするからさ。お金以外でだけど……」



 随分とまあ都合がいい事を言ってくる事。

 あそこに入るの嫌だし。お金以外のお礼って何よ。



 「ダメかな? ほら、護衛とか。神官って戦闘するの大変だろう?」


 「……いえ。魔法使いをサブで獲得したので問題ないです」


 「でも近い村まで行くまでに出て来るモンスターって、数体で出て来るぜ」


 「………」



 困ったなぁ。この人しつこそう。あ、そうだ!



 「サブに神官とればいいんじゃない?」


 「耐性付きなのはメインの時だけだぜ」


 「え? そうなの?」



 そう言えばシシリーもそんな事言っていたような……。



 「そうなの! で、俺今15レベルなんだけど、ランクアップするのにお金が必要で簡単だと思って選んだんだけど……。ちょっと無理でさ。この通り、お願い!」



 頭を下げ手を合わせてお願いされた。

 どうしようかな。これ私にメリットないし……。



 「必ずお礼はするからさ。この通り!」



 って、また頭を下げられた……。

 この人、受けるまでこうしてそうだよ……。



 「はぁ……。今回一度だけね」


 「本当! ありがとう! あ、この袋に入れて欲しいんだ」



 ちょっと大きめの巾着袋をミチルは出して来た。私はそれを受け取る。


 私達は毒の沼の前まで来た。



 「じゃ、行って来る」


 「悪いなぁ。頼むよ」



 ため息をしつつ、足を一歩出した。

 意外と足は沈まなかった。踝ぐらいまでで、五つ葉を抜きつつ奥に進む。


 ……これで20個目。

 あぁ、数がわからなくなりそう。まあ、少しぐらい多く入れておけば大丈夫かな?


 こんな感じで、100個採取完了!

 やっと終わった。

 ミチルがいる場所まで戻り巾着袋を渡した。



 「おぉ、サンキュー! 助かったぜ。じゃ、フレンド登録しようぜ」


 「え? なんで?」


 「そうしないと、俺と連絡取れないだろう?」



 あぁ、お礼の件ね。本当にする気あるんだ……。



 「いやお礼はいいよ」


 「それじゃ、俺の気が収まらない!」



 本当にこの人強引だね!



 「わかったわ。フレンド登録しましょう」



 仕方なくそう言うと、ミチルは手を出して来た。まるで握手を求めるように。



 「え?何?」


 「何じゃなくて、フレンド登録するんだろう?」


 「握手でするの?」



 ミチルは頷いた。

 変な登録の仕方だこと。


 私達は握手を交わす。



 《契約フレンド登録をミチルとしますか?》



 「はい。します」



 ぼそっと呟くと……



 《登録を完了しました》



 と完了になった。



 「じゃ、俺行くけど、護衛でもなんでも手伝うから連絡宜しくな!」



 ミチルは手を振りながら走って行く。私も小さく手を振った。



 「はぁ……。疲れた。って、神官選ぶ人ってそんなにいないもんなの?」


 「そうですね。少ないでしょうね。何せレベルやランクが上がっても、物理攻撃力も魔法攻撃力も上がらないジョブですから。剣士なら物理攻撃が、武闘家ならクリティカルが、魔法使いなら魔法攻撃がプレイヤーレベル6から付きますから。説明を聞いたらまず選ばないですよ」



 シシリーは、ミチルがいなくなったらスーッと現れて説明してくれた。けど……




 「それ説明してたっけ?」


 「ステータスを確認した時に……あ!」



 あ! じゃない! 確かにステータス確認は飛ばしたけど説明してくれてもいいじゃん! まあ、説明されても神官選んだと思うけど……。



 「そういう仕様だったので、飛ばされたからそれも省いたかも……?」


 「かもじゃなくて、聞いてないよ。まあいいけど。私、超初心者だから今度からは説明は省かない様にお願いします」


 「わ、わかった。ごめんね」



 ミチルの様に、体の前で手を合わせて謝った。



 「でも、こういうやり方もありかもね」


 「うん? こういうやり方?」


 「実は仕事って、受けた人じゃなくて、やった人が経験値を取得する仕組みになってるの。今回で言えば、ミチルが受けた仕事だけど、実際にやったのはなつめでしょ? だから納めに行ったらお金はミチルが受け取るけど、経験値はなつめに入るはずよ」


 「え? そうなの?」



 シシリーは頷いた。



 「公開されてないし経験値も表示もされていないから、皆知らないと思うわ。ねえ、ミチルに窓口になってもらって、さっきの仕事を請け負ったら? お金は入らないけど経験値は入るわよ! どう?」



 わぁ。シシリーがどや顔だよ。

 まあそういう仕様なら活用しますか!

 あ、でもどうせなら自分でした方がよくない?



 「それって自分で直接した方がよくない?」


 「まあそれが一番でしょうけど、村までの間はモンスターが出ますよ。時間もかかりますし。仕事は一つずつしか受けられないので、経験値だけを見れば複数の仕事をいっぺんに出来れば効率的です」



 なるほど。一人一個だけど、複数の人のを一回にこなせばって事ね。

 一度試してみる価値はありそうね。



 「ねえ、ミチルに話しかけるのにはどうしたらいいの?」


 「それは、トランシーバーを使ってするように……」


 「トランシーバー? いや、使った事ないから!」


 「えっと。ミチルへ――と言ってから話す内容を語って。どうぞって言えばOKよ」


 「わかった。やってみる」



 トランシーバーってそうやって使うんだ。



 「ミチルへ――なつめです。お願いがあります。先ほどの仕事を請け負いたいのですが……どうぞ」


 「OK。迎えに行くか?」



 やや暫くしてそう返事が返って来た。

 迎えにって? あ、そっか。私が仕事を請け負うって事になってるのね。



 「ミチルへ――なつめです。違います。そうではなくて、さっきみたいに他の人が請け負った仕事を肩代わりしますって事です。いっぺんに受けて来てくれると助かります……どうぞ」


 「どういう事? なつめに徳あるかそれ? あ、手数料とるのか?」


 「ミチルへ――なつめです。そうそう。ちょっとだけね。自分で村に行ったり出来ないからどうかなって。ミチルに窓口になって欲しいの……どうぞ」


 「OK。聞いてみるよ」


 「ミチルへ――あ、私の事は伏せておいてね! ……どうぞ」


 「了解!」



 ふう。何とか話はまとまったわね。って、ちゃんと通じてるのかな?

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