━☆ 》12話~シシリーのお披露目?

 ミチルにばれた!

 いやランク3になったのは知っていたみたい。フレンド欄を見ればバレバレだもんね。


 「本当は触れないでおこうかと思ったけど、そっちから振って来たから聞いていいよな? 一体どうやって経験値稼いだんだ? お金もどうした?」



 あぁ。聞きたいよね、それ。私もミチルの立場だったら是非知りたいもん。



 「えっと……」


 「って、歌のジョブって何?」


 「え? あぁ、詩人……」


 「へぇ、そんなジョブが……らしいジョブだな」



 うん? ミチルには表示されてなかったのかな?



 「出てこなかった?」


 「出てこないよ。ジョブは共通なのもあれば、メインジョブによって違ったり、条件で表示されたりするんだ。そっちにファイターとか表示されてたか?」


 「ファイター? いやなかったけど……」


 「だろ? 剣士を選んでないと出てこないジョブだ」


 「へえ。そういうもんなんだ」



 あ、もしかしたらパン職人とかも神官にしか出ないジョブかな? あれ完全に生活系だし。


 「俺はサブに、ファイター(攻撃型)と戦士(体力型)を選んでる。だからHPは60あるんだ」


 「はぁ……」


 「そっちも教えてくれたし、教えないとフェアじゃないだろう?」



 いや別に必要ない情報なんですけど……。



 「ついでに言うと、他の奴らと変わらなく見えているこの鎧、ユニークガチャで引いた進歩の鎧って言うんだ。最初から防御が25もあって、それにプレイヤーレベルの防御が加算されていく鎧なんだ!」



 自慢げに鎧をパシッと叩きミチルは言った。そして、ジッと私を見つめてきた。

 これって私にもユニークガチャの件を話させようとしてます? 最初に振ったフェアじゃないという話はこれの為ですか?

 な、なんと計算高い!

 どうしたらいいの? 

 ユニークガチャがランクアップに関係していると睨んで誘導しているんだろうけど……。



 「えっと、私は……」


 「本当にミチルは強引ね! 私がユニークガチャの結果よ!」


 「うお! びっくりした!」


 「シシリー!!」



 私が話し出そうとした時だった!

 シシリーが寝袋から出て来て名乗りを上げた! 私も驚いたよ!

 ――けど、いいのかな? まあ間違ってはいないけど……ランクアップスキルを使ってシシリーが今いるのだから。



 「へ? 妖精? もしかして、これ引いたの?」


 「これとは、失礼ね!」


 「あ、ごめん。でも納得だ。すげー初心者っぽいのに変だなって思ってたんだ。五つ葉の仕事の件とか……。誰かが糸を引いてるなって」


 「そんな事してないわよ! アドバイスをしたの!」


 「あぁ、すまん。そう言いたかった! ……あれ? でも、寝袋に出たり入ったりしていたのはなんでだ?」



 ミチルは首を傾げる。

 シシリーがいたのならあんな行動はとらないだろうという事に気が付いたみたい!



 「えっと……」


 「あれは、なつめが私がいるのに気が付かなかったからよ。消えちゃったと思ってたの! 話しかけようとしたらあなたが来て……」


 「なるほど。で、どうせならお金を取れと!」


 「あのね! そういう言い方はしてないから!」


 「あ、こりゃ失礼……。いやしかし、アドバイス一つでレベル上げてランクまで……。シシリーだっけ? 仲良くやろうぜ」


 「あなたにはアドバイスなんてしないわよ」


 「そんな怒るなよ」


 「違うわよ! 私はなつめが不利になるような事は、しないって言っているの!」


 「あぁ。なるほど!」



 なんだろうね、これ。

 私一人置いてかれて会話が進んでるわ。まあ私が話すよりシシリーの方が、色々とボロが出なくていいんだろうけど。



 「あ、そうだ。シシリーの事は伏せておいた方がいいぜ。それじゃなくても目立ってるし」


 「目立ってる? それって私が?」



 ミチルは真面目な顔で頷いた。



 「ほら五つ葉の仕事しただろう? それで慈悲深い神官がいる~って」


 「え?! ちょっと! 私の事、内緒にしてって言ったよね?」


 「名前は言ってないよ。でもそうでも言わないと、仕事預けないだろう?」


 「それもそうね。そこまで目立つとは思わなかったわ」



 思わなかったって……。うーん。そんなに凄い事だったのかな?



 「取りあえず、おたくお人好しみたいだし、騙されない様に気を付けろよ。まあ、シシリーがいれば大丈夫だと思うけど」



 あなたが言いますか! 



 「じゃ、村に行くか」



 ミチルが歩き出し、私もついて行く。シシリーは、寝袋の中に戻った。


 暫くすると、なんか見えて来た。

 木の塀に囲まれた村。その真ん中からねじれた幹がにょきっと出ている。村の真ん中に深緑の神殿があるみたい。



 「あれが北の村。さっき居た所と比べ物にならないぐらい人がいっぱいだぜ」


 「へえ」



 村の入り口に門番だと思う剣士が二人立っていた。その二人は、ジッと私を見つめている。

 なんだろう?



 「ねえ、私ってどこか変?」


 「うん? あぁ、見られてるってか? 神官が珍しいんだろ? って言うか、この村ではなつめだけだぜ。他の村にも数名いるみたいだけど。あんたみたいな初心者じゃないけどな。まあジロジロ見られるのは、仕方ないからあきらめろ」


 「ひえ~。本当にそんなに少ないんだ……」



 村の中に入れば、本当に村なの? ってぐらい人で溢れかえっていた。

 ジョブの割合で言うと剣士が半分、次が魔法使いが多い感じ。

 結構偏りがある。


 まあこれはメインジョブだからサブがどんなかはわからないけどね。


 そしてジロジロと本当に見られまくり……。



 「あの、どこに向かってるの?」


 「うん? これ完了しに行くところ。そう言えば、おたくはどうするよ」


 「え? いや別に……何も考えてなかった」



 まさかこんな町のように人がいっぱいだとは思わなかった。ってただど真ん中に神殿が見えて、右手が青い屋根左手に赤い屋根の建物があるだけで、武器屋とかそういうのは見当たらない。

 なんか、圧倒されまくりです……。



 「そうなの? じゃ、これ終わったら一緒に遺跡でも行ってみる?」


 「え? 遺跡!? いや、そこは無理かな……」


 「無理って、じゃ何するき?」



 うーん。どうしたらいいんだろう?

 そっか。働かないんだったら遺跡に行かないと何も進まないんだ……。



 「まあ、いいや。俺、これお金と交換してくるから、ここにいて」


 「うん……」



 暫くするとミチルは神殿から出て来た。

 あ、そう言えば今回は、レベル上がらなかった。

 やっぱり何か仕事しないと……。



 「さて、どうするかな……」


 「よ! ミチル!」


 「ヤード」



 ミチルの肩をポンと赤い髪の男の人が叩いて声を掛けて来た。ヤードさんと言うらしい。



 「おぉ! 噂の神官様!」


 「え? 様?」


 「って、連れて来ちゃったのかよ」


 「本人が村に来たいって言ったんだから仕方がないだろう?」


 「あ、じゃ遺跡デビュー?」


 「えっと……」


 「いや遺跡に行きたくないらしい」


 「へ? 遺跡に行かないんじゃ何もする事ないじゃん」


 「だよな。初心者みたいだからわからないと思うんだよな」


 「あぁ、なるほど」



 本人目の前なんですが?



 「なあ、取りあえず仕事受けて遺跡行ってみないか?」


 「あ、遺跡に行かないとダメなんだ……」


 「うーん。後は荷物運びとか、それこそ五つ葉の採取とか。それでもいいけど、それだと今日は、その仕事だけで終わっちゃうぜ」


 「え……」



 なるほど。時間が掛かるから一回しか仕事が出来ないって事ね!



 「ねえ、ここって武器屋とかアイテム屋とかないの?」


 「マジか……。本当に初心者なんだな」



 ヤードさんが驚いて呟いた。

 この様子だとなさそうね……。



 「初めから持っているのが自分の専用武器。後はドロップとか、遺跡で手に入れるとかそういう感じ。まあ使えない武器を手に入れたらトレード屋で登録かな。今の所、王都にしかないけど……」


 「え? そうなの?」



 私はミチルの説明に驚いた。専用武器の話はシシリーから聞いていたけど、私、何すればいいわけ? 村には働き口なさそう……。

 取りあえず、聞くだけ聞くかな……。



 「私、仕事で経験値上げようと思ってるんだけど……。あ、クエストじゃないやつね。だから生産系選んだけど、この村にはなさそう?」


 「多分まだないと思う。このゲームまだ始まって三日だから……」


 「え~!」


 「働き口は、王都だけだと思うけど……。ここから離れているから俺ぐらい強くないと行けないぜ」


 「無理そうね……」



 ミチルが言い切ると、寝袋からボソッと呟きが聞こえた。

 無理そうねって、最初から無理なの知っていたよね!!



 「これだったらまだ向こうで依頼受けてればよかった……」


 「まあ、そう言わずにここで依頼受けて、一度遺跡に行ってみようぜ!」


 「……うん」



 ため息をしつつ、私とミチルは神殿に入った。

 ここも人がいっぱい。神官の数も倍いると思う。しかも倍いるのに列が出来ている。



 「あの、どんなのがいいとかありますか?」


 「うーん。一番お金が高いのでいいんじゃねぇ?」


 「そ、そう……」



 凄い適当ね……。



 「じゃちょっと受けて来る」



 私は列に並んだ。

 暫くして私の番になった。



 「仕事をしたいのですが」


 「そうですね。なつめさんにはこれなどどうでしょうか?」



 と言う台詞で返された仕事の中身は、見たことがないものばかりだった。



 【炎の石の獲得/100,000G】

 【ドラゴンの鱗の獲得/500,000G】

 【清めた水の搬送/50,000G】

 【五つ葉集め/20,000G】



 うん? これ本当に一番高いの選んで大丈夫? ドラゴンの鱗だけど……。

 私は不安になりミチルに振り返るも壁に寄りかかった彼は、ニッコリ微笑んで頷き、隣のヤードさんとお話を再開した。


 どうしよう……。



 「ねえ、これドラゴンの鱗のやつ引き受けて大丈夫?」


 「あぁ……無理ね」



 ボソッと呟いてシシリーに相談すると、やっぱり無理だと帰って来た。

 金額が高い程難易度が上がるんだと思う。



 「どれがいい?」


 「……ごめん、大失敗だわ。絶対大丈夫なのは五つ葉集めね」



 ボソッと呟くと、シシリーはそんな言葉を返して来た。


 大失敗って何?

 もしかしてこれって、この炎の石かドラゴンの鱗じゃないと遺跡という所には行かないのでは?



 「北10に一緒に戻ってくれると思う?」


 「さあ、どうかしらね? ドラゴンの鱗は無理だろうけど、かろうじて炎の石は運次第で行けるわよ。っていうかミチル達次第ね。でもこれ選んじゃうと、色々バレそうだけどね」


 「色々って?」


 「バシップスキルがMAXとかそういうの。言ったでしょ。仕事はその人のジョブに合わせて出るって。あなたと同じぐらい強い人が、チームに居れば問題なくこなせるけど、ヤードって人がどれくらい出来るかよね……」



 なんですって!

 私ってそれなりに強いんだ……。まあ、ずるしてるようなものだもんね。神官だからHPも攻撃力も少ないだけで……。


 あぁ、困ったなぁ。でも遺跡行くならどっちかなんだよね……。でもなぁ、もともと戦闘しなくてもいいように神官選んだんだし……。



 「炎の石でお願いします」


 「なつめさん、よろしいですか?」


 「おい! 早くすれよ!」



 ちょっと勝手に言わないでよ!

 って後ろの人に怒鳴られた! 見れば睨んでいる……。



 「おい!」


 「はい……すみ……」


 「では、なつめさんにこの仕事をお願いします。頑張って下さいね」



 えー!? いや、今の後ろの人に、『はい』って答えたのわかったよね!?


 神官はつらっとして、次の人って言ってるよ……。

 シシリーのおバカー!

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