━☆ 》33話~金のリンゴは、割に合わない

 「あ~くそ! 全然出現しないな!」


 「もう、ミチルが勝手に受けるからでしょう? おバカなの?」


 「うるせー。あのモンスターだと思ったんだよ」



 あぁ、また言い合いが始まった!

 今、私達は金のリンゴを探してます。と言っても、モンスターのドロップです。

 ミチルが勝手に引き受けた仕事クエストなんだけど、あの木のおばけのモンスターのドロップだと思ったみたいで。

 でも、レアモンスターのドロップだった!

 そのモンスターが出現しない。

 お蔭であの木のモンスターを倒しまくり、2レベルも上がってレベル22に。



 「そもそも、俺がどんな仕事受けようと勝手だろう?」


 「あらそう。だったら仕事に関してはもう関わらないわ! 好きにして!」


 「ちょ……ちょっと待て。いや、待ってください。それ困る。俺が悪かった」


 「最終的には、シシリーに口で勝てないのにねぇ……」


 「うん?」



 つい口に出しちゃって、ミチルがちょっと怖い顔を私に向けた。

 ひゃ~。怖いんですけど!



 「なつめに手をあげたら許さないからね!」


 「そんな事、するわけないだろう! もうわかったって。俺が悪かった。次からはお伺いを立てます!」



 そうガーと言うと、ミチルははぁっとため息をついた。



 「うんうん。そうする事ね。ほら現れたわよ。よかったわね」


 「うん? またか……」



 ミチルは、剣を構えた。

 現れたのは、木のモンスター。もう私的には、飽きる程倒している。って攻撃しているのは、ミチルなんだけどね。

 私は、物理攻撃の歌と魔法防御の歌を歌った。



 「攻撃力UP!」


 「ガードチェンジ」



 準備が整ったので、眠りの歌を歌う。



 「今回は、物理防御の歌と魔封じの歌も歌っておいて」


 「うん」



 シシリーがそう言うので、物理防御の歌と魔封じの歌を歌っていると、動きを止めたモンスターにミチルは斬りかかって行く。

 モンスターは三体。そのうち手前の二体をスパーンスパーンと、斬り消滅させた。



 「うわぁ!! ちょっと待てよ! 2分経ったか!?」



 何故か動きを再開したモンスターに、ミチルはグルグル巻きにされ叫ぶ。

 まだ1分ぐらいだと思うけど……。今まで三体いても2分以内に倒していたのに。何で?



 「1分しか経ってないわよ。それが、ミチルが探していたモンスターよ。金のリンゴ見えない? このモンスターは、眠りに耐性があるから1分で目が覚めるの」


 「はぁ? そう言うのは先に言えって言ってるだろう! って、どこに金のリンゴなんてあるんだよ!」


 「ちゃんと言ったじゃない! 現れたわよって!」


 「……言い方が紛らわしいんだよ! って、その言い方ワザとだろう!」



 この状況でも言い合いですか……。

 で、どうするのこれ?



 「もう助けてあげないわよ!」


 「助けられるなら助けろよ! って、出来んの?」


 「方法ならあるわよ。なつめ! ミチルにファイヤーしちゃって!」


 「え! ミチルに!?」


 「大丈夫よ。炎耐性あるんだから」


 「あ、そっか。そんじゃ……」


 「待て待て待て! それめちゃ痛いんじゃなかったか!?」



 あ、そう言えばこはるさんがそう言っていたっけ?

 でも、これしか方法ないようだし。仕方ないよね?



 「ファイヤー」


 「お前!! いたた……」



 ミチルに巻き付いていた枝は、燃えてなくなった。

 モンスターのHPは、ちょっとしか減らない。

 ミチルは、座り込みシシリーを睨み付ける。



 「えらい目に遭った! なんでいつもこういう仕返しするんだよ!」


 「助けてたんだからお礼ぐらい言ってよね。それより早く攻撃して! あ、枝によ!」


 「きゃー!!」



 二人の会話をボーっと見ていたら今度は、私がグルグル巻きに!



 「ほら早くしないからなつめが凄い状態になっちゃったじゃないの。なつめ、一応防御の歌を歌っておいた方がいいわよ」



 私はうんうんと頷き、身動きが取れないけど歌えるので、シシリーの言う通り物理防御の歌を歌った。


 「うーん。やっぱりこういうシチュエーションは、俺よりなつめの方が似合うよな。捕らわれた歌姫って感じだ」


 「似合う似合わないの問題じゃないから! 早く助けてよ!」



 私は、ミチルの言葉に叫んで言うと、ミチルはニヤニヤしている。



 「これが触手だったらエロいわね!」


 「うん。非常に残念だ」


 「な! ミチルのエッチ! 変態!」


 「俺は同意しただけなのに、俺だけなのかよ! って、このモンスター攻撃してこないのか?」


 「しているじゃない」


 「グルグル巻いて動きを封じているだけじゃねぇ?」


 「本来は、魔法攻撃よ。でも封じてあるからね。物理攻撃は、歌とスキルで何とかしのいでるのよ。枝を斬ってそろそろ助けてあげて」


 「なるほどな! 了解! おりゃ!」



 ミチルがやっと枝を斬って助けてくれた。



 「今度は、ミチルが狙われるから気を付けて!」



 シシリーが言う通り、ミチルにモンスターが向かい始めた。

 ミチルが攻撃して、30%以上モンスターのHPが減った。後二回攻撃すれば、倒せるかも!


 うん? 輝く何かが?

 この木のモンスターには、目と口のようなものがあるんだけど、その口の中が光ってる!?



 「何かこわ! 何で口の中が光ってるの?」


 「ていや! あ、本当だ!」



 私が驚いて叫ぶと、襲ってきた枝を斬り落とし、ミチルが言った。



 「あれが金のリンゴよ。あれを傷つけずに倒せば、金のリンゴがドロップするわ!」


 「なるほど。それで枝を攻撃か。……うわぁ!!」


 「もう何やってるのよ!」


 「仕方ないだろう! 何本も枝伸ばして来るんだから!! あーもーちきしょう!」



 金のリンゴに気を取られたからか、ミチルがまた拘束されてしまった。

 また、ファイヤーの出番だわ!



 「ファイヤーの前に物理攻撃の歌も歌っておいて。歌の効力きっと切れてるわ」


 「うん。わかったわ!」


 「やっぱり、ファイヤーなのかよー!」



 私は、物理攻撃の歌を歌った。



 「ファイヤー!」


 「……っつ。このやろう! その枝全部切り落としてやる!」



 解放されたミチルは、反撃して枝を斬り落とす!

 そして、もう一本っと思った所でサーッと消滅した。



 「なんか今まで一番疲れた……。よかったぁ。あったー」



 ミチルは、コアを拾い上げる。そして、それと一緒に黄金に輝くリンゴも。

 リンゴの大きさは、普通のリンゴと変わらない。それを鞄にコアと一緒にしまう。



 「いやぁ大変だったけど、眠らせて魔封じ出来るなら楽チンだな」


 「あのね。本来はずっと後で使えるようになる歌だから」


 「へぇ、そうなんだ。羨ましいな!」



 確かに、レアモンスターの攻撃を簡単に封じられるんだから考えたら凄いよね?

 歌はMPもSPもいらないから暇な時でも歌を歌っていれば、自然とランクアップするけど、実際は1分経たないとカウントされない。

 まあ、色んな歌を交互に歌えば数は少し稼げるかもだけど。



 「ステータスオープン」



 歌【ランク:11(44,883)/HP回復の歌・物理攻撃の歌・魔法攻撃の歌・物理防御の歌・魔法防御の歌・SP回復の歌・MP回復の歌・魔封じの歌・HP回復+の歌・感知の歌・眠りの歌】



 確認すると尋常じゃない数を歌わないと、ランクアップしない事がわかりました!

 シシリーが言う通り、だいぶ後にならないと魔封じの歌も眠りの歌も使えない。だから私達、二人で容易に倒しちゃってるんだわ!



 「でもまあ、またこの仕事やるかって言ったらやらないな。俺的に割に合わない」


 「痛い目にあっていたものね!」


 「あわせたのはモンスターじゃなくて、そっちだろう!」


 「捕まる方が悪いのよ!」


 「無理言うなよ。はあ。もう戻るか」


 「そうね」


 あぁ、やっと戻れる。

 私達は、王都に向かい歩き始めた。



 「なあ、もっと手っ取り早くお金稼ぐ方法ないか? このままだとランクを上げられない。って、レベルだけ上がって行くなぁ……」


 「そうね。仕事以外のクエストでもお金を稼ぐ事が出来るわよ。でも実はそれ、仕事を受けてない時に発生するのよね」


 「何だよそれ」


 「つまりクエストは、一つずつしか受けられないって事! やってみる?」


 「やる!」


 「ちょっと待って! それってどんなの?」


 「今までとそんなに変わらないわよ」


 「俺もランクアップした方が、楽になるだろう?」


 「そうだけど。虫でないよね?」


 「大丈夫よ!」


 「それだったらいいわ」


 「よし! じゃ、仕事完了しちゃおうぜ!」



 私達は、王都に戻り仕事を完了した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る