━☆ 》4話~メインジョブもランクアップ!?
『きゃー!』
シシリーは悲鳴と共に輝きだした。そしてその姿を変える。
子供っぽい容姿だったけど、ツインテールは下ろされ、ウェーブした髪型に。
「いきなり何をするの……」
「なんだ?」
「え? 妖精が見える!」
「課金でもしたのか?」
気が付けば皆の注目を浴びていた。
シシリーが皆にも見えているみたい。そう言えば他の人の妖精は見た事がない。お試しのは見えない仕様だったんだ!
「兎に角外に出るわよ!」
私は頷いて走り出す。
「自分で行くから手を離してよ」
シシリーにそう言われ慌てて手を離すと、彼女はドアからスーッと外に出て行った。ざわつく神殿を私も後にした。
「待って!」
神殿の外に出ると、シシリーはずっと向こうにいた。私は慌てて追いかける。そしてやっとシシリーが止まった。辺りに人影はない。
「もう! 驚くじゃない!」
「ごめん。いなくなって欲しくないって思ったらやっていた……」
「戦闘はあんなに消極的だったのに……。まあいいわ。改めて宜しくね。なつめ」
「え? あ、うん。宜しく」
何となく態度も大人っぽくなった?
これでいなくならないんだよね?
「さっきのスキルの事だけど。私に使えたって事は他人にも使えるって事だから人前では使用しない事!」
「はい……。チュートリアルが終わってもいなくならないんだよね?」
「えぇ。ご希望通りずっと一緒に行動できるわよ」
「よかったぁ……」
「SP0になっちゃったわね。HP回復に祈りを使うからSPを回復しておいた方がいいんだけど……。今はまだ深緑の神殿には戻らない方がいいわね」
それって周りに強いモンスターでもいるの?
「あの……。強いモンスターがいるの?」
「いやそう言う訳じゃないけど。なつめの戦闘の仕方を見ていると危なかしくって」
「あ、そう言えば、死亡したらどうなるの?」
「通常は最後に立ち寄った深緑の神殿でHP半分で復活するわ。でもその前に攻撃が当たれば痛いわよ?」
え? 痛いの? もう更に戦闘する気が失せるよ……。
「痛いと言っても静電気ピリッてくらいだけどね。でも恐怖心はあるだろうから早くランクアップしてサブで魔法使いを覚えた方がいいわね」
確かに。それまで戦闘はしたくないなぁ。
何かいい方法ないかな?
「取りあえず、行動拠点をさっきの場所にしましょうか。最初の神殿北10に。五つ葉の採取で経験値を稼ぎましょう。どう?」
「いいと思います!」
私は大賛成して、最初の深緑の神殿に向かった。今度は敵にも人にも出会わずにたどり着いた。
まずはSP回復にと神殿で寝る事にする。
「おやすみ~」
五分後、私は寝袋からでて神官から依頼を受けた。
五つ葉集め【仕事内容:五つ葉を二つ採取する/場所:毒の沼/報酬:20G】
「では出発!」
何故かシシリーは私の肩に座り言った。
なんで座ってるんだろう?
「ねえ、なんで肩に座ったままなの? ランクアップしたら疲れる様になったとか?」
「違うわよ。目立つからよ。浮いているよりは目立たないでしょ? だから大声出さないでね」
「あぁなるほど」
歩いていると直ぐに毒の沼が見えてきた。
「ねえ、ランクアップスキルで武器とかメインジョブとかランクアップ出来ないのかな?」
ふと思い聞いてみた。妖精が出来るのだから出来ると思うけど、出来るならこんなちまちまと仕事しなくてよくない?
「そうねぇ。杖は問題ないと思うわ。でもメインジョブは本来プレイヤーレベルが5になったら出来る事になっているから、何か不具合が起きるかもしれないわね。まあ、やってみないと何とも言えないけどね」
そっか。そういう事もあるのか。じゃ、杖を試してみるかな。SP満タンなんだし。
辺りを見渡すと誰もいない。でも誰か来たら困るので、木の陰まで歩いた。
「もしかしてランクアップする気?」
「うん。杖に……。って、杖に出来なくない?」
杖を向けて使うのなら杖自体には出来ない!
「ランクアップを使うのには、杖は必要ないわよ。使うモノに振れていればいいわ」
そういうもんなんだ。って、じゃシシリーに使う時、つかんでいなかったら出来なかったんだ! 掴んでよかった!
さて、やってみますか。
「ランクアップ!」
杖を握りしめてスキルを唱えた。
杖に変化はない。
《神官の杖がランク2になりました》
《装備条件が合わないので神官の杖は装備出来ません!》
「え!?」
どういう事? 条件?
「ステータスオープン」
確認して見ると、杖を持っているけど装備している事になっていない。杖はアイテム欄にあった。
「条件が増えているんだけど! メインジョブランク2以上って……」
「そういえば、そんな条件あったわね」
「問題ないって言ったよね?!」
「大丈夫だって。レベル5なんてすぐでしょう? それにプレイヤーの攻撃力はあるから、いざとなったら叩けば1は与えられるから。ここら辺の敵は防御持ってないから」
シシリーは人間の様に顔の前で手を合わせてあやまった。
そういう問題でも……。でもまあ、勉強になったからいいか。
仕方がないので受けた仕事を終わらせる為に、五つ葉を採取すると神官に渡した。
――五つ葉を二つ集めるのを後2回こなすとレベル5になった。
《プレイヤーレベルが5になりました》
と聞こえた時は嬉しかった!
「これでやっとランクアップ出来る!」
「では、神官に話しかけランクアップさせましょう」
私はワクワクして神官に話しかけた。
「メインジョブをランクアップさせたいのですが……」
「では500Gの寄付を頂きます」
「え!? 500!」
全部で200Gもないんですが……。
「足りないのですか? ではまた改めてお越し下さい」
えー!! まだ仕事やらないといけないの? もう飽きたんだけど……。
「5レベルになったしランクアップ使ってランクをあげたらどうかしら? お金浮くわよ」
「え? 出来るの?」
シシリーは頷いた。
「杖使えないのに?」
「ランクアップは杖が必要ないって言ったでしょ。杖が必要なのは、魔法やスキルの前に
そうだったの?!
そう言うのは最初に言ってほしい。こっちは、超初心者なんだから……。
私はランクアップを使う為に一旦寝袋で寝て、0だったSPを全回復させた。そして神殿を出て木の陰まで行き、辺りに人がいないのを確認する。
「ねえ、自分に使うって事は、自分に触れればいいって事?」
「そうね。腕でも頭でも大丈夫だと思うわよ」
「わかったわ。やってみる」
首元に手を当て深呼吸する。そしてそのまま――
「ランクアップ!」
――と、唱えた。
体に異常はないみたい。
《メインジョブ神官がランク2になりました》
《サブジョブを一つ獲得出来ます》
「やったー!」
「成功したみたいね」
あぁ、これで一安心。
「では神官に話しかけて、サブジョブを獲得しましょう」
「え? 神官に話しかけないといけないんだ。って、お金かかる?」
「かかりませんよ。あ、今回は魔法使いがいいと思いますよ」
私は頷いた。
神殿に戻って、神官に話かける。
「あのサブジョブを選びたいのですが」
「なつめさんが選べるジョブはこちらになります」
剣士【物理攻撃力+3/
武闘家【物理クリティカル+5/反撃】
魔法使い(火系)【魔法攻撃力+1/
プーリスト【MP+20/
あ、見た事ないジョブがある。でも今回は魔法使いでと……。
「魔法使いでお願いします」
「ではなつめさんに、魔法使い(火系)の素質を与えます。ステム様のご加護がありますように」
こうしてやっと、一つ目のサブジョブを獲得したのでした――
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